パスワードレス認証が台頭しても、企業でパスワードの使用を完全になくすことはできない。適切なパスワード管理を実現するには、どのような対策を取る必要があるのか説明する。
企業の業務システムにアクセスするには、基本的にIDとパスワードが必要だ。パスワードはセキュリティ対策の一つだが、エンドユーザーやIT部門のパスワード管理に不備があると、不正アクセスの糸口になることがある。
パスフレーズの使用やパスワードマネジャーの利用といったセキュリティ対策を講じることで、攻撃者のシステムへの侵入を防ぐことができる。前編「『パスフレーズ』『パスワードマネジャー』はどう使う? パスワード管理の基本」に続き、パスワードセキュリティを向上させるためのベストプラクティスを説明する。
パスワードを90日ごとに変更する運用方法は、場合によっては有用だ。例えばパスワード認証にシングルサインオン(SSO)と多要素認証(MFA)を組み合わせる場合、変更の頻度は90日が適切になることがある。パスワードレス認証を採用している企業は、年に一度のパスワードまたはパスフレーズの変更で十分だと判断できる可能性がある。機密データを扱うアプリケーションでは、30日または15日が適切な頻度になる場合がある。
最も重要なことは、企業にとって最適なパスワード変更サイクルを決定するために、事業部門と協力することだ。エンドユーザーのパスワードが侵害された可能性がある場合は、変更サイクルに関係なく、全てのエンドユーザーに対して即座にパスワードの変更を要求すべきだ。
IT管理者は業務アプリケーションに対し、MFAを適用すべきだ。攻撃者がエンドユーザーのIDやパスワードを窃取しても、企業がMFAを要求すれば、攻撃者は即座にアカウントにアクセスすることはできない。
モバイルデバイスでワンタイムパスワード(OTP)を受け取り、パスワードマネジャーからOTPを自動入力するという工程でMFAを実施すれば、エンドユーザーは簡単に利用できる。銀行や医療システムなどのオンラインサービス、MicrosoftやGoogleなどのクラウドベンダーは、個人およびビジネスユーザー向けに無料でMFA機能を提供している。
企業のセキュリティ意識向上トレーニングは、パスワード管理の改善に役立つ。以下のパスワード保護のベストプラクティスを、従業員トレーニングに含めることが重要だ。
認証にパスワードを使わず、生体情報やデバイス情報などを利用するパスワードレス認証は、ユーザー体験の改善やセキュリティの向上が見込める。顔認証や指紋認証といった生体認証、位置情報、デバイス固有の情報などの代替認証要素を使用することで、エンドユーザーの1日当たりのパスワード入力回数を減らすことが期待できる。
しかしパスワードは依然としてIDとアクセス管理の重要な要素であり、すぐに消えることはない。それはパスワードレスという言葉が思っているほど単純ではないからだ。パスワードレス認証でも、パスワードをはじめとした認証情報を管理する必要が生じる。パスワードレス認証が失敗した場合、パスワードやパスフレーズがバックアップとして利用可能なためだ。こうした理由から、パスワードレス認証が台頭しても、引き続きパスワードのセキュリティ対策は重要だ。
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