ハイパーバイザーにはタイプ1、タイプ2の2種類がある。管理性やパフォーマンス、セキュリティといったさまざまな観点で両タイプの違いを解説する。
サーバ仮想化技術の中核を担う「ハイパーバイザー」は、大きく「タイプ1」と「タイプ2」に分けられる。どちらを選ぶかは、導入環境や用途、求められるパフォーマンスやセキュリティ要件によって異なる。両者の違いを整理し、それぞれの特性を正しく理解しておくことが欠かせない。
タイプ1、タイプ2両者の基本を紹介した前編「いまさら聞けない、ハイパーバイザー『タイプ1』と『タイプ2』の違い」に続き、後編となる本稿は、管理性やパフォーマンス、セキュリティなどさまざまな視点から両タイプを多角的に比較する。
ハイパーバイザーを選定する際には、タイプ1とタイプ2という2種類の違いを正しく理解しておくことが重要だ。それぞれの特徴は、以下のように整理できる。
タイプ1ハイパーバイザーは、サーバのハードウェア上で直接動作するスタンドアロン型の仮想化ソフトウェアで、OSを介さずにシステムの中核を担う。複数の仮想マシン(VM)を効率よく作成・管理する高度な機能を備えているが、同時に高度な仮想化知識とサーバ管理スキルが求められる。
一方、タイプ2ハイパーバイザーは、「Windows」や「macOS」といった既存のOS上で動作するアプリケーション型の仮想化ソフトウェアだ。「VMware Workstation」や「Oracle VM VirtualBox」などが該当する。比較的導入は容易で、専門知識がなくても使えるが、仮想マシンを扱うための基礎的な知識は持っておいた方がよい。
タイプ1ハイパーバイザーは、物理マシンのハードウェアに直接インストールされる。OSが不要で、その分シンプルかつ効率的にリソースを利用できる。
一方、タイプ2ハイパーバイザーはホストOSの上にインストールされ、通常のアプリケーションのように動作する。すでに稼働しているOS環境に追加導入できる手軽さが特徴だ。
タイプ1ハイパーバイザーは、CPUやメモリといったハードウェアリソースに直接アクセスし、それを仮想化してVMに割り当てることができる。
タイプ2ハイパーバイザーは、コンピュータのリソースにアクセスして仮想化する必要があり、ホストOSを介して実行する。
タイプ1ハイパーバイザーは、ハードウェアに直接アクセスできる構造のため、VMのパフォーマンスが高く、エンタープライズ用途に適している。近年のプロセッサアーキテクチャの進化により、タイプ2との性能差は縮まりつつあるが、高負荷環境やリアルタイム性が求められる用途では、やはりタイプ1が優位だ。
タイプ1ハイパーバイザーはVM間でリソースやサービスを共有しない設計になっており、あるVMでセキュリティ侵害が発生しても他のVMには影響がない。一方、タイプ2ハイパーバイザーはホストOSが共通のリスク要因となり、OSに脆弱性があると全VMに影響を与える可能性がある。両方のハイパーバイザータイプともパッチ(修正プログラム)を適用し、更新し続けることが重要であり、タイプ2ハイパーバイザーシステムではホストOSも積極的にパッチ適用し更新する必要がある。
仮想化の処理を支援するためのハードウェアアクセラレーション技術は、広く利用可能になっている。代表的なものとしては、Intelプロセッサ向けの「Intel Virtualization Technology」(VT-x)拡張機能や、Advanced Micro Devices(AMD)製プロセッサ向けの「AMD Virtualization」(AMD-V)拡張機能がある。その他にも、CPUの仮想化支援機能「Second Level Address Translation」(SLAT)や、「入れ子になった仮想化」(Nested Virtualization:仮想マシン上でさらに別の仮想マシンを動作させる技術)といったさまざまな拡張機能が存在する。
これらのハードウェアアクセラレーション技術は、仮想リソースの作成や管理に必要な処理負荷の大きい作業を、コンピュータ側で担うことができる。その結果、仮想化の性能が向上し、ハイパーバイザー単体では難しい数のVMをホストできるようになる。
タイプ1とタイプ2の両方のハイパーバイザーは、ハードウェアアクセラレーションを利用しているが、その依存度には違いがある。タイプ1ハイパーバイザーは、ハードウェアアクセラレーション技術に依存しており、それらがシステムのBIOS設定で有効化されていないと機能しない。
タイプ2ハイパーバイザーは、コンピュータにハードウェアアクセラレーション機能が備わっていれば、それを利用できる。ネイティブのハードウェアサポートが利用できない場合は、ソフトウェアエミュレーションに依存する。ただし、ソフトウェアエミュレーションに依存するコンピュータでは、VMの数やパフォーマンスが制限されることがある。
現在では、ほとんどの企業向けサーバは、優れたハードウェアアクセラレーション機能を備えているが、使用するハイパーバイザーがどのようなハードウェアアクセラレーションをサポートするのか、あらかじめベンダーに確認することが重要だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...