2025年10月14日、Microsoftが「Windows 10」のサポートを正式に終了した。だが同OSの世界シェアは依然として存在する。移行を迫られる企業は、どのような選択肢を選ぶべきか。
Microsoftは2025年10月14日をもって「Windows 10」のサポートを終了した。一方、Webサイトアクセス解析ツールStatCounterの発表によると、2025年9月時点でWindows 10の世界市場シェアは40.84%だった。
Microsoftは法人向けに、Windows10のサポート終了後も緊急度の高さや重要度が高いと判断されたセキュリティ更新プログラムを一定期間有償で提供するプログラム「Extended Security Updates」を提供する。しかし、これからもWindows 10を継続して使用する企業は、どのような対策を取ればいいのか。
最初に上がる選択肢はもちろんWindows 11への移行である。Microsoftは数年来、ポップアップを通じてWindows 11への移行を促してきた。しかし、速やかに移行できる企業ばかりではない。セキュリティベンダーQualysのエラン・リブネ氏(プロダクトマネジメント部門シニアディレクター)は、移行で生じる問題として、Windows 11のハードウェア要件を挙げる。同氏によると、Windows 11をインストール、実行するためには、標準規格「TPM 2.0」(TPM=Trusted Platform Module)に準拠したセキュリティチップの搭載および有効化がハードウェア要件として必須となっている。一方、多くのWindows 10搭載デバイスはTPMなどの要件を満たさず、Windows 11を実行できない恐れがある。
もう1つの問題は、企業が保有しているデバイスを正確に把握できていないケースだ。リブネ氏は「Windows 10デバイスはクライアントPCだ。しかし、存在を把握していないデバイスが自社環境に潜んでいる場合もある」と説明する。
同氏によると、その多くはPOS(販売時点情報管理)システムやATM(現金自動預け払い機)であるという。「一般的にそのようなシステムは専用のネットワークに接続され、外部ネットワークとは遮断された状態で運用される。特定の機能を果たすためだけに運用されており、OSやソフトウェアのアップグレードに手間が掛かる」(同氏)
さらに、非公開のコード変更や依存関係など、さまざまな要因によって不具合が生じる可能性があるためだ。リブネ氏は「そのために膨大なテストを実施する必要があり、莫大なコストが発生する」と述べている。
取り残されたままのWindows 10デバイスやレガシーアプリケーションは、サイバー攻撃者にとって格好の標的となる恐れがある。サイバー攻撃を防ぐには、サポートが終了したソフトウェアを可能な限り削除し、アップグレードできないデバイスをシステムから分離するといった対策が必要だ。
JK2 Consultingのケビン・ムトゥサミ氏(セールスディレクター)によると、同社はWindows 11への大規模な移行支援を専門としている。2025年までの1年間で、英国の大手金融機関の10万台を超える物理、仮想デバイスおよび3000本のアプリケーションを対象に、Windows 10からWindows 11への移行を完了させた。
ムトゥサミ氏によると、移行プロセスでは、ハードウェアとソフトウェアの全インフラをマッピングし、Windows 11に非対応のアプリケーションを特定した。「当社では、作成したプロセスに従って各部署に通知を送り、移行テストを実施してWindows 11上で動作確認を実施してもらう手順を踏んだ」(同氏)
「移行をスムーズかつ自動化して実施したことで、移行期間を数年から1年に短縮できた」(ムトゥサミ氏)
「一部のデバイスは明らかにスペック不足で、交換が必要だった。しかし、最大の障害はソフトウェアだった」。ムトゥサミ氏は移行プロセスをこう想起している。同氏によると、社内で開発されたレガシーアプリケーションは、一定期間仮想デバイス上に配置され、修正された。
こうした事例は、VDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップインフラ)環境への全面移行が、Windows 11への移行で生じる問題を解決する可能性があることを示唆している。
Nutanixのジェームズ・スターラック氏は、「当社のプラットフォームを利用している顧客のデスクトップ環境は、データセキュリティや規制に適合した環境下で一元管理されている」と述べている。
OSのアップグレードについては、「1つのマスターイメージを更新すれば、全デスクトップに一括適用できる」とし、管理が容易になるという。障害発生時、スナップショットを作成してロールバックできる点も利点だとスターラック氏は指摘する。
Cloud Software Group(旧Citrix Systems)は別の解決策を提供する。同社の広報担当者によると、移行が難しいWindows 10アプリケーションについては、同社のアプリケーション、デスクトップ仮想化サービスを使うことで、安全かつ確実にアクセスを提供できるという。
仮想化環境の導入には課題もある。スターラック氏は、「アプリケーション互換性の検証など、テストと開発のライフサイクル全体を経る必要がある」と指摘する。
さらにWindows 11のリソース要件は仮想環境でも影響する可能性がある。スターラック氏は、「Windows 10で1サーバあたり50台の仮想デスクトップを動かせたとしても、Windows 11では40台程度になる恐れがある」と述べている。
スターラック氏は、オープンソース界隈で長年語られてきた「Linuxデスクトップの時代」がようやく訪れる可能性についても言及している。これについて同氏は、「成功例は見たことがあるが、実際の企業全体で導入するには非常に勇気がいる」と述べている。
ただし、Linuxではプリンタドライバなどの互換性や、「Microsoft Excel」をはじめとする標準アプリケーションの利用可否が問題となる。StatCounterによると、2025年8月時点でクライアントOSとしてのLinuxのシェアは3.92%にとどまり、2024年の4.55%から減少している。
Linux以外の選択肢を示唆する専門家は他にもいる。あるコンサルタントは、「規制要件を厳格に守る必要がある産業に属さず、移行計画が進行していない企業は、しばらくの間現状維持でやり過ごす選択肢もある」と語る。
「セキュリティの更新状況にかかわらず、サードパーティ製のセキュリティツールを活用して安全を保ちつつ、後でアップグレードや別の戦略を検討するという判断もあり得る」(同氏)
同コンサルタントはこう締めくくる。「Windows 10のサポートが終了したら突然PCが動かなくなるわけではない。むしろ、頻繁なセキュリティ更新に煩わされない分、快適かもしれない」。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...