「あれだけ言ったのに全然やってない」――。反応の鈍い部下にイラつく上長は、そんな部下をどうしていけばいいのか。あるリーダーシップの専門家は、他者の責任感の醸成を仕組み化するための施策を3つ提案する。
おでかけの出発時間5分前。リーダーシップの専門家マイケル・ティムズ氏の娘3人は、声を掛け続ける父親をよそに1人は読書、2人目はピアノを弾き続けた。3人目は、靴下を履きなさいという指示を無視。その結果、いつものように遅刻してしまった――。
このような出来事は子育て家庭だけに起こることではない。「自分は適切に指示していたのに、受け取る側のせいで問題が起きた」。このメッセージは、マネジメント層や情報システム部門(情シス)の従業員にとっても既視感があるはずだ。「依頼した対応が進まない」「運用ルールが守られない」「トラブルの再発が止まらない」――こうした場面で、多くの人は「担当者の意識が低い」と結論を付けがちだ。
一方ティムズ氏は子育ての経験から、他者に「問題の責任を取らせる」のではなく、「問題の責任を取ってもいいと思う状態」を設計することが鍵だと考えた。そこで同氏が提案するのが、責任を引き出すための「3つの習慣」だ。
最初の習慣は「責任を追及しない」ことだ。問題が起きたとき、多くの組織は「誰のミスか」を特定しようとする。しかし、この行為は逆効果だ。責任を追及する文化でミスを報告すればどうなるか、想像に難くない。従業員はミスを報告しなくなり、問題は表面化しない。結果として、企業はミスから学びを得る機会を失う。
ティムズ氏によると、医療現場を調査した研究(注)からは、ミスを責めないチームほど、報告されるエラーの数が多かったことが分かった。これは「ミスの数が多い」のではなく、「ミスを隠さない」からだ。ミスの責任を問わない文化を作ることができれば、従業員は安心してミスを報告するようになり、結果として組織の問題解決力は高まる。「責めることはチームワーク、学習、イニシアチブを破壊し、責任感を殺す」とティムズ氏は述べる。
※注1:Amy Edmondson編著「Learning from Mistakes is Easier Said Than Done: Group and Organizational Influences on the Detection and Correction of Human Error」
2つ目は「自分の関わり方を疑う」ことだ。他人のミスは見つけやすい。しかし、問題の原因を他人に求める前に、「自分の設計や指示に問題はなかったか」検証する。
例えば、「指示が曖昧だった」「前提条件を共有できていなかった」「時間や情報が不足していた」――。「問題の中で自分が変えられる要素」を見つけ、行動に反映させる。リーダーが率先して自分の責任を認めれば、従業員も安心して反省し始める。
重要なのは、「全てを自分の責任にする」ことではない。自分が影響を与えた部分を特定することで、「改善可能な領域」を見つけることだ。
3つ目は「仕組みを設計する」ことだ。ティムズ氏によると、人の行動は、意志よりも環境に影響される。そこで、「なぜミスが起きたか」を人の意志ではなくプロセスで捉える必要がある。
典型的な例として、1940年代に多発した航空機事故の分析がある。かつては「パイロットのミス」とされていた事故の多くは、実際にはコックピットの設計に関連する問題だったという。操作レバーの配置や形状が似ていたため、誤操作が発生していたのだ。設計を変えたことで、事故は減少したという。
3つの習慣を順序立てて進めていくことで、他者の責任感を「魔法のように」引き出すことができるとティムズ氏は説明する。このアクションは情シスの現場にも活用可能だ。「人はミスする」という考えを前提に、仕組みやルールを整備する。
これらを整備することで、「従業員に指示しなくても動く状態」を作ることができる。
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