DX推進の現場で、深刻な「副作用」が起きている。便利なツールを導入するほど従業員の「考える力」が奪われている一方、企業はこれに対してなかなか有効な手を打てていない。AI時代に欠かせない人材育成モデルとは。
企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を急務として進める中、現場のスキル不足と経営層の投資判断にギャップが生じている。7割以上の経営者が「DX人材の育成は経営戦略上の重要事項だ」と答える一方で、実際に戦略的に取り組めている企業は2割にも満たない――。これはデジタルマーケティングを手掛けるシナジーマーケティングが、経営者および役員300人を対象として2025年9月に実施した調査で明らかになった事実だ。
調査は、日本企業のいびつな現状を浮き彫りにした。多くの企業が「人への投資」の重要性を理解していながらも、結局は安易な「ツール導入」へ逃げてしまっているのだ。その代償は大きく、セキュリティリスクに匹敵するほど、従業員の「ある能力」の欠如を懸念する声が急増しているという。現場で静かに進行する「思考停止」の実態と、そこから脱却するためのロードマップを解説する。
問題の背景には、投資対効果(ROI)の不明瞭さがある。育成施策の評価指標を設定し、成果を把握できている企業は少数派で、約7割がその効果を可視化できていない。結果として、効果が見えにくい「人」への投資よりも、物理的なツールやシステムの導入といった施策が先行してしまう傾向がある。生成AIの急速な普及に伴い、セキュリティリスク以上に「自分で考える力」といった人的資質の劣化を懸念する声も上がっている。
詳細な調査データからは、DX推進における具体的な「つまずきポイント」と、AI(人工知能)技術が台頭してきた現代に求められるスキルの変化が見えてくる。
まず、DX推進の優先順位を見ると、「新しいツールやシステムの導入」(25.3%)がトップであるのに対し、「既存従業員のリスキリング/アップスキリング」は13.0%と約半分の水準にとどまる。これは、即効性を求めてツールの導入を優先するものの、それを使いこなす人材への投資が追い付いていない現状を裏付けている。
さらに深刻なのが、生成AI活用におけるリスク認識だ。従来の「セキュリティおよびプライバシー侵害の懸念」(40.0%)に加え、「判断力や決断力、想像力の欠如」(34.7%)や「誤情報によるブランド毀損(きそん)」(30.0%)が高い割合で懸念されている。
この状況下で、経営層は現場に対して高度な要求を突きつけている。不足しているスキルとして「AI活用スキル」(44.0%)を挙げる一方で、それと同等以上に「データ分析による課題の発見力、解決力」(48.3%)や「新技術の応用力」(38.3%)といった、本質的なコンセプチュアルスキル(複雑な物事の本質を見極める能力)を求めているのだ。
このジレンマを解消するために、シナジーマーケティングは「知る、分かる」から「成果を出す」までを包含した4段階の育成モデルを提唱する。今後は、単なる業務効率化ではなく、DXに加え、人と技術を掛け合わせて競争力を生み出す「AX」(AIトランスフォーメーション)が加速する。組織横断的なナレッジ共有や評価制度の連動を含め、現場の「考える力」を育む包括的な人材戦略が企業の存続を左右するだろう。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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