MetaのCEOが語る「AIはもう中堅エンジニア並み」 開発現場はどうなる?MetaとMicrosoftが示すコーディングの未来

MetaのCEOマーク・ザッカーバーグ氏は、同社が開催したイベントで「AIコーディングの将来像」について語った。その見解に対しては、ソフトウェア開発の将来にリスクをもたらすものだという見方もある。

2025年06月26日 08時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

関連キーワード

人工知能 | 開発プロセス


 Meta Platforms(以下、Meta)が2025年4月に開催したAI(人工知能)技術関連の開発者会議「LlamaCon」で、同社のCEOマーク・ザッカーバーグ氏とMicrosoftのCEOサティア・ナデラ氏は、AIエージェントを用いたコーディング(以下、AIコーディング)の今後について意見を交わした。ザッカーバーグ氏が示した見解は、AIエージェントの活用が開発効率や収益性の向上につながるというものだが、それは同時に、ソフトウェア開発の将来にリスクをもたらすものだという見方もある。

開発者ではなく「AIエージェント」が主役になる時代の“懸念”

 ナデラ氏によると、Microsoftのソースコード共有サービス「GitHub」のリポジトリでは、最大で30%のソースコードがAIエージェントによって生成されている。ソフトウェア開発者向けのツールを提供する企業としてスタートしたMicrosoftは今、AI技術を用いたコーディングツールの開発を主軸の一つに据えているという。

 ザッカーバーグ氏は、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)でユーザーの関心を引き付けるために、AIコーディングを活用したコンテンツ戦略を加速させる方針を示した。Metaが開発するAI技術で、ユーザーの注目を広告へと誘導することで、同社の収益向上につなげる狙いだ。

 2025年第1四半期(2025年1〜3月)の決算説明会において、ザッカーバーグ氏は「AIコーディングの実力は、中堅エンジニアのレベルに近づきつつある」と語った。2026年までに、MetaのAI関連研究開発の大半はAIエージェントによって実行されるようになる見込みだ。「数年以内には、カスタマーサービスにAIエージェントを導入するのが当たり前になる」と同氏は述べている。

 Metaのように、AIシステムが収益や顧客満足度といったKPI(重要業績評価指標)の達成を目的として設計および訓練されている場合、その開発とデプロイ(展開)が早ければ早いほど、投資収益率(ROI)も高まる傾向にある。

着実に進むAIエージェント導入

 企業が新たな開発プロジェクトに取り組む際は、次のいずれかのアプローチを選択するのが一般的だ。

  • 社内の専門知識を活用する
  • 外部コンサルタントに依頼する
  • ソースコード生成に最適化された大規模言語モデル(LLM)にタスクを任せる

 一部の企業は、AIエージェントの初期導入コストを理由に、まずは社内リソースの活用を選ぶだろう。しかし、長期的に見るとAIエージェントのコストは低下していくため、人間のプログラマーが代替される可能性がある。AIエージェントは、高速かつ安定的なコーディングが可能で、人間膿瘍に休憩を必要としたり、体調不良を訴えたりすることもない。

 ザッカーバーグ氏の発言で懸念されるのは、同氏の見解が、ソフトウェア開発者の継続的なスキル習得や人材育成の重要性に目を向けていない点だ。人間の開発者をプロジェクトマネジャー的な立場に再配置する戦略は一つの方向性として考えられるが、AI技術の進化が加速すれば、プロジェクトマネジャーという役割さえも必要なくなる恐れがある。

<翻訳・編集協力:雨輝(リーフレイン)>

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国Informa TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...