われら”普通の会社員”は生き残れるのか AI起業家が示す「価値を高める4大スキル」「私はこういう人間です」を発信できていますか?

AI時代と言われる中、「AIに置き換えられる人」にならないためには何をすればいいのか。英国の起業家ダニエル・プリーストリー氏が、「AI時代に自分の価値を高める4つのスキル」を紹介する。

2026年04月28日 05時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 AI(人工知能)の普及によって、「生き残る仕事」「淘汰される仕事」は変わり始めている。英国の起業家でベストセラー作家、複数のAI関連企業を手掛けるダニエル・プリーストリー氏は、「今後5年間で、AIが賃金の価格破壊を起こす可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 同氏によれば、AI時代に起きている変化は、単なる業務効率化ではない。農業中心社会から工業化社会へ移行した時代のように、「働き方そのもの」が切り替わる転換点だという。過去には、人々は農村から都市へ移動し、新しい産業構造に適応した。現在はそれに近い変化が起きていると同氏は説明する。

 では、”AI時代”という転換点を生き抜くためにはどのようなスキルを持てばいいのか。本稿は、プリーストリー氏が説く「AI時代に自分の価値を高めるための4つのスキル」を紹介する。

AI時代に必要な4つのスキルとは?

 プリーストリー氏によると、これまでの経済は「土地」「労働」「資本」という優位性で成立してきた。さらに、学校教育は、工場やオフィスで決められた作業を実行する人材を育てるための装置として運用されてきた。しかしその装置の基に育てられた人材は、AIや低コスト労働との競争にさらされている。例えば法律や会計のような専門職であっても、AIが一定水準の業務をこなせるようになり始めているという。

 一方、これから価値が高まる人材が持つべき力としてプリーストリー氏は、「機能を実行する力」ではなく、「機会を見つけ、人を集め、価値を形にする力」を挙げる。同氏はこれを「enterprise mode」と表現する。ここでいうenterpriseとは、企業を立ち上げることではない。同氏によれば、これから重要になるのは以下の力だ。

1.体験を形作る力

 AIが大量のコンテンツやコードを作れるようになるほど、「誰にどのような体験を提供するのか」を設計できる人材の価値が高まる。

2.コミュニティーを築く力

 フォロワーをただ獲得するのではなく、人々を集め、継続的な関係を作れる力。

3.文化を築く力

 プリーストリー氏によると、変化が激しい時代ほど、チーム内に高速で試行錯誤できる文化を作れるかどうかが差になるという。

4.チームの方向性を合わせる力

 AI時代には個々の専門スキルだけでなく、多様な人材をまとめ、共通目標へ向かわせる能力が価値を持つという。

「AIに置き換えられる人」と「AIでブーストできる人」

 プリーストリー氏は、自身の企業でもAI導入を進めている。例えば出版支援事業では、著者へのヒアリングや構成設計のノウハウをAIに学習させ、書籍執筆を支援するプラットフォーム「bookmagic.ai」を開発した。マーケティング支援事業では、診断テストやスコアリング施策を自動生成するAIサービス「ScoreApp」を立ち上げた。以前は数万ドルかかっていた診断ツール制作をAIによって大幅に低コスト化した。同サービスは、8500社の顧客を抱えているという。

 こうした変化によって、一部の仕事は確かに不要になる。同氏も、「繰り返し型で、退屈で、機能的な仕事は置き換えられる」と認める。

 ただしプリーストリー氏は、「全ての人が不要になるわけではない」とも語る。AIによって単純作業を減らし、人間側はより高付加価値な業務に移るという考え方だ。実際、同氏の企業ではAI導入後も、人材はより上位の業務へ移行しているという。

 その一方で、「より高いレベルへ移行したくない人」にとっては厳しい時代になるとも指摘する。「上のゲームに行きたくないなら、別の道を探さなければならない」と同氏は語る。

「個人ブランド」が資産になる時代

 プリーストリー氏が特に重要視しているのが、「個人ブランド」だ。

 AIによってコンテンツ生成が加速すると、情報量は爆発的に増える。その中で、人々は「誰が発信しているか」をより重視するようになるという。同氏は、「今後は個人ブランドがさらに重要になる」と予測する。

 特に重要なのは、数万人規模でなくても、「自分を知っている人」を持つことだ。同氏は、「2000〜2万人程度でも、自分を理解しているフォロワーがいることは大きな資産になる」と語る。

 これはSNSで人気があるかどうかの話ではない。講演依頼、書籍出版、コミュニティー形成、新規事業立ち上げなど、多くの機会につながる「信用基盤」になるという考え方だ。

「会社員前提」のキャリアは変わるのか

 プリーストリー氏は、今後の社会では「平均的な賃金労働」が弱体化する可能性があると予測する。AIによって企業が必要とする人員数が減り、従来型の雇用構造が変化するためだ。

 その結果、価値を持つのは、「自ら価値を作れる人」になるという。例えば、コミュニティーを持つ人、知識を発信できる人、デジタルサービスを作れる人などだ。同氏は、こうした「デジタル資産」を持つことが重要になると語る。

 AI時代は、単に「AIを使える人」が生き残る時代ではないのかもしれない。むしろ、「何を作るか」「誰を集めるか」「どんな価値を定義するか」を考えられる人が、より重要になる可能性がある。

本稿は、2025年10月18日に公開された「$10M CEO: How to Get Ahead while Others Get Replaced」を記事化したものです。

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