ギブリーは2026年7月3日、ニトリと進める生成AI活用型のコンタクトセンター改革で、約30人分の業務工数を削減したと発表した。
ニトリは、生成AIを活用したコンタクトセンター改革により、約30人分の業務工数を削減した。削減によって生まれたリソースを遠隔接客などの高付加価値業務へ再配置し、顧客の利便性向上と業務生産性向上を両立したという。プロジェクトを共同で進めるギブリーが2026年7月3日に発表した。
ニトリとギブリーは2024年5月から、人とシステムの役割を見直す「コンタクトセンター改革プロジェクト」を推進している。問い合わせ対応を一律に自動化するのではなく、生成AIが回答する問い合わせと、人による判断や提案が必要な問い合わせを切り分けた。24時間365日の問い合わせ対応を実現するとともに、オペレーターが接客や提案に集中できる体制の構築を目指した。両社は改革をどのように進めたのか。
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改革の基盤となったのが、社内外の問い合わせ対応に使う情報を集約したナレッジベースだ。ギブリーは、プロジェクトの構想設計、基盤構築、業務オペレーションの設計を担当した。
ニトリでは、顧客向けのFAQやチャットbot、ビジュアルIVR、メール、問い合わせフォームなど、複数の問い合わせチャネルを運用している。それぞれの回答に使うQ&Aや商品情報に加え、従業員向けのQ&Aや業務ルールなども分散していたという。
プロジェクトでは、これらの情報を一元管理するナレッジベースを構築した。運用担当者がナレッジベースの情報を更新すると、複数の問い合わせチャネルの回答に反映できる。チャネルごとに同じ情報を修正する負担を減らし、回答内容の不整合も防ぎやすくした。
整備したナレッジを基に、FAQサイトやニトリのEコマース(EC)サイト「ニトリネット」の商品ページに、顧客の質問へ生成AIが回答するチャットbotを設置した。
生成AIが参照する情報については、プロジェクト側がナレッジをフォルダ階層やタグで分類し、RAG(検索拡張生成)が利用する範囲を設定した。生成AIが無関係な情報を参照することを防ぎ、回答精度を高める狙いがある。
一方、問い合わせの振り分けにはAIを利用する。クレーム対応や商品提案など、生成AIによる回答に適さない問い合わせをAIが事前に判別し、有人窓口へ案内する。
生成AIチャットbotが回答する領域の1つが「ロングテール問い合わせ」だ。
ロングテール問い合わせは、個々の発生頻度は低いものの、コンタクトセンター全体では無視できない件数となる。従来は、オペレーターが回答に必要な情報を検索したり、管理者に確認したりする必要があり、対応に時間がかかっていた。
頻出する定型質問には、ルールベースの選択式メニューから既存のQ&Aを提示する。この部分は生成AIによる回答ではなく、あらかじめ設定した選択肢と回答を表示する仕組みだ。
定型的なQ&Aだけでは対応できない質問では、顧客が生成AIへの質問か、有人オペレーターへの問い合わせかを選択できる。生成AIを選択すれば、有人対応の時間外でも回答を得られる。
生成AIチャットbotが回答できなかった質問はログとして蓄積する。プロジェクトでは、そのログを使って不足するQ&Aや業務ルールを洗い出し、ナレッジの追加や修正に活用している。ただし、発表文では、ログの抽出やナレッジの更新をAIが自動実行しているとは説明していない。
問い合わせ経路ごとの自己解決率や、顧客が入力した質問の内容も分析する。顧客がどの情報を理解しにくいのかを把握し、ナレッジだけでなくニトリネットの画面や案内方法など、UI/UXの改善にもつなげる。
生成AIチャットbotが回答するもう1つの領域が、商品に関する問い合わせだ。ニトリネットは16万点以上の商品を扱っており、商品の仕様や送料、組み立ての有無など、多数の問い合わせが寄せられる。
商品は頻繁に入れ替わるため、全ての商品について個別のQ&Aを作成し、更新し続けるのは現実的ではなかった。そのため、従来は多くの問い合わせを有人オペレーターが処理していた。
商品ページに設置したチャットbotは、表示中の商品の商品コードをシステムによって自動取得し、商品データベースと連携する。送料や組み立ての有無といった定型質問には、商品マスタに登録された情報を提示する。
自由入力の質問には生成AIが回答する。回答時には、商品マスタ、商品カテゴリごとのナレッジ、全商品に共通するナレッジの順に情報を参照するように設計した。質問対象に近い情報を優先して参照することで、幅広い質問に対応しながら、事実に基づかない回答を生成するハルシネーションのリスクを抑える。
顧客から寄せられた質問や回答ログは、商品説明に不足している情報を把握するためにも利用する。分析によって明らかになった不足情報をニトリネットの商品説明欄や、店舗従業員向けのナレッジに反映し、オンラインと店舗の双方における問い合わせ対応の改善につなげている。発表文では、ログの分析や情報の反映を生成AIが自動実行しているかどうかは明らかにしていない。
ギブリーによると、電話、メール、有人チャットによる有人対応件数を前年比で10%削減した。具体的な比較期間は発表文に記載されていない。
生成AIチャットbotによって、夜間を含む24時間365日の問い合わせ対応が可能になり、顧客が自ら疑問を解決できる範囲が広がったという。
業務工数では約30人分を削減した。削減によって生まれたリソースは、遠隔接客など、商品提案や顧客とのコミュニケーションが求められる業務へ再配置した。
ニトリの札幌コールセンターマネジャーを務める岩谷博通氏は、情報を調べて回答する比較的単純な問い合わせをシステムが担えるようになった一方、人が高付加価値を提供する仕事の割合が増えたと説明する。
今後、ニトリとギブリーは、生成AIによる無人対応と有人対応の連携を強化する。AIエージェントによるナレッジ活用を社内業務にも広げ、従業員が接客や提案など、人による対応が必要な業務へ集中できる環境を整備する方針だ。
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