「生成AI」ツールの利用が広がる一方で、急速に活用機運が高まる「AIエージェント」。この2つは、何が違うのか。それぞれの特徴をおさらいしつつ、両者の違いを整理しよう。
「生成AI」(AI=人工知能)ツールと「AIエージェント」は同列で語られがちだ。だが両者には明確な違いがある。その違いを理解することが、両者を適切に導入し、成果を最大化する第一歩となる。
生成AIツールも、AIエージェントも、それぞれ個別に利用できる。一方で両者を連携させることで、コンテンツ生成と自律的な意思決定の機能を組み合わせる運用が進みつつある。両者をうまく活用するには、両者の目的と強み、そして違いを把握することが欠かせない。
学習済みデータから抽出した特徴やパターンを活用し、ユーザーの指示に沿ったアウトプットを作り出すのが、生成AIツールの特徴だ。生成AIモデル(生成AIツールの中核要素)の代表例である画像生成モデルは、指示に基づいて新しい画像を生成することに加えて、既存の写真を漫画風に変換するといった加工もできる。
生成AIツールはプロンプト(指示文)を解釈し、それに関連するアウトプットを合成して出力する。分析や意思決定よりもアウトプットの作成を主な目的として設計されている点が、AIエージェントとの主な違いだ。生成AIツールは新しいコンテンツを生成したり、既存のデータを加工したりすることに優れる。一方で意思決定や分析での利用には限界がある。
一般的な生成AIツールは、テキスト、音楽、画像、動画、ソースコードといった特定の形式でのアウトプットに特化している。生成AIツールおよび生成AIモデルの代表例は以下の通りだ。
生成AIツールとは対照的に、AIエージェントはルールや業務手順などに単純に従うだけではなく、変化する状況に応じて、一定の自律性を持って行動する。目標の達成に向けて、人の介入を極力抑えながら意思決定をすることが可能だ。AIエージェントは収集したデータのパターンや関係性を意思決定に反映し、環境の変化に応じて自らの行動を調整する。この特性により、複雑な業務手順の処理や顧客対応、サプライチェーン管理など、さまざまな実務で活躍し得る。
生成AIツールの中核要素である生成AIモデルは、深層学習モデルの一種として位置付けられる。深層学習とは、多層構造のニューラルネットワークを用いてデータから特徴を抽出し、入力と出力の関係を学習する、機械学習の一種だ。
深層学習モデルは、人の脳に着想を得た学習プロセスを通じて、画像やテキスト、音声などの非構造化データを処理する。主な深層学習モデルには以下がある。
LLMは、自然言語を生成できる代表的な生成AIモデルだ。人の指示に対して、会話形式で回答を生成することもできる。生成AIモデルは、テキストや画像などの膨大なデータについて、それらの関連性やパターンを数値化(エンコード)して学習する。
ユーザーは、望むアウトプットとの関連性のあるプロンプトを作成し、生成AIツールを活用する。プロンプトの作成技術は「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれ、専門職化している。例として「漫画のスタイルで、不気味な森の水彩画を描いて」というプロンプトが挙げられる。生成AIツールは、生成AIモデルがさまざまなデータで学習した結果を基に、プロンプトの要素に沿ってアウトプットを生成する。ユーザーはアウトプットを確認してプロンプトを拡張・修正することで、より望ましいアウトプットを引き出せる。
生成AIモデルは無からアウトプットを創造するわけではなく、学習していない分野については、適切なアウトプットを生成しにくい。そのため、例えばプログラミング言語「Python」について訓練されていない生成AIモデルにPythonソースコードの説明を求めても、正確な回答は期待できない。
AIエージェントは構成要素として、LLMなどの深層学習モデルをはじめ、生成AIツールと共通する要素を含むことがある。LLMは膨大なデータ群で学習し、自然言語の統計的パターンを捉えることで、文脈に沿ったテキストを生成する。LLMや「強化学習」といった他の関連技術の組み合わせは、高い自律性を備えたAIエージェントの実現につながる。強化学習とは、試行錯誤を通じて適切な方策を見つけ出す機械学習のことだ。
一般的にAIエージェントは、次の4つの段階を繰り返して動作する。
生成AIツールとAIエージェントを組み合わせれば、それぞれの単体では得にくい創造性と実行力を発揮できる。生成AIツールは自然言語を理解してコンテンツを生み出し、AIエージェントは目標達成のために計画を立てて行動する。
連携方法は多岐にわたる。考えられる例は次の通りだ。
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