英国教育省は、生徒の進路に関わる成績証明書をデジタル化し、モバイルアプリケーションで配信する取り組みを進めている。これは教育機関が抱えるさまざまな課題を解消し得る一方、新たな課題を生み出す懸念もある。
2025年夏、英国の大学入学資格試験「Advanced Level General Certification of Education」(GCE A Level)や、同国における義務教育後の卒業認定試験「GCSE」(General Certificate of Secondary Education)を受験した学生は、試験結果をデジタルデータで受け取ることになる。この取り組みが、英国の教育機関が抱えるさまざまな課題の解消や経費の削減につながると同国政府は期待している。どのような効果が期待されているのか。
英国は、教育分野の官僚的手続きを簡素化し、年間3000万ポンド(約60億円)の経費削減を目指す計画を進めている。試験結果送付のデジタル化はその一環だ。これは、高等教育機関の新任教員600人以上の給与に相当する金額になる計算だ。
この取り組みは、公共部門全体でデジタル技術を活用し、年間450億ポンド(約9兆円)の生産性向上を図るという、より大規模な政府計画の一部でもある。計画を主導するのは、英技術省大臣のピーター・カイル氏だ。
英国教育省(Department for Education:DfE)が2025年5月に発表したプレスリリースによると、同省では個人の教育に関する記録の提供を、紙ではなく、「Education Record Pilot」という名称のアプリケーションを通じて実施することにした。従来通り学校で直接受け取る選択肢も用意されている。
学生は、以下をはじめとした進路の決定時に、試験記録を容易に利用できるようになる。
Education Record Pilotは英国の一部の教育機関で試験運用されており、2025年夏、全国展開に先駆けて9万5000人以上の若者がこの仕組みを利用する計画だ。
Education Record Pilotは、生徒に関する以下の情報を含む教育記録を提供する。
英国で初等教育担当大臣を務めるスティーブン・モーガン氏はこの試行導入について、「教育機関は事務作業に追われることなく、本来の役割である次世代の教育に集中できるようになる」と説明する。
英国政府によると、Education Record Pilotは、16歳から18歳までの生徒を対象とした2年間の教育課程「sixth form」をはじめとした教育や研修機関への出願、入学手続きにも拡大する計画だ。従来のように学生が資格証明書などの紙の書類を持参する必要がなくなり、情報をデジタル形式で共有できるためだ。
2024年春からEducation Record Pilotの試行運用をしている教育機関の校長、マーク・ジャイルズ氏は、「Education Record Pilotが提供するデータは正確かつ偽造や改ざんがされていないと証明できるため、教育機関に即座に提示できる。この点において、生徒と教職員の評価は高い傾向にあった」と評価する。
英国の学校指導者労働組合(NAHT)の事務局次長、ジェームズ・ボーウェン氏は、官僚主義やコストの削減につながる取り組みを歓迎しつつも、慎重な運用を求めている。
問題が発生した場合にも、生徒や教育機関への支援を途切れさせずに遂行するとともに、その経験から迅速に教訓を得ることも重要だ」とボーウェン氏は話す。同氏は続けて、「試験結果のような、極めて重要な情報を扱う以上、政府にはこの取り組みを完遂させる責務がある」と言い添える。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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