Dataikuの最新調査で、AIを使いながらも自律的な動作を拒み、世界で最も「意思決定を見送る」日本企業の特異な実態が浮き彫りになった。
「システムは納品した。それなのに、経営層は最後の一歩を踏み出さない――」。現場がAI活用を推し進めても、意思決定の段になると人間による精査という名の「足踏み」が続く。こうした情シスの徒労感を裏付けるような、日本企業の特異な実態が明らかになった。
AIと機械学習のプラットフォームを提供する米Dataikuが発表した最新調査は、世界と日本のCEOの間にある決定的な温度差を浮き彫りにしている。AIを積極的に「使う」一方で、決して「託さない」日本のトップが抱える不信感の正体とは何か。本稿では、世界平均を大きく下回る実行力の死角と、日本独自の「慎重すぎる前進」の裏側にある実務的なリスクを解説する。
Dataikuの調査「2026 global CEO AI confessions」によると、日本のCEOはAI導入そのものには前向きなものの、その戦略が実効性を持っているかについては強い疑念を抱いている。
自社のAI戦略を具体化した実行計画が計画通りに機能し、現場の実態と合っていると回答した日本のCEOは60%にとどまった。これは世界平均の81%を21ポイントも下回る数値だ。さらに「戦略に自信がない」と明言した割合は14%に達し、世界平均の3%を大きく引き離して調査対象地域で最も高い結果となった。日本の情シスが描くロードマップに、経営層が「本当にこれで動けるのか」と懐疑的な目を向けている構図が透けて見える。
AIへの権限委譲についても、日本は世界で最も保守的だ。重要な業務上の意思決定について「AIが自律的に行うことは決してない」と答えた日本のCEOは23%で、世界平均の17%を上回った。一方で「事後監視のもとで自律的に動くことが多い」としたのは12%(世界平均は19%)にとどまっている。
Dataikuはこの状況を、日本における「human-in-the-loop(人間が判断のループに介在する)方式への根強い選好」と分析する。AIによる自動化を、あくまで人間の判断を補佐する範囲に留め置きたいという経営層の意志が、組織のスピードを削ぐ要因となっている可能性がある。
投資判断の基準も日本は独特だ。日本のCEOの74%が「過小投資よりも過剰投資」を懸念している。これは世界平均の65%を上回り、英国の77%に次ぐ高さだ。AIによる破壊的な変化を恐れて投資を急ぐよりも、無駄なコストを支払うことへの忌避感が勝っている。
また、構造的なリスクとして「少数のAIベンダーへの依存に過度にさらされている」と回答した日本のCEOは85%にのぼった。これは世界平均の76%を上回る。慎重に導入を進めているにもかかわらず、特定プラットフォームへのロックインという将来的なガバナンス課題には多くのCEOが強い危機感を抱いている。
最も注目すべきは、AIの活用頻度とアクションの乖離だ。日本のCEOが意思決定を行う際、AIが強く影響した件数は年間平均で約20件にのぼり、世界平均の14件を大きく上回った。ところが、AIが情報を提示したにもかかわらず、最終的に「行動に移さなかった」意思決定の件数も、日本では年間約20件(世界平均は約15件)で世界最多を記録した。
このデータは、日本のCEOがAIを熱心に参照しながらも、最後は「見送り」という判断を下す回数が他国より圧倒的に多いことを示している。AIの出力は精査の対象にはなるが、そのまま行動を動かすトリガーにはなりにくい。
Dataikuの委託でThe Harris Pollが2026年2月2日〜3月2日に実施。米、英、仏、独、UAE、日本、韓国、シンガポールの8カ国、計900人のCEO(年間売上高5億ドル以上の大企業)が対象。日本の回答者は100人。
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