世界のデータセンター容量は5カ国に69%集中、電力消費「5%の壁」が招くものとは?日本のDC容量は1.7GW

データセンターの電力消費が国内総発電量の5%を超えると、住民の反対や政府の規制が急増する。IDCAの最新報告書は、米国やドイツがこの「境界線」を超え、開発遅延に直面している実態を浮き彫りにした。日本は依然として開発の余地を残すが、世界で1億人が不足するIT人材の確保がデジタル経済の成否を分ける。

2026年05月15日 05時00分 公開
[Antony AdsheadComputer Weekly]

 国際データセンターオーソリティー(IDCA)が発表した「データセンターレポート2026」によると、世界のデータセンター容量は67.7GWに達した。日本を含む5カ国で全体の69%を占めており、米国だけで43%に及んでいる。

 この調査は、国際エネルギー機関(IEA)、世界銀行、国際連合、国際電気通信連合(ITU)などのデータに加え、各国政府やデータセンター開発・運営事業者の情報を基にしたものだ。

 同レポートでは、データセンターの電力消費が電力網全体の5%を超えると、住民の反対が大幅に高まるという「しきい値」の存在が明らかになった。この段階に達すると、政府は優遇措置から規制へと方針を転換する傾向がある。

 データセンター業界は巨大な成長を遂げている。しかし、国や地域がその利益を最適に享受できるかどうかは、リソースの賢明な利用と、労働人口の2.5%がITスキルの保有者であるかどうかにかかっている。

 世界で最もデータセンター容量が多いのは米国で、全体の67.7GWのうち29.2GWを占める。米国のデータセンターは国内電力供給の6%を消費している。米国に続くのは、中国(8.5GW、電力消費の0.8%)、ドイツ(5.5GW、同9.5%)、英国(2GW、同5.8%)、日本(1.7GW、同1.5%)だ。これら5カ国で世界の総容量の69%を占める。

 一方で米国では、データセンターの消費電力のうち約13%(約3GW)が、稼働中でありながら実際には使用されていない「未使用容量」であるとIDCAは推計している。

 中国は「眠れる巨人」として浮上した。中国は米国の約2倍の電力を生産しているにもかかわらず、データセンターに充てられている電力は全体の1%未満にすぎないからだ。

国際的な格差と規制の境界線

 同レポートでは、電力網の使用量の5%がデータセンターに費やされることが、住民の懸念や政府規制、電力供給の制約が増大する境界線になると結論付けた。実際に米国の中西部やテキサス州、カリフォルニア州では、地域住民の反対や接続の困難が生じており、新施設の電力確保に数年の遅れが出ている。

 欧州では、オランダ、ドイツ、スイスの消費レベルが9%を超えており、シンガポールも同様の状況にある。

 また、フランス、スロバキア、スロベニアのように原子力発電が主力の電力網を持つ国は、こうした制約を緩和できる可能性があるという。

 反対に、70カ国以上ではデータセンターへの電力配分が0.1%未満にとどまっている。そのうち30カ国以上では0.01%未満という極めて低い数値だった。

データセンターの電力消費ランキング

 総発電量に対するデータセンターの電力使用比率が最も高いのはシンガポールで、19.5%に達した。次いでリトアニア(11.1%)、オランダ(9.7%)、デンマーク(8.4%)、アイルランド(8.2%)、エストニア(6.9%)、ルクセンブルク(6.3%)、ドイツ(6.1%)、香港(6.0%)、米国(6.0%)と続く。日本は1.2%、中国とインドはともに0.8%だった。

 IDCAは各国の理想的な消費レベルを示す「最適化国家モデル」を構築した。新しいデータセンターの建設には、強力な電力網と強固な光ファイバーネットワークが必要だと指摘している。

※編集部注:原典のIDCAレポート内では、日本のデータセンター電力消費割合について、本文テキストでは「1.5%」、グラフでは「1.2%」と2つの数値が混在して記載されていますが、本記事では原文のまま掲載しています。

 先進国で、国内電力消費の6.25%がデータセンター成長の実質的な上限になるとIDCAは分析している。この数値を超えると、政治的介入や住民の反対と電力消費の相関が非常に強まり、プロジェクトの中止や遅延が相次ぐようになるからだ。

 また、IDCAは新たな発電設備を大幅に増設することなくデータセンターを建設できる「余力(ヘッドルーム)」をGW単位でランク付けした。トップは中国の58.9GWで、インド(12.7GW)、ロシア(6.7GW)、日本(5.5GW)、ブラジル(4.5GW)が続いている。

水ストレスと冷却技術の課題

 現代のAI向けデータセンターは液冷方式を必要とする。水の使用についての懸念から反対運動が起きることもあるが、IDCAはその多くが誤解に基づいていると指摘する。最新のダイレクト・トゥ・チップ(チップ直接冷却)方式は、車のラジエーターのように水を再利用する密閉系システムだからだ。

 ただし、レポートは次のような警告も発している。「既存のクラウド施設や企業内施設の大部分は、水冷式チラーや蒸発冷却塔のような旧式で効率の悪い冷却方式に依存している。これらは蒸発させて熱を取り除くため、失われた水が回収されることはない」。

 IDCAは各国をゼロから100の「水ストレス」尺度で評価した。砂漠地帯を持つ国は当然ながら数値が高く、山岳地帯や河川の多い国は低い。最もリスクが高いのはバーレーン(100)、ベリーズ(86)、リビア(80)などだ。逆にリスクが極めて低いのはノルウェー(0)、ニュージーランド(0)、アイスランド(1)だった。

人口当たりのサーバ数とIT人材の不足

 人口当たりのサーバ密度については、最も高い国と低い国で10万倍もの開きがある。また、世界には推定130万〜150万キロの海底ケーブルが存在し、約550のシステムと1200の陸揚局で構成されている。

 陸揚局の数は米国に約70カ所、英国に約50カ所あり、フィリピン、インドネシア、日本、スペイン、デンマーク、スウェーデン、一部の中東諸国などには12カ所以上存在する。一方、主要ネットワークの陸上ケーブルは約1400万キロが敷設されている。

 IT職種が人口に占める割合は、世界全体で0.1%から4%の間だった。IDCAは、デジタル経済の構築と管理を成功させるには、労働人口の2.5%がIT分野に従事することが最適だと分析している。

 全体として、世界中でIT関連の仕事が1億人分不足しており、その80%を開発途上国が占めている。人材不足が最も深刻なのはインド(2880万人の不足)で、中国(1750万人)、パキスタン(580万人)、ナイジェリア(580万人)が続く。

ガンマ、シグマ、そしてゴルディロックス

 レポートは、データセンターのセキュリティ、標準規格、設計、投資などの分野も網羅している。さらに「ガンマ(Gamma)」「シグマ(Sigma)」「ゴルディロックス(Goldilocks)」という3つの指標で各国を評価した。

 デジタル対応力の技術的・社会的要因を評価するガンマ指数では、フィンランド(85)がトップだった。次いでオランダ(83)、エストニア(80)と続く。英国は74で14位だった。

 シグマ指数は、ガンマ指数に水資源や電力網の余力(ヘッドルーム)などの負荷状況を加味したものだ。トップはフィンランド(99)で、スウェーデン(97)、ノルウェー(97)、ニュージーランド(94)が続いた。英国は84で15位となった。「シグマ指数は、急激なデータセンター成長とデジタルインフラへの適性を判断するのに役立つ」とレポートは述べている。

 最後に、レポートでは「ゴルディロックス指数」が示されている。これは、技術的要因を他の要因から切り離し、生活費や所得と比較することで、急速な発展が混乱をもたらすことなく「ちょうど良い」状態になる国を示そうとするものだ。ゴルディロックス指数のトップはコロンビアで5.2ポイント、続いて北マケドニア、中国、南アフリカ、モンテネグロが並び、最後のモンテネグロを除く全ての国が5.2ポイント(モンテネグロは5.1ポイント)だった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

瞬時にM365が乗っ取られる――全社員に周知すべき“新フィッシング”の教訓

瞬時にM365が乗っ取られる――全社員に周知すべき“新フィッシング”の教訓
MFA(多要素認証)を入れたから安心という常識が崩れ去っている。フィッシング集団「Tycoon2FA」が摘発されたが、脅威が完全になくなったというわけではない。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...