紙の文書は“改ざんリスク”の温床か 大分県が処分通知をデジタル化した方法膨大な紙と手作業からの脱却

法令に基づく重要な行政文書のデジタル化において、なりすましや改ざんといったセキュリティリスクは障壁になる。大分県は処分通知のデジタル化に当たり、厳しい要件をいかにクリアしたのか。

2026年04月13日 05時00分 公開
[TechTargetジャパン]

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 行政機関から県民や事業者に交付される処分通知。法令に基づく重要な通知文書であるため、紙の文書に物理的な公印を押印して発行するのが一般的だ。しかしこの方法は、印刷や封入、郵送といった手作業に多大な時間がかかる。郵送によるタイムラグが発生し、県民が通知を受け取るまでに日数を要することも、迅速な行政サービスの提供において解消すべき課題だ。

 こうした課題を根本から解決するため、大分県は行政の処分通知などをデジタル化する新たな仕組みを導入した。GMOグローバルサイン・ホールディングスが提供する「GMOサイン電子公印」を採用し、2026年4月に本格運用を開始する。

 同システムの導入によって、大分県は処分通知を電子署名が付与された電子文書として発行できるようになる。従来の紙を用いた業務プロセスが刷新されることで、庁内の業務効率化や大幅な費用削減が実現し、県民はより早く通知を受け取ることが可能になる。

 厳格な法規制やセキュリティ要件が求められる行政文書のデジタル化を、大分県はどのようにして成し遂げたのか。

大分県が評価した“機能以外の決定打”とは

 大分県は、県が掲げる「大分県DX推進戦略」(DX:デジタルトランスフォーメーション)に基づき、スマートフォンなどのデバイスを活用して時間や場所を問わずに手続きが完了する、県民本位の行政サービスの提供を推進してきた。2022年9月には自治体向け電子契約システムを先行して導入し、行政手続きのデジタル化に向けた土台作りを進めている。2023年にデジタル庁が公表した「処分通知等のデジタル化に係る基本的な考え方」のガイドラインを受け、大分県は行政サービス改革を加速させるために、電子署名を活用した処分通知のデジタル化に踏み切った。

 処分通知のデジタル化における最大の障壁は、なりすましや文書の改ざんといったセキュリティリスクを未然に防ぐことだ。大分県が今回導入したGMOサイン電子公印は、首長の職責を明確に記載した当事者型電子署名に適合している。これによって、従来の物理的な公印と同等以上の高い証拠力と信頼性を、電子文書に対しても付与できる。

 GMOサイン電子公印は日本政府がクラウドサービスに求める厳格なセキュリティ評価制度「ISMAP」の認証を取得している他、「SOC2 Type II」や「ISO 27001」などの国際的な第三者認証も得ている。総合行政ネットワーク「LGWAN」を通じてソフトウェアを利用できるサービス(LGWAN-ASP)としても登録されており、自治体が閉域網で利用する既存の基幹システムと安全にデータを連携できる。高い安全性を確保しながら、処分通知の承認、署名から交付、管理に至る一連のプロセスをシームレスにデジタル化する仕組みが構築されている。

 大分県がGMOサイン電子公印を選定した理由は、こうした機能面やセキュリティ面だけではない。システムの導入から運用定着までを専任担当者が伴走するサポート体制が評価された。県職員向けの操作マニュアルの作成支援や、電子公印の導入に伴って必要となる例規の改正支援など、自治体特有の煩雑な業務プロセスに踏み込んだ支援が決定打となった。

 今回のデジタル化は、印刷や郵送の手間を省くといった目先の業務効率化にとどまらず、県庁内のガバナンス強化にも直結する。電子署名の利用権限をシステムで厳格に管理することで、物理的な印鑑で起こり得る不正利用のリスクを低減できるからだ。

 大分県は今回の処分通知のデジタル化を足掛かりに、県民サービスのさらなる向上と行政手続きの完全オンライン化を目指す構えだ。強固なセキュリティと利便性を両立させた同県の取り組みは、紙ベースの煩雑な業務からの脱却を図る全国の自治体にとって、行政DXを推進する上での先行事例になるだろう。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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