情シス担当者がリーダー層を目指す際、どの資格を選べばいいのか。情シス業務にひも付く5領域で、役割拡大につながる代表的な資格と、実績を組み合わせて示す重要性を解説する。
「情報システム(情シス)担当者として次のステップに進みたいけれど、次にどの資格を取ればいいのかわからない」――。情シス部門で働く中で、こうした悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
本稿では、情シスリーダーにひも付く「5つの職務領域」と、それぞれの領域で強力な武器となる「おすすめの資格」を厳選して紹介します。
より広い範囲に責任を持てるのは、単独で作業をこなす担当者ではなく、組織横断的な責任を担える人材です。情シスリーダーの年収に結び付きやすい職務領域は、大きく次の5つに分けられます。
以降では、それぞれの領域に進むために有効な資格を見ていきます。
情シスの仕事は、運用中心の業務から、プロジェクト型の業務へ移行しつつあります。SaaS導入、ゼロトラスト移行、ERP刷新、AI導入といった業務には、技術力だけでなく調整力が問われます。
PMPは、米国のProject Management Institute(PMI)が認定する国際的なプロジェクトマネジメント資格です。受験には一定期間のプロジェクト経験と35時間のプロジェクトマネジメント研修が求められ、国際的に認知されている資格です。
PMIの発表によれば、PMP保有者は非保有者と比べて給与水準が高い傾向にあり、転職市場でも知識や経験を説明する材料になります。なお2026年7月9日から試験内容が改訂され、AI活用やサステナビリティといった新しい観点が出題範囲に加わる予定です。
情報処理推進機構(IPA)が運営する国家試験で、情報処理技術者試験のレベル4に相当する「高度試験」に位置付けられています。合格率は例年10%台、2025年度秋期試験の合格率は14.3%と、難易度は高い傾向にあります。実際のプロジェクトでどのような判断を下し、成果につなげたかを論理的に説明する力が問われます。
プロジェクトマネージャ試験など高度試験の前段階に位置付けられる、4段階中レベル3の国家試験です。ITからマネジメント、経営戦略まで幅広い知識を問う内容になっており、プロジェクトマネジメントを本格的に学ぶ前の土台として扱われています。
これらの資格と、システムの導入実績、失敗への対応経験、ベンダー調整、予算管理の経験などを合わせて示すことで、昇進の道筋が見えてきます。
サイバーセキュリティは、情シスリーダーの責任範囲の拡大につながり得る領域です。そこで、技術対策だけでなく、リスク、ガバナンス、インシデント対応を説明できる資格の取得が重視されます。
国際的な非営利団体ISC2(International Information System Security Certification Consortium)が認定する資格で、セキュリティとリスク管理、資産セキュリティ、セキュリティアーキテクチャなど8つの知識領域を幅広く問う内容になっています。CISSPの認定を受けるには、原則として規定された複数の知識領域にまたがる5年以上の実務経験が必要です。条件を満たさない場合は、Associate of ISC2として登録し、認定に必要な実務経験を積むことができます。CISSPは世界的に広く認知されている資格です
ISACA(Information Systems Audit and Control Association)が認定する資格で、情報セキュリティのガバナンス、プログラムの構築・運用、インシデント対応、リスク管理の4領域を扱います。技術的な防御よりも、組織としてセキュリティをどのように管理し経営層に説明するかに重点を置いています。
IPAが運営する国家試験に合格し、所定の登録を済ませることで得られる資格です。登録後は、サイバーセキュリティ対策を担う高度な専門知識を持つ人材であることを示す「登録セキスペ」として活動できます。ネットワークやデータベースの技術知識に加え、セキュリティ方針の策定や社内教育、関連法規に関する知識など範囲が広いのが特徴です。
CISAはISACAが認定する国際資格、システム監査技術者試験はIPAが実施する国家試験です。いずれも情報システムのリスクを分析し、内部統制や監査の観点から評価するスキルを証明します。技術者としてだけでなく、監査業務を担う人材にも向いた資格です。CISAの認定には、原則5年以上の情報システム監査、統制またはセキュリティ関連経験が必要です。
情シスがセキュリティを兼務する企業は少なくありません。こうした環境では、これらの資格が「セキュリティ領域の責任を担える人材」であることを示す根拠となります。
クラウド移行やハイブリッド環境を運用する企業で情シスをしている場合は、単一サービスの操作知識よりも複数サービスの設計力が問われます。
これら3つの資格はいずれも、クラウドの設計、セキュリティ、コスト最適化、可用性設計に関する知識を説明する材料になります。高度な専門知識を必要とするクラウド設計の専門性を証明する資格です。
Cisco Systemsが認定するネットワーク分野の専門資格で、コア試験とコンセントレーション試験の両方に合格する必要があります。企業のネットワーク構成、自動化、セキュリティ、トラブルシューティングと扱う範囲が広く、クラウドとオンプレミスを橋渡しするネットワーク基盤を担う情シスリーダー向けの資格です。
クラウド資格は、利用料の最適化やセキュリティ設計の実績とセットで示すことで、より強い説得力を持ちます。
情シスリーダーの評価は、ITツールやサービスの新規導入だけでは決まりません。日々の運用を安定させ、問い合わせや障害の発生件数を減らし、サービス品質を説明できることも重要な評価軸になります。ここでは、こうした運用領域に関係する資格を紹介します。
ITサービスマネジメントのフレームワークITIL(Information Technology Infrastructure Library)に基づく基礎資格ITIL Foundation(Version 5)は、試験運営組織PeopleCertが運営しています。受験に実務経験は必要なく、サービスの価値をどう生み出し、どのような原則に基づいて運用を改善するかという共通言語を学べます。世界中の企業で導入されているフレームワークであるため、部門を超えた会話の土台として使いやすいのが特徴です。
IPAが実施する国家試験で、情報処理技術者試験の中でも高度試験に位置付けられているのがITサービスマネージャ試験です。サービスの企画、設計、移行、運用、継続的改善までを一貫して担う人材を対象としており、SLA管理や変更管理、構成管理といった実務的な知識が幅広く問われます。
情シスの現場では、問い合わせ対応や障害対応が特定の担当者に属人化しやすいという課題があります。ITサービスマネージャ試験を経て、問い合わせ件数の削減、一次解決率の向上、障害復旧時間の短縮、SLA改善、ナレッジ整備といった形で運用改善を数値化できれば、人事評価の材料になり得ます。
情シス部門の中で重要な役割を任される立場になるには、経営層に対してIT投資の意味を説明できる力が必要になる場面があります。ここで問われるのは、個人の技術力だけでなく、投資、リスク、統制、事業成果をひも付けて説明できる力です。
IPAが実施する国家試験の中でも、経営とITの橋渡し役を担う人材を対象とした試験です。事業戦略の分析からIT戦略の策定、投資効果の評価まで、経営層に近い視点での思考力が問われる論述式の試験が課されます。
先に紹介したCISAとシステム監査技術者試験は、経営層に対してIT統制や監査結果を説明するために必要な知識を体系的に学ぶ機会になります。CISMも、セキュリティを経営リスクとして語る視点を持つ資格として活用できます。CISMの認定には、4領域中3領域以上にまたがる5年以上の関連実務経験が必要です。
CIO(最高情報責任者)、CISO(最高情報セキュリティ責任者)、情シス部門の部長クラスを目指すなら、技術力に加えてガバナンスのノウハウや知見を持つことが重要です。「なぜこの投資が必要か」「どのリスクを下げるのか」「どの業務成果につながるのか」を経営層に説明できる人材が、経営とITをつなぐ役割を担うことができます。
資格は、自分がどのような責任を担える人材なのかを示すための証明です。プロジェクト、セキュリティ、クラウド、運用、ガバナンスのどこで価値を出すのかを決め、その役割に合った資格と実績を組み合わせることが、キャリア形成や待遇改善につながる可能性があります。
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