OpenAIの無料モデルは“ただでは使えない”? 利用時の注意点オープンモデルの“意外な欠点”

OpenAIが、誰でも利用できるオープンなAIモデルを公開した。しかし、その手軽さの裏には、企業が見過ごしてはならない複数のリスクが潜んでいる。オープンモデルを導入する前に知っておくべき注意点とは。

2025年08月15日 05時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

関連キーワード

人工知能 | OSS


 AI(人工知能)アシスタント「ChatGPT」の開発元であるOpenAIは、2つの大規模言語モデル(LLM)「gpt-oss-120b」と「gpt-oss-20b」をオープンソースライセンス「Apache License 2.0」の下で公開した。これらのモデルはオープンウエート(重み付けが公開されているAIモデル)であり、「既存のオープンモデルの性能を上回る」と同社は説明する。その詳細と、オープンなAIモデルを使う際に気を付けるべき注意点を解説する。

「OpenAIのオープンモデル」は何がすごい?

 OpenAIの説明では、gpt-oss-120bとgpt-oss-20bは推論タスクにおいて同規模のオープンモデルの性能を上回り、一般消費者向けのハードウェアでも効率的に動作するよう最適化されている。同社によれば、gpt-oss-120bは主要な推論ベンチマークで「OpenAI o4-mini」とほぼ同等の性能を達成し、80GBのGPU1基で動作する。gpt-oss-20bは一般的なベンチマークで「OpenAI o3-mini」に匹敵する結果を出し、16GBのメモリを搭載するエッジデバイスでも実行可能だ。

 半導体メーカーNVIDIAは、gpt-oss-120bとgpt-oss-20bが同社のGPU(グラフィックス処理装置)「NVIDIA H100 Tensor Core GPU」でトレーニングされたと発表した。これらのモデルは、AIモデルをアプリケーションに組み込むことを支援するマイクロサービス群「NVIDIA NIM」で利用できる。

 オープン技術を推進する業界団体OpenUKでCEOを務めるアマンダ・ブロック氏は、「AIモデルをオープンにすることは、社会のあらゆるニーズに応えると同時に、誰もがアクセスできるデジタル公共財となる力を持つ」と語る。大手IT企業が広く利用しているオープンソースソフトウェアのように、ベンダーが事実上の標準を生み出し、普及を促進する力を持つことは、競合他社をリードするための有効なビジネス戦略になり得る。Meta PlatformsのオープンLLM「Llama」はその一例だ。「AI技術開発が国家間の競争の情勢を左右する現状において、AIモデルがオープンであることは、そのAIモデルが世界的に普及し、影響力を持つ上で不可欠だ」と同氏は指摘する。

 オープンなAIモデルの利点は、クローズドではなく、誰でも性能を検証できる点にある。これによって品質の向上や問題の解消が進み、トレーニングデータの多様性不足に起因するバイアス(偏見)の是正にもつながることが期待される。企業はオープンモデルを利用して、自社の業務に合わせてLLMを微調整(ファインチューニング)できる。

 調査会社Gartnerでシニアディレクター兼アナリストを務めるハリタ・カンダバトゥ氏によれば、Llamaに代表されるオープンモデルは、主に規制の厳しい業界において、試験導入という形で普及している。同氏は、企業がオープンモデルを試す理由は、「AIモデルを自社の管理下に置きたい」ことにあると考える。

オープンモデルを使う上で注意すべきこと

 ただしオープンモデルを使う上では、商用モデルにはない注意点があるとカンダバトゥ氏は指摘する。1つ目は、オープンモデルをどこで、どのように展開するかによっては、大規模なインフラが必要になる場合がある点だ。同氏が話を聞いたITリーダーによれば、導入にかかる総所有コスト(TCO)は「非常に高い」とのことだ。これはオープンモデルのカスタマイズ、実行、維持には、多額の運用費と技術的な費用がかかることを示唆している。

 2つ目は、コーディング支援などの用途でオープンモデルを使用した場合、商用モデルの性能に及ばないことがある点だ。その結果、従業員や開発者の体験価値、業務の処理速度が低下したりするなど、企業に悪影響が及ぶ可能性がある。

 3つ目は、企業向けサポートが得られない場合がある点だ。自社が必要とするサポートを受けられるかどうかという点も含めて、オープンモデルの長所と短所を慎重に検討するようカンダバトゥ氏は促す。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...