AIベンダーによる技術のオープンソース化が広がっている。2025年6月、Baiduは同社AI基盤モデル「ERNIE 4.5」のオープンソース提供を始めた。大手AIベンダーが次々に自社技術を無料で公開しているのはなぜなのか。
検索エンジンを手掛ける中国のITベンダーBaidu(百度)は2025年6月30日(現地時間)、同社AI(人工知能)技術の基盤モデル「ERNIE 4.5」のオープンソース化を発表した。基盤モデルとは、多様な大規模データを事前学習することで、さまざまな用途に活用できる汎用(はんよう)的なAIモデルを指す。ERNIE 4.5は、数値や画像、テキスト、音声など複数の種類のデータを組み合わせて処理できる「マルチモーダル」設計を採用している。
AI技術のオープンソース化に取り組んでいるベンダーはBaiduだけではない。この動きは、さまざまな大手AIベンダーの間にも広がっている。
Baiduは、同社が開発している深層学習フレームワーク「PaddlePaddle」を用いてERNIE 4.5の訓練を実施している。ERNIE 4.5は2025年3月に非オープンソースで公開されていた。今回、オープンソース化されたバージョンは、Apache Software Foundation(ASF)のオープンソースソフトウェア(OSS)向けライセンス「Apache 2.0」の下で利用可能になっている。同社はERNIE 4.5用の開発ツールキットもオープンソース化した。
ERNIE 4.5は、「スパース混合エキスパート」(MoE:Mixture of Experts)手法を採用している。MoEとは深層学習のアーキテクチャにおいて、「エキスパート」(専門家モデル)と呼ばれる、特定のタスクに特化したモデルを複数組み合わせる手法だ。これによって、パフォーマンスを向上させ、高度な回答を得られるようにする。
Baiduは以前にも、PaddlePaddleをオープンソース化した。中国のAIベンダーDeepSeekも、同社の推論モデル「DeepSeek-R1」をオープンソース化している。BaiduとDeepSeekはAI技術分野で、中国のクラウドベンダーAlibaba Group(Alibaba)や、Googleをはじめとした米国勢と競争している。Googleは2025年6月、オープンソースのAIエージェント「Gemini CLI」を発表した。イーロン・マスク氏が率いるxAIや、中国の通信機器大手Huawei Technologiesも、自社AIモデルのオープンソース化に踏み切っている。
調査会社Forrester Researchのアナリストであるマイク・グアルティエリ氏は、「AI技術分野でオープンソース化が主流になる可能性がある」と述べる。同氏によると、AIモデルを開発しても、それをオープンソース化して普及させないと、利益を捻出しにくい場合がある。「オープンソース化の流れはベンダーだけではなく、オープンソースコミュニティーやエンドユーザーにとっても良いことだ」と同氏は説明する。
調査会社Futurum Groupのアナリスト、ブラッドリー・シムミン氏によれば、Baiduの特徴の一つはMoEにある。BaiduはMoEの採用によって、情報をテキストと画像の両形式で処理できるようにしている。これによってAI技術を大きく前進させ、「これまで達成できるとは思わなかった価値を提供している」と同氏は語る。
シムミン氏は、「オープンソースの魅力はコミュニティー主導であることだ」と述べる。コミュニティーはデータサイエンティストや機械学習エンジニア、研究者、企業の実務者からなる。すでにオープンソース化されたERNIE 4.5を採用する企業も登場しており、「コミュニティーがこの技術に賛同している証だ」と同氏は説明する。
AI技術のオープンソース化が広がっている中、課題になるのは、オープンソースの技術を採用する際のサポート体制の欠如だ。例えばAmazon Web Services(AWS)は、クラウドサービスで生成AIアプリケーションを構築するための機械学習サービス「Amazon Bedrock」の提供に関して、オープンソース版の他、商用版も提供しており、サポート体制の欠如の解決を目指している。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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