労働人口の減少を見据え、JA共済連はGoogle Cloudの生成AIツールを用いて地域貢献活動の支出判断を支援するAIエージェントを構築した。年間数百件に及ぶ照会対応の業務負荷を最大50%削減できる見込みだ。
労働人口の減少が見込まれる中、限られた人員でいかに業務の質を維持、向上させるかは、組織にとって喫緊の課題だ。全国共済農業協同組合連合会(以下、JA共済連)は、日本の労働人口が最大1200万人減少すると予測される「2040年問題」を見据え、業務効率化の手段として生成AI(AI:人工知能)ツールの活用に踏み切った。
JA共済連が最初の適用領域として着目したのは、各県域での地域貢献活動にかかる基金の支出可否判断業務だ。健康増進や防災、交通事故対策といった多岐にわたる地域貢献活動は、一般的な共済事業とは異なり明確な約款が存在しない。そのため、ガイドラインと過去の事例を照らし合わせながら個別かつ総合的に検討する必要があり、判断に時間を要するという課題を抱えていた。
ガイドラインの解釈が担当者によって異なり、判断基準にばらつきが生じるリスクもあった。この問題を未然に防ぐため、JA共済連は年間200〜300件に上る文書での照会や、連日のように寄せられる電話での問い合わせに対し、部署内で認識をすり合わせた上で回答をしてきたが、その作業自体が大きな負担となっていた。
そこでJA共済連は、システム開発のパートナーである富士通の支援の下、Googleの生成AIツール「Gemini Enterprise」を用いたAIエージェントを構築した。このAIエージェントを導入したことで、照会応答にかかる業務負荷を20〜50%削減できる見込みだという。
専門的な知見が求められ、属人化しやすい照会対応業務を、いかにして実用レベルのAIエージェントに落とし込んだのか。そこには、短期間での開発を成功に導いたツール選定と、AIエージェントの回答精度を高めるための独自の工夫があった。
開発期間の短縮と精度の向上を両立させる上で、自由度が高く拡張性のあるAIエージェント開発ツールを選択したことが大きな鍵となった。富士通はアジャイル開発を採用し、業務フローのヒアリングからわずか1〜2週間でAIエージェントのプロトタイプを完成させた。
開発には、ツールの機能群を連携させる開発キットを用いた。高性能なAIモデルに加え、開発キットやUI(ユーザーインタフェース)などが一通りそろっており、それらを容易に連携できる開発環境が、スムーズな開発を後押しした。
回答の精度を高めるため、AIエージェントにはガイドラインの他、過去3年分、約600件の照会票(照会内容と回答の記録)データをナレッジとして学習させた。これによって、AIエージェントに新たな照会内容を入力すると、ナレッジを参照して適切な回答を出力する仕組みが構築された。
特筆すべきは、AIの回答精度を実用レベルに引き上げるために施された、独自のチューニングだ。
工夫の1点目は、人間の思考プロセスの再現だ。照会内容によって検討すべき争点が異なる点に着目し、単に回答を生成させるのではなく、まずAIに照会内容から「争点」を洗い出させる手順を組み込んだ。これによって、担当者の論理的な思考プロセスに近い、的確な回答を生成できるようになった。
工夫の2点目は、個別ケースにおける文脈の維持だ。過去の事例をナレッジとして追加する際、単一のデータベースとして扱うと、AIモデルがキーワードに合致した複数の事例から都合の良い部分だけを抽出し、文脈の通らない不自然な回答を生成する恐れがあった。そこで、照会票データを1件ずつ独立したファイルとして読み込ませることで、個別のケースが持つ文脈を維持したまま、的確な回答を引き出せるように改善した。
照会内容だけでは判断が難しい場合に、AIエージェントから「この情報が足りていないので教えてほしい」と追加情報の入力を促す機能も実装した。これらの改善によって実用性が大きく高まり、プロトタイプ完成からトータル約1.5カ月という短期間で、実務に耐え得る精度に仕上げることに成功した。
完成したAIエージェントは、単に承認か否決かを判定するにとどまらない。過去の事例を踏まえた上で、「ガイドラインのこの箇所に合致する」「理由はこれだ」というように、判断の根拠を明確に提示する。チャット形式で対話できるため、利用者が新たな操作方法を学習する必要がなく、導入のハードルが低いことも大きな利点だ。
JA共済連は今後、開発したAIエージェントを各県本部へ展開する計画だ。現場の職員が直接AIエージェントを利用できるようになれば、判断に迷う時間を大幅に削減し、回答の均質化、平準化を図ることができる。AIエージェントの活用によって削減できた時間を、地域貢献活動の企画や分析など、より付加価値の高い業務に充てる方針だ。
活用領域の拡大も視野に入れている。問い合わせ対応に限らず、営業推進や査定、支払い業務など、事業のバリューチェーン全体への適用を検討している。現場の担当者自身がシステムを操作してAIエージェントを作成し、チューニングを実施する取り組みや、地域貢献活動参加者のニーズ分析への応用なども進める構えだ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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