情報システム部門にテレワーク勤務者と出社者が混在している場合、現地対応が出社者に偏りやすい。個人の気遣いに頼らず、業務の負担を軽減する施策を5つ紹介する。
「今日も会議室のプロジェクターが映らないから呼び出された」「気付いたら備品の受け渡しも来客対応も、全部出社している人がやっている気がする」――。
情報システム部門(以下、情シス)の中で、テレワーク勤務者(以下、テレワーク組)と出社している担当者(以下、出社組)が混在している場合、出社組にばかり頼みごとが集まり、1日の大半がその対応で終わってしまう事態が起こり得る。
本稿では、この負担の偏りを個人の気遣いや根性論で片付けず、場所に依存しない仕組みによって解決するための仕組み化施策5つを提示する。
社内のちょっとした声掛けやプリンタの不調対応などは、技術的な難易度は高くないものの、オフィスの「そこにいる人」に自然と集まってくる。一方、テレワーク組はチャットやオンライン会議に上がってこないオフィス内での小さなやり取りや情報を把握しにくい。
日本生産性本部が2025年7月30日に公表した「働く人の意識調査」によると、テレワーク実施率は16.8%、5類移行後の平均も15.6%にとどまっており、大多数の従業員は出社を前提に働いている。そのため、出社前提の従業員から持ち込まれる現場対応が、そのまま出社組の情シスへと積み重なる構造になっている。
これらは一つ一つが小さく、システム上で「チケット」として起票されにくいため、上司やテレワーク組からは負担として認識されにくい。しかし、これらの突発的な割り込みを放置すれば、対応履歴が残らず優先順位も崩れ、出社組の時間だけが浪費されていく。この課題を解消するために、以下の5つの施策による運用設計が必要となる。
負担の偏りを減らす第一歩は、依頼の受け方をそろえることだ。出社している担当者に直接声を掛ける口頭依頼の運用を放置すると、業務が個人に集中して属人化を招く。
この解決策として、問い合わせ窓口を一本化し、会議室、端末、アカウント、SaaS、ネットワークといったカテゴリごとに受付先を明確にする。「緊急時以外はチケットを起票する」「口頭相談を受けた場合は、対応した担当者自身がその場でチケット化する」「チケット番号のない作業には原則着手しない」といった明確なルールを提示し、依頼の入口を一本化する。口頭依頼を受けた際に入力するテンプレートを用意し、出社中に受けた依頼を週次で棚卸しすることも、負担を可視化する上で有効だ。
ハイブリッド会議において、オフィス組の参加者だけで雑談的に決まった内容は、テレワーク組には伝わりにくい。しかし、テレワーク組に配慮しすぎるあまり、出社組が会議室に集まる意味を見失うような運用も避けたい。
そこで、議論の経緯、決定事項、宿題、担当者、期限は必ずテキスト化し、チャットやチケットに落とし込む。重要な会議は録画やAI議事録を使って後から確認できるようにしておく。障害対応、セキュリティ判断、ベンダー調整、システム変更など、後から責任の所在を確認すべきテーマが多い情シスだからこそ、個人の記憶に頼る運用を脱し、認識の差を広げない工夫が求められる。
コミュニケーションを改善しようとして単にチャットの量を増やすだけでは、逆効果になる場合がある。急ぎではない相談が頻繁にチャットで送られてくれば出社組の現場作業はその都度中断され、逆に出社組の口頭共有が多いままであればテレワーク組は情報を聞き漏らすからだ。
そのため、チャットは気軽さよりも「残し方」のルール設計が重要となる。具体的には、チャンネル設計、件名、メンション、返信期限をあらかじめ定めておく。「依頼」「相談」「共有」「障害」「緊急」といった目的別にチャンネルを分け、緊急度と重要度を明示する。緊急時は電話、それ以外はチケットかチャットという基準を設け、チーム全体に関係する判断は必ず公開チャンネルに残す。DMで決めた内容も必要に応じてチームチャンネルへ転記し、作業依頼時には完了条件も書き添える運用を徹底する。
出社しているという理由だけで、特定の担当者を現場の判断や社内政治、他部署との調整を一手に背負わせる「便利な現地要員」にしない。
PC交換や現地でのネットワーク確認、役員対応などは、現地確認が必要な業務とオンラインで判断できる業務を明確に切り分け、現地対応そのものをローテーション制にする。その上で、対応件数と時間を記録し、管理職へ共有して特定メンバーへの負荷を見える化することが重要だ。これを「助け合い」の一言で片付けると、特定メンバーの負荷が見えないまま蓄積してしまう。
出社組とテレワーク組の間に生まれやすい「用件があるときだけ会話する」という情報の非対称性や関係性の希薄化を防ぐ必要がある。
出社組はテレワーク組に対して「現場の空気を読め」と求めるのではなく、オフィス内の小さな変化、上司の反応、他部署の温度感といった見えない情報を補う伝え方を意識する。「さっき話した件」などの曖昧な表現を避け、背景、判断理由、期限、関係者、未決事項をセットで共有し、全員が読める場所に残す習慣を付ける。
さらに、週1回の短い状況共有、障害対応後の15分振り返り、ナレッジ共有会、ペアレビュー、オンラインで参加できる非公式相談枠といった、業務にひも付く接点を意図的に設計し、チーム内の孤立を防ぐ。
誰かの個人的な気遣いや頑張りに依存する体制は、その人がチームを離れた瞬間に崩壊する。5つの施策を明文化し、誰が読んでも同じように運用できる状態にしておくことが不可欠だ。
出社組とテレワーク組の間に生まれる溝は、働き方の違いそのものから生じるのではない。情報の残し方や依頼の受け方を曖昧なまま放置することで深まっていく。出社組が我慢するだけのハイブリッド勤務を続けないためにも、まずは出社側に偏っている業務を洗い出して可視化し、個人の裁量に頼らない運用設計を確立していくことが求められる。
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