“Windows 11未移行”企業が見直すべき「Windows 10脱却」だけではない真の問題OS更新の先にあるIT運用問題【前編】

2025年10月に迫るWindows 10のサポート終了は、運用体制の見直しを検討する絶好の機会になる。中小企業がWindowsの移行を機に、PCの運用をどう進化させればよいのかを紹介する。

2025年09月24日 05時00分 公開
[そらのすけ雨輝ITラボ(リーフレイン)]

 MicrosoftのクライアントOS「Windows 10」の公式サポートが2025年10月14日に終了する。中小企業はこれを単に「Windows 11」への移行機会として捉えるのではなく、属人化した運用体制や、手作業に依存したキッティングといった従来のIT運用から脱却するための転換点として見るべきだ。どのように現実的かつ持続可能なIT運用体制を構築すべきなのか。本稿は、Windows 10のサポート終了がもたらす影響と、それを契機に、Windowsの運用をどのように見直せるのかを解説する。

Windows 10サポート終了がもたらす運用上の問題

 Windows 10の公式サポートは2025年10月14日で終了する。基本的にはHome、Pro、Enterpriseを含む全てのエディションがサポート終了の対象になり、その後はセキュリティの修正を含めて更新プログラムが配信停止となる。Microsoftは最大3年間の有償延長セキュリティ更新プログラム(ESU)を提供する予定だが、これは限定的な措置に過ぎず、根本的な対応とは言えない。

 サポート終了後もそのOSを使い続けることは、セキュリティ上の重大なリスクを抱えることを意味する。セキュリティパッチの適用ができなければ、マルウェア感染や情報漏えいのリスクが高まるだけでなく、業務アプリケーションが非対応になったり、利用サービスがベンダーによるサポート対象外となったりする可能性もある。これにより、業務の遅延や停止など、予期せぬ影響につながる恐れがある。

属人的な運用体制の限界と見直しの必要性

 中小企業のIT担当者(情報システム担当者)にとって、特定の個人に依存する「属人的な運用体制」は避けがたい課題だ。Windows10サポート終了は、中小企業のIT運用体制を見直す絶好の機会となり得る。ここでは属人的な運用体制の限界と、見直しのための観点をまとめる。

手作業のキッティングおよび運用の課題

 1人1台を配布するPC運用環境では、キッティングの際の予備機の確保が難しくなる場合がある。PCのセットアップやソフトウェアのインストールを手作業で実施する、1台当たりに膨大な時間がかかる。予備機が用意できなければ、業務停止のリスクが生じる。

 更新や設定を手作業で行うと、ヒューマンエラー(人的ミス)が発生しやすく、それがセキュリティインシデントの直接的な原因となることがある。統一された安全なIT運用を維持するためには、一定の運用作業を自動化することが不可欠だ。

IT担当者の業務負荷と“ひとり情シス”問題

 社内のIT管理を1人で担う、いわゆる「ひとり情シス」は、中小企業でしばしば見られる運用形態だ。担当者はPCの管理、ネットワークの保守、トラブル対応など幅広い業務を抱えており、常にリソース不足に直面している。そこにOSの更新作業が加われば、日常業務に支障が出たり、優先順位の低いタスクが後回しになりがちだ。その結果、担当者の負荷が一層高まり、OS更新期間中は社内全体の業務効率が低下する恐れがある。

セキュリティリスク・対応遅延の潜在コスト

 IT運用の属人化に伴うリスクの一つは、脆弱(ぜいじゃく)性への対応が遅延する点にある。例えば緊急のセキュリティアップデートが必要な場面で、担当者が不在だったり、対応手順が明文化されていなかったりすると、社員がインシデントに十分に対応できず、初動対応の遅れ、被害が拡大する恐れがある。こうしたリスクは、目に見えない「潜在的コスト」として企業活動に影響を及ぼす可能性がある。

中小企業のIT運用を進化させる現実的な選択肢

 OS更新は、単なるソフトウェアの切り替えにとどまらず、IT運用体制全体の再設計を促す契機でもある。以下では、Windows10サポート終了を契機とした運用改善策を紹介する。

1.「Windows Autopilot」で初期構成を自動化し、工数削減

 「Windows Autopilot」は、Microsoftが提供するクラウドベースの初期構成自動化ツールだ。PCの電源を入れ、インターネットに接続するだけで、事前に設定したユーザーごとの設定やポリシーが適用され、業務利用が可能になる。キッティング工程を大幅に簡素化でき、IT担当者の負荷を削減しつつ、統一された環境構築を実現可能とする。

2.「Microsoft Intune」で端末管理の統制と更新管理の効率化

 「Microsoft Intune」は、PCやスマートフォンなどの端末を一元管理するためのMDM(モバイルデバイス管理)ツールだ。端末ごとの利用状況やセキュリティポリシーの適用状況を可視化できる他、運用時に発生した更新プログラムやアプリケーションの配信を集中管理することもできる。特にOSやセキュリティパッチの自動適用は、属人的な運用を排除し、リスク低減と工数削減を両立させることにつながる。

OS更新はIT体制を進化させるチャンス

 Windows 10のサポート終了は、属人的な手作業から脱却するための絶好の機会になる。クラウドベースの運用自動化へ移行することで、中小企業でも効率的で持続可能なIT管理体制を構築することができる。コストや人的リソースの制約がある中で、いかに運用面での「現実的な進化」を実現できるかが重要になる。

 リソース不足や予算の制約があり、本稿で紹介した手段をすぐに導入するのが難しく、どうしてもWindows 11への移行が間に合わない場合は、Microsoftが公式に提供する拡張セキュリティ更新プログラム「ESU」(Extended Security Updates)を導入する手もある。ESUを利用することで、2025年10月14日のサポート終了後も最長で3年間、有償でセキュリティ更新プログラムを受け取ることができる。ただし、ESUはあくまで一時的な延命措置として活用するのが望ましい。

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