「バイブコーディング」は企業には難しい自然言語だけで“理想のソフトウェア”は作れるのか?

AIツールを使い、英語や日本語など自然言語の指示内容を基にソースコードを生成するバイブコーディングは開発作業を効率化する手法の一つだが、必ずしもそうとは限らない。バイブコーディングが抱える課題は何か。

2025年10月16日 05時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

 ソフトウェア開発者がAIツールに自然言語で目的を伝えることで、ソースコードを自動生成する「バイブコーディング」は、ソフトウェア開発への参入障壁を下げて、アプリケーションソフトウェアをより簡単に作成できるようにする。しかしバイブコーディングには幾つかの注意点がある。

自然言語はなぜ開発に不向きなのか

 ソフトウェア開発ツールを手掛けるAzul Systemsの副最高技術責任者であるサイモン・リッター氏は、AIツールと自然言語を使ったコーディングの課題をComputer Weeklyで語った。最初の課題は、一般的なプログラミング言語がある入力に対して常に同じ結果を返す決定論的な性質を持つことだ。つまり開発者はコンピュータに何をすべきかを正確に伝える必要がある。開発者が書いたソースコードが、コンピュータのCPUに指示を与える機械語に変換される過程に誤解があってはならない。

 コンピュータがプログラミング言語を正確に機械語に変換するために使用するのが、コンパイラとインタープリタというプログラムだ。コンパイラはプログラミング言語で書かれたソースコードを機械語に翻訳し、それを実行可能にする。インタープリタはソースコードをリアルタイムで変換し実行する。

 自然言語を用いてプログラムが何を達成すべきかを指定する場合、必ずしも出力されたソースコードでコンピュータがうまく動作するとは限らない。リッター氏は、自然言語の曖昧さを示す例として「The chicken is ready to eat.」(鶏は食べる準備ができている)というフレーズを挙げた。同氏は次のように説明する。「このフレーズは何を意味するのか、複数の解釈が可能だ。『生きている鶏が空腹になり食物を食べたがっている』とも、『人がスーパーで買った鶏肉をオーブンに入れて、今食べる準備ができている』とも捉えられる。自然言語は、何かを実行するよう明確に記述する際に、大きな問題を抱えている」

 バイブコーディングは各ツールが利用するAIモデルの処理結果に基づく。そのため特定のプログラミング作業には適しているが、全てのソフトウェア開発の工程に適しているとは限らない。企業ソフトウェアは追加機能やカスタマイズを加えるときに、事業に必要な要件を満たす必要がある。「しかしAIツールが企業で利用するソフトウェアの開発に必要な要件を満たすための特定の情報で訓練されている可能性は低い」とリッター氏は指摘する。AIツールの提供企業がユーザーに独自の要件を満たすことができるAIモデルを提供しない限り、企業ソフトウェアを開発するためにサードパーティーのAIツールを使用することは難しい場合がある。

バイブコーディングを組織で活用するには

 制約はあるものの、リッター氏はバイブコーディングをミッションクリティカルではないソフトウェアのソースコードを作成するための有用な技術と捉えている。簡単な利用ケースとしては、スプレッドシートでの単純な自動化や、データセットを意味のあるレポートに変換するためのマクロの作成などが挙げられる。

 企業のシステム開発におけるAIツールのもう一つの利用ケースは、ソフトウェア統合だ。従来は主にRPA(ロボティックプロセスオートメーション)ツールがこの問題に取り組んでいた。リッター氏は、複数のユーザーがさまざまなアプリケーションを使用する際の行動履歴をAIツールが観察し学習することで、企業アプリケーション統合を推進するための豊富な訓練データを提供できると考えている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...