Apple端末管理が無料化 「Apple Business」で専用MDMは不要になるかの役割分担が重要に

Appleは、企業向けデバイス管理基盤「Apple Business」を発表した。同サービスがあればサードパーティーのMDMツールを使わずにデバイス管理ができるという声もあるが、各サービスの機能や役割にはさまざまな違いがある。

2026年05月02日 05時00分 公開
[Sean Michael KernerTechTarget]

 Appleは2026年4月、企業向けデバイス管理サービス「Apple Business」の提供を開始した。Apple Businessは、Apple製デバイスの調達や登録を自動化する基盤「Apple Business Manager」(ABM)、MDM(モバイルデバイス管理)機能を提供していた「Apple Business Essentials」、店舗・ブランド管理向けの「Apple Business Connect」を統合・置換する新プラットフォームだ。

 一方で、企業の情報システム部門(情シス)の間では、「Apple Businessの標準MDM機能だけで十分なのか」「Jamf ProやMicrosoft Intuneのようなフル機能MDMを使わなくても運用できるのではないか」という見方もある。だが実際には、ABM、Apple Businessに含まれる標準的なMDM機能、そしてJamf ProやIntuneのようなエンタープライズ向けMDMは、それぞれ担う役割や強みが異なる。

“Apple Businessだけで十分”論を整理する

 まずABMは、Apple製デバイスの調達や登録を自動化するための基盤だ。企業がApple認定販売チャネルを通じて購入したiPhoneやMacは、自動的にABMへ登録される。これはAppleが「自動デバイス登録」(ADE)と呼ぶ仕組みで、過去には「デバイス登録プログラム」(DEP)という名称だった。ADEによって、企業所有デバイスのゼロタッチ導入や「監視モード」の有効化が可能になる。

 ただし、ABM単体では、企業が求める統制やセキュリティ管理は実現できない。リモートワイプ、パスコード強制、VPNや無線LAN設定の配布、OS更新の制御、コンプライアンス違反端末の検知といった機能は、MDM側が担う。つまり、ABMはデバイスを「管理対象に登録する」ための仕組みであり、「どう統制するか」までは担わない。

 では、Apple Businessに統合された標準MDM機能だけで十分なのか。ここが、Jamf ProやMicrosoft Intuneとの比較で重要になる。

 Apple Business Essentialsは、中小規模組織向けの基本的なMDM機能を提供していた。例えば、デバイス設定の配布、アプリケーション管理、基本的なセキュリティポリシー適用などは可能だ。Apple製デバイス中心の小規模環境であれば、一定の運用要件を満たせるケースもある。

 だが、大企業や厳格なガバナンスが求められる環境では、標準MDM機能だけでは不足する場面が出てくる。例えば、Microsoft Intuneは、Microsoft Entra IDと連携し、条件付きアクセスによって「準拠していない端末からは業務システムへ接続させない」といったゼロトラスト制御を実現できる。

 一方、Jamf Proは、Apple製デバイス管理に特化した高度な運用機能を提供する。ポリシー違反を自動検知して修復するワークフローや、細かなmacOS設定制御、自動パッチ管理などを利用できる。大規模なMac運用や高度なセキュリティ統制を求める企業では、こうした機能が重要になる。

 この違いは、単なる機能比較では終わらない。「誰が責任を持つのか」という問題に直結する。

 例えば、社員が端末を紛失した場合を考えたい。単純な端末管理だけならできても、「どの条件なら自動的にアクセスを遮断するのか」「ポリシー違反をどう継続監視するのか」「監査時に順守状況をどう証明するのか」といった要件まで考えると、エンタープライズ向けMDMが必要になるケースは多い。

 特に、情報セキュリティ監査「SOC2」や「医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令」(HIPAA)のような規制対応では、「端末が暗号化されているか」「セキュリティポリシーを順守しているか」を継続的に確認しなければならない。標準MDM機能だけでは、こうした継続監視や高度な条件付き制御が不十分な場合がある。

 実際、AppleもABMを「MDMの代替」とは位置付けていない。ABMのスタートアップガイドでは、既存のMDMソリューションと連携する前提で説明されている。

 つまり、企業のAppleデバイス管理は、「ABMだけで十分か」という話ではなく、「Apple Businessの標準MDM機能で足りるのか、それともJamf ProやIntuneのような高度なMDMが必要なのか」を見極める段階に入っている。

 小規模環境ではApple Businessの標準機能で十分な場合もある。一方で、大規模運用、ゼロトラスト、監査対応、高度な自動化を求める企業では、Jamf ProやIntuneのようなフル機能MDMが必要になる可能性が高い。

 ABMは“登録基盤”、Apple Businessの標準MDMは“基本管理”、Jamf ProやIntuneは“高度な統制と継続監視”を担う。企業は、自社のガバナンス要件や運用規模に応じて、どこまでの統制が必要なのかを見極める必要がある。

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