「ChatGPT」は個人ユーザーだけではなく、ビジネス領域でも利用が広がっている。企業はChatGPTを何に、どう使っているのか。OpenAIの欧州幹部が、その利用シーンを解説する。
人工知能(AI)ベンダーOpenAIは、人間の認知能力を再現し、人間と同じようにあらゆるタスクを実行できる人工知能(AI)技術「AGI」(汎用人工知能)の開発や提供によって「全ての人に利益をもたらす」ことをミッションに掲げている。同社は民間企業に加えて、国家プロジェクトにも深く関わるようになった。2025年7月には英国政府と戦略的パートナーシップを締結し、司法や教育といった公共分野でのAI技術活用を共同で模索している。
OpenAIのヨーロッパにおけるエンジニアリングチームを率いるマット・ウィーバー氏によると、同社のAIチャットbot「ChatGPT」は2025年8月時点で、世界中で毎週約7億人に利用されており、ビジネス活用も広がっている。企業はChatGPTをどう活用しているのかを同氏に聞いた。
ウィーバー氏によれば、ChatGPTには毎日約10億件の問い合わせが届いており、「驚くべき使用状況だ」と語る。この勢いはビジネス利用にも及んでおり、法人向けにデータプライバシーを強化した有料版「ChatGPT Enterprise」の導入も広がっているという。同氏によると、ChatGPT Enterpriseのユーザー数は2025年6月時点の300万人から、同年8月には500万人にまで急増した。
ウィーバー氏が率いるチームは、ユーザー企業と直接やりとりして、AI技術をどのように適用するかを考える技術者を擁する。そのユーザー企業は、銀行や保険会社といった大企業からスタートアップ(新興企業)まで多岐にわたる。
OpenAIは技術の開発や展開に関して、Microsoftとのパートナーシップに注力している。その一環として、OpenAIのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)をクラウドサービス「Microsoft Azure」で独占的に利用可能にした。これによって、Microsoft Azureのユーザー企業は自社システムにChatGPTを組み込めるようになった。
では、企業はChatGPT Enterpriseをどう活用しているのか。金融機関Morgan Stanleyの資産管理サービス部門は、金融アドバイザーが同社の知識ベース(過去案件などの情報集)にアクセスできる仕組みをAIモデルを用いて構築した。金融アドバイザーが即座にさまざまな情報を調べて知識を深め、顧客ニーズに合わせた提案を生み出せるようになったという。
航空会社Virgin Atlantic AirwaysはChatGPT Enterpriseを基盤として、旅行者向けにパーソナライズされたプランを提案するサービスを発表した。エンドユーザーは言語を問わず、専用アプリケーションから要望を伝えると、旅行の提案を受け取ることができる。音声入力が可能であるため、ハンズフリーで利用できる点も特徴だ。ウィーバー氏によると、サービス開始は2025年後半の見込みだ。
企業がAI技術を導入する上で懸念になるのがデータのセキュリティだ。ウィーバー氏はこの点について「万全の体制を敷いている」と強調する。
ウィーバー氏によると、ChatGPT Enterpriseは企業システムと連携する機能を備え、社内データを自動的に取り込んで利用できる。「これらのデータは暗号化され、ChatGPT Enterpriseのアカウント内で完全に保護されている」と同氏は強調する。OpenAIが、取り込まれたデータをAIモデルの学習に使うことはないという。
OpenAIがセキュリティに関して採用している手法は、システムへのアクセスを許可するために使用される認証の仕組みに似ているという。例えば、ChatGPTを介して社内ポータルサイト構築ツール「Microsoft SharePoint」やオンラインストレージサービス「Google Drive」で社内データを検索する場合、そのエンドユーザーが持つアクセス権限の範囲内のみが検索対象になる。アクセス権がないデータはChatGPTを使用しても取得できないという。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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