目指せCISO? セキュリティ職のキャリア4レベルと“リアルな年収”セキュリティ職のキャリアアップ【前編】

一口にサイバーセキュリティと言っても、その職種は多岐にわたり、個人が積むキャリアも異なる。キャリアを4つのレベルに分類し、それぞれの役割や年収、学歴の目安などの“リアル”を紹介する。

2025年08月03日 08時00分 公開
[Chris TozziTechTarget]

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 これからサイバーセキュリティのキャリアをスタートさせる人も、既に経験を積んでさらなる高みを目指している人も、まずはキャリアロードマップを理解することが重要だ。キャリアロードマップとは、特定の業界で専門家が経験する一般的な役職や昇進のステップを定義したものだ。

 ただし、サイバーセキュリティ分野のキャリア形成は一筋縄ではいかない。キャリアの段階や役割は企業によって大きく異なるからだ。同様に、報酬水準や求められるスキル、成長の機会も、職種によって千差万別だ。

 本連載は、サイバーセキュリティのキャリアを形成する上で知っておくべきことを解説する。主なキャリアレベルと関連する役割、一般的な昇進ルートを明らかにし、キャリアアップに最も重要なスキルに関するヒントを提供する。

初級からCSOまで サイバーセキュリティにおける4つのキャリアレベル

 サイバーセキュリティのキャリアパスは、役職、経験、学歴、給与水準の違いによって、4つのレベルに分類できる。

レベル1.エントリーレベル

 サイバーセキュリティ未経験者の場合、通常はエントリーレベルの職務からキャリアをスタートさせる。具体的な役職名は「アナリスト」「スペシャリスト」などさまざまだ。具体的な名称としてはサイバーセキュリティアナリスト、ITセキュリティアナリスト、フォレンジックアナリストなどが挙げられる。企業内でサイバーセキュリティの脅威を検出し、軽減する役割を担う「SOC」(セキュリティオペレーションセンター)という用語が役職名に含まれることもある。SOCは通常、エントリーレベルの人員が中心となって構成される。

 エントリーレベルの役割は、監視ツールからの通知を受けて脅威やリスクに対処する、「最前線」の業務が中心となる。ほとんどの場合はプレイブック(インシデント対処に関する手順や要領を整備したチェックリスト)に従って作業を進めることになる。予期しない脅威に直面した際は、必要に応じて手順書から外れた判断を下せる能力を示すことで、他の担当者との違いをアピールできる。

 当然ながら、エントリーレベルやキャリア初期の給与は、上級職に比べて低い水準にある。求人情報サイトZipRecruiterは、同サイトに寄せられた求人情報を基に給与の統計情報を算出している。それによると、2025年7月の米国におけるサイバーセキュリティアナリストの平均年収は約10万ドルだ。

 給与が低くなりがちな一方で、エントリーレベルの役職には正規の学位がなくても比較的就きやすいという利点がある。キャリア情報サイトZippiは、同サイトが収集した履歴書を集計し、サイバーセキュリティアナリストのうち学士号を取得しているのは61%だったと分析する。ITに関する職務経験やトレーニング経験があれば、正規の学位がなくてもサイバーセキュリティの職を見つけることは十分に可能だ。

レベル2.中間レベル

 一般的に、中間レベルの役職は、「アーキテクト」「エンジニア」といった言葉でキャリア初期の役割と区別される。「情報セキュリティアーキテクト」「サイバーセキュリティエンジニア」といった役職がこれに当たる。ただし、「エンジニア」という言葉はエントリーレベルの役職名にも見られる。

 中間レベルの職務は、エントリーレベルの担当者が実施する日常的な運用業務よりも、セキュリティシステムやプロトコルの設計、実装に重点を置く。それよりも複雑なインシデント対処への支援を求められることもある。

 通常、中間レベルの職務の給与は10万ドルを大きく上回る。ZipRecruiterによると、2025年7月の米国における情報セキュリティアーキテクトの平均年収は約15万5000ドルだ。

 中間レベルの職務では、学歴の要件も厳しくなる。労働市場分析を手掛けるLightcastは、25億件以上の求人情報および専門職の履歴データベースを分析して、2024年第3四半期(7〜9月)時点でのサイバーセキュリティ分野における雇用情勢を分析した。その結果によると、サイバーセキュリティアーキテクトの99%が学士号か修士号を取得している。サイバーセキュリティアーキテクトに就く人は通常、少なくとも5年、たいていの場合それ以上の実務経験を持つ。

レベル3.上級レベル

 サイバーセキュリティのキャリアをさらに上ると、上級レベルの役割に就くことができる。これらの役職には「シニアサイバーセキュリティアーキテクト」のように、「シニア」という言葉が付くことが一般的だ。「ディレクター」「バイスプレジデント」といった役職も考えられる。

 上級レベルのセキュリティ職は、通常、サイバーセキュリティ専門家のチームを監督する責任を負う。さまざまなセキュリティの役割に何人のスタッフを割り当てるかを決定し、サイバーセキュリティツールの評価や、企業のセキュリティ戦略の策定において主導的な役割を果たすこともある。

 給与は20万ドルを超える場合がある。キャリア情報サイトGlassdoorが、同サイトに寄せられた求職者の給与情報を基に算出したデータによると、2025年7月におけるシニアサイバーセキュリティアーキテクトの平均年収は約21万ドル、情報セキュリティディレクターの平均報酬は約22万ドルになる。

 上級レベルのサイバーセキュリティ職のほとんどは大学の学位を持ち、下位レベルの役職で10年以上の経験を積んでいることが通例だ。

レベル4.経営幹部レベル

 サイバーセキュリティキャリアの最高位は、経営幹部の役職だ。ほとんどの企業では、CISO(最高情報セキュリティ責任者)がセキュリティのトップとなる。企業によっては、CISOの代わりに、あるいはCISOに加えて、CSO(最高セキュリティ責任者)を置くこともある。CSOの責任範囲は通常より広く、サイバーセキュリティだけではなく、あらゆる種類のリスクを網羅する。

 これらの役職は通常、IT企業全体を監督するCIO(最高情報責任者)の下に就く。一部の企業では、CISOやCSOはCIOの部下ではなく、同格の立場で業務を遂行する。

 経営幹部レベルのサイバーセキュリティ職の給与は、企業の規模や所在地によって15万ドルから30万ドルの範囲で変動する。大企業ではCISOの年収が100万ドル以上に達することもある。

 意欲的な人材がわずか10年ほどの経験でCISOになることも珍しくない。だが大半の人にとって、CISOはサイバーセキュリティ分野で数十年を過ごした後にようやく到達できるものだ。技術的な側面の習熟だけではなく、取締役会との連携、他の経営幹部との折衝、セキュリティ予算の管理といった能力も求められる。


 次回は、サイバーセキュリティ分野での具体的なキャリアを紹介する。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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