情シスからCTOへ ナインシグマ三浦氏が語る「経験を掛け合わせるキャリア形成」情シスキャリアをアップデートする【第7回】

ナインシグマ・ホールディングスのCTO三浦克浩氏は、SEや情報システム部門、バックオフィスなど複数職種の異動を経てCTOに登用された。確実に成果を出すために同氏がやってきたことは何か。

2026年06月26日 05時00分 公開
[成澤綾子TechTargetジャパン]

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連載:情シスキャリアをアップデートする

情報システム部員は、日々の運用・問い合わせ・トラブル対応といった"目の前の業務"に追われがちだ。その中でも、評価され、次の役割を任されている人もいる。そのような人は、何をしてきたのか? 逆に何を「やらない」と決めてきたのか? この視点から、評価される情シスになるための、業務の取捨選択や判断軸を整理する。


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 自分の専門性やキャリア志向に一致しない異動が発生することがある。その際、「目指していたキャリアから外れてしまった」と感じる人もいるだろう。

 技術コンサルティング企業ナインシグマ・ホールディングス(以下、ナインシグマ)で最高技術責任者(CTO)を務める三浦克浩氏も、SE(システムエンジニア)としてキャリアをスタートさせた後、勤務先の意向で情報システム部門(以下、情シス)やバックオフィス業務に携わってきた。

 しかし同氏は、それらを「本来やりたかった仕事から外れた経験」とは捉えていない。むしろ、異なる職種で得た経験を掛け合わせることで、エンジニアとしても情シス担当者としても成長できたと振り返る。

写真 三浦氏がCTOとして開発を統括した、ナインシグマの技術用途探索・新規事業創出支援AIツール「AKCELI」

キャリアは分断されない 経験は後からつながる

 事業に貢献する成果を挙げるためのコツを尋ねたところ、三浦氏は「さまざまなキャリアを経験してきたことが土台となっている」と答えた。

 エンジニアとしてキャリアをスタートした後、情シス部門に異動になれば、自身が思い描いていたキャリアとの違いに戸惑う人もいるだろう。一方、三浦氏はそれぞれの職種で得た経験を強みに変えてきた。

 「情シス担当者が実施する要件定義や業務フローの理解、ユーザーヒアリングにおけるコミュニケーション力は、エンジニアとして成長するために不可欠なスキルです。逆にエンジニアの視点を情シスの業務に取り入れ、バッチ処理の作成や、開発観点でのベンダーコントロールを実施することで、効率的なシステム運用を実現しています」(三浦氏)

 三浦氏は、キャリアは必ずしも一直線に進むものではないと話す。開発、インフラ、情シス、バックオフィスなど、一見すると遠回りに見える経験も、後から振り返れば必ずどこかで生きてくるという。

 また同氏は、どんな仕事でも「期待された成果に上乗せする」ことを意識してきた。

 「会社から求められる成果は制約条件です。その条件をクリアする過程で、新しい技術を学んだり、やり方を変えてみたり、自分なりの挑戦を加えてきました。ゲームでボーナスアイテムを拾いながら200点、300点を目指す感覚ですね」(三浦氏)

 与えられた仕事をただこなすのではなく、自分なりの挑戦を加えることが成長につながる。何事も「楽しんでいる人が一番上達する」という考え方が、現在のキャリアの土台になっている。

CTOと情シスを兼任することになった理由

 新卒で入社したタイヤメーカーでは、在庫管理や生産管理システムの開発に従事するSEとしてキャリアをスタートさせた。その後、本社の情シス部門への異動や工場のネットワーク管理を担当するなど、開発、インフラ、情シスそれぞれの業務を経験した。

 その後数社の転職を経た三浦氏は、前職で未経験ながらCTOに就任した。開発チームをゼロからつくり上げる一方で、情シス部門も全般的に統括した。

 2020年に入社したナインシグマでも、開発チームの立ち上げを期待され、1人目エンジニア兼CTOとして入社。当初はシステム開発に専念する予定だったが、担当者の不在によって十分な管理体制が整備されていなかった社内のIT環境を看過できず、情シス部門を統括することを決めたという。

自由と統制のバランスで情シスを再設計

 情シスを担当することになった三浦氏が直面したのは、IT資産や業務アプリケーションの管理体制が整理されていない状況だった。ナインシグマでは、現場の従業員が自ら業務アプリケーションを作成、カスタマイズできるツールを業務プラットフォームとして全社的に導入していた。

 三浦氏によると、同社には理系のバックグラウンドを持ち、こうしたツールを使ったカスタマイズが得意な従業員が多いという。その結果、独自のアプリケーションをつくり、業務やユーザーの特性に合わせて個別最適化するといった光景が見られた。

 また、PCの在庫管理なども十分にはできていなかった。「社内のIT環境全体を把握するのが非常に難しい状況の中、業務アプリケーションの管理方法、セキュリティ、統制なども、一から設計する必要がありました」(三浦氏)

 アクセス権の付与や、アプリケーションのアップデート履歴に関するルールも存在せず「いつ・誰が・どのデータを更新したか」を記録する仕組みもなかったという。

 そこで三浦氏は、まずシステムを作り直すのではなく、外部ベンダーの協力を得ながら、現状を把握するための分析と整理に着手した。

 具体的に実施したことの1つが、アプリケーションのアップデート履歴をデータベース化する作業だ。外部ベンダーも含めて、アプリケーションの使用状況を把握できるようにした。また、アプリケーションの改善要望を吸い上げるための窓口を設置した。それまでは、従業員が個人的にアプリケーションを改修していたり、改善要望を特定の従業員が拾い上げ実行したりする体制となっていた。しかし窓口を設置したことで、特定の従業員に改善要望を集中させず、社内の声を広く拾える体制を作ることができた。

 この変更について三浦氏は、「多くの従業員にとってはよい変化でも、個別最適化したシステムを使用していた従業員からすれば業務が増えることになります。そこで、個人的な改修を一切禁止するのではなく、『申請フローを通して、改修履歴を残せば改修してもOK』というルールを徹底しました」と話す。

 自由と統制のバランスをとり、無理のない形で再構築を推進した結果、「社内の至るところから、申請が活発に上がってくるようになった」と三浦氏はその効果を説明する。

 システムの運用整備と同時進行で、三浦氏はPCや業務システムの管理設計など、情シスの管理対象となる範囲を明確に定め、組織的な統制を進めた。

 三浦氏の尽力でアップデートされた情シス部門は、事業にも成果をもたらしている。クライアントとの契約交渉においてボトルネックになっていたデータ管理やリモートワーク下でのセキュリティ保持など、自社のセキュリティポリシーを論理的に説明できる土台を構築したことは、契約継続や商談時の説明に役立っている。

今後の展望は

 三浦氏に、今後の展望を尋ねた。同氏は、「生成AIによる組織力の強化と、自分がいなくても回る組織作り」を挙げる。情シス担当者の生成AIの活用レベルが事業の成長を左右すると考える三浦氏は、従業員がAIツールをExcelやメールのように使いこなせる状態を目指し、社内施策を推進している。

 また、特定の個人に依存する運用構造を避けるため、仕組みの整備や人材の確保を通じて、持続可能な組織体制を目指す。

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