中東情勢の緊迫化は、単なる地政学リスクに留まらない。AI半導体の製造に不可欠な「ヘリウム」供給、そして厳格なデータ所在規制が、日本のIT戦略を揺さぶる恐れがある。
中東は過去3年間、人工知能(AI)インフラの急成長を遂げる地域として台頭してきた。アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなど各国の政府は経済の多様化を目指し、「AIハブ」を形成するための大規模なデータセンター建設や高性能コンピューティングのインフラ構築に注力している。
しかし、2026年2月末から米国とイスラエルがイランを攻撃して中東情勢が悪化していることが、この野心に不確実性をもたらしている。日本企業の情報システム(情シス)部門担当者も気になる、中東のAIハブはどうなるのか。
UAEやサウジアラビアの国家AI戦略をエンジンとして、中東地域のデータセンター容量は今後5年間で3倍以上に増加する可能性があると業界専門家はみている。金融サービスを手掛けるBTA Finance Limitedのテクノロジーおよびデジタルトランスフォーメーションエグゼクティブ、オスカー・モンリオデラヘラン氏によると、AIシステムは電力網や金融決済システムと同様に、情勢が不安定化した際にも運用を維持しなければならない重要な国家インフラとして位置付けられている。
中東各国のAIシステムは、高度に相互接続されたデータセンターやクラウドリージョンに依存している。これらのアーキテクチャは回復力を持つように設計されており、分散処理によって複数のデータセンターやクラウドリージョン間でワークロードを移動させることができる。そのため、「AIインフラは技術面において情勢悪化の影響を受けにくい」とモンリオデラヘラン氏はみている。
モンリオデラヘラン氏によると、技術より大きな問題は「規制」だ。例えば、金融機関に対しては厳格なデータローカライゼーション要件があり、金融機関は機密情報を特定の管轄区域内に置く必要がある。危機が発生したとき、他のクラウドリージョンへの切り替えによって、この要件が満たされなくなる恐れがあるという。
中東情勢の悪化は、AI利用におけるもう一つの重要な課題を浮き彫りにしている。AI処理に欠かせない半導体の不足だ。AIシステムは高度なチップやメモリの安定した供給に依存している。特に懸念されているのは、半導体製造の重要な要素であるヘリウムの供給だ。世界のヘリウムの約3割がカタールから供給され、中東はグローバルな半導体サプライチェーンの戦略的な拠点となっている。中東におけるヘリウム生産の混乱は、半導体製造に影響を与えるボトルネックになる可能性がある。
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