「Windows」の一部エディションで利用できる「BitLocker」は、ストレージを暗号化してデータを保護する機能だ。利用可能なWindowsを含むBitLockerの概要とその仕組みを解説する。
「BitLocker」は、OS「Windows」の特定のエディションが搭載するデータ暗号化機能だ。Windowsがインストールされたドライブ全体を暗号化し、盗難や不正アクセスからデータを保護する。どのような場合に使用でき、どう動作するのか。BitLockerの概要と仕組みを解説する。
BitLockerは暗号化アルゴリズムとして「AES」(Advanced Encryption Standard)を用い、128bitもしくは256bitの鍵でデータを暗号化する。ストレージの暗号化と、暗号鍵の厳重な管理を組み合わせることによって、セキュリティを強化する仕組みだ。
2007年、BitLockerは「Windows Vista」の新機能として登場した。2025年3月時点では、Windowsの「Pro」「Enterprise」「Education」エディションで利用可能だ。「Windows 10」のバージョン「1511」では、暗号化アルゴリズムがAESから「XTS-AES」に更新された。エンドユーザーやデバイスごとの設定を一元管理する「グループポリシー」設定の拡張、OSドライブおよびリムーバブルメディア(取り外し可能な記録媒体)に対する機能も強化された。この更新は「Windows 11」と、「Windows Server 2016」以降の「Windows Server」のBitLockerにも適用されている。
BitLockerを使用するには、「RSA」(Rivest-Shamir-Adleman)方式の暗号鍵を格納できるチップが必要だ。このチップは、ハードウェアベースの暗号化を提供するセキュリティモジュールの規格「TPM」(Trusted Platform Module)に準拠しているものでなければならない。つまりPCのマザーボードが、TPM準拠のチップを搭載することになる。TPM準拠チップはBitLockerと連携し、ユーザーデータを保護する役割を担う。
BitLockerが有効になると、PCの起動時にロック画面が表示され、PINコードまたは48桁の数字パスワード「回復キー」(「回復パスワード」とも)の入力が必要になる。回復キーを保存したUSBメモリなどのリムーバブルメディアを使ってロックを解除することも可能だ。エンドユーザーが回復キーを失念または紛失した場合のために、回復キーを外部メディアにバックアップしておくとよい。
TPM準拠チップを搭載していないPCでも、BitLockerによるドライブの暗号化は可能だ。ただしこの場合、USBメモリに保存したスタートアップキー(BitLockerで暗号化されたPCを起動するための鍵)が必要になる。BicLockerとTPM準拠チップを組み合わせて使用すると、起動前のシステム整合性検証を強化できるため、MicrosoftはTPM準拠チップの利用を推奨している。
BitLockerの管理ツールとして、「BitLocker回復パスワードビューアー」などのツール群がある。BitLocker回復パスワードビューアーは、バックアップとしてID・アクセス管理システム「Active Directory」(AD)に登録した回復キーを検索、表示するツールだ。暗号化済みのストレージからデータを回復する際に役立つ。他に利用可能なツールとして、コマンドラインで使う「manage-bde」「repair-bde」がある。
デスクトップPCやノートPCの他、USBメモリなどのリムーバブルメディア(取り外し可能な記録媒体)もBitLockerを適用できる。
BitLockerで暗号化されたPCを起動する際、PINコードを入力する必要がある。適切なPINコードか回復キーかスタートアップキーがなければ、PCを起動できない。
BitLockerはADと連携可能であり、回復キーをADで一元的に管理できる。これによって、システム管理者はBitLockerを適用するPCの展開や管理、回復を効率的に実行できる。
対象PCのドライブ全てを自動的に暗号化するため、手動で暗号化やそれに関する設定を適用する手間が省ける点がBitLockerのメリットだ。ただしBitLockerを利用できない古いWindowsや他のOSでも、ファイル単位やストレージ単位で暗号化する方法は存在する。
テレワークや社外での作業が普及する中で、ノートPCの紛失、盗難は後を絶たない。BitLockerを使用すれば、PC内のデータを暗号化できるため、第三者による不正なアクセスや悪用のリスクを低減可能だ。BitLockerの主な用途を以下に挙げる。
BitLockerは企業が規制要件を満たすのに役立つ。具体的には、以下の規格や標準がある。
従業員に貸与するPCをBitLockerで暗号化することによって、許可された従業員のみがデータを閲覧できるようなり、内部不正の防止につながる。
廃棄するPCのストレージをBitLockerで暗号化すれば、廃棄後に第三者からデータを不正に取得されることを防止できる。
次回は、BitLockerの使用方法と使用時の注意を解説する。
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