診療所でも使える電子カルテを紹介する連載の第2回目は、開業医が自ら開発した電子カルテシステム「Dynamics」を紹介する。実際に利用する立場にある医師が開発した電子カルテの特徴とは?
「もう少し画面が見やすければ……」「こんな機能があれば……」など、自分の業務に合った使いやすいシステムが欲しいという気持ちを多くのユーザーは持っている。しかし、実際にはそうしたニーズがなかなか反映されないこともある。それは、システムを作る(開発ベンダー)側とシステムを利用する側(ユーザー)とがそれぞれ異なる専門性や視点を持っているためだ。
今回は、開業医である吉原正彦氏(吉原クリニック院長)が自ら開発した電子カルテシステム「Dynamics」を紹介する。実際に使用する立場である医師が開発した電子カルテとは一体、どんなものだろうか。
Dynamicsは、電子カルテとレセプトコンピュータ(以下、レセコン)の機能を統合した無床診療所向けのソフトウェアだ。診察受付や診察室にあるPC、データを管理するサーバ、プリンタなどを院内ネットワークで連携させ、カルテ情報とレセプトデータを一元管理できる。また、会計データとの連動によって診療報酬の点数計算を自動化でき、診察室で処方せんや診断書をプリントアウトして患者にすぐに提供できるなど、医療業務の効率化を支援する。Dynamicsの主要機能は、以下の通り。
担当別 | 機能 |
---|---|
医師 | 電子カルテ 処方せん、薬剤情報作成 各種帳票の作成 ・診療情報提供書(紹介状) ・老人訪問看護・訪問看護指示書 ・主治医意見書作成 ・健康診査報告書作成 ・診断書、生活習慣病療養計画書作成 禁忌薬情報 薬歴経過・検査結果時系列のグラフ化 検査画像の保存 イラスト入力機能 在宅診療入力機能 ガイドライン参照機能 |
医療事務担当者 | 受付管理 レセプト作成、印刷 |
Dynamicsでは、マウスのクリックのみでDo処方などの定型入力が可能であるなど、医師のデータ入力を簡素化する機能がある。また、検査結果のグラフ表示や画像の取り込みなども可能で、データ化した画像情報の自動ファイリング機能も搭載している。さらに、過去の薬歴や検査歴を検索・参照することも可能だ。
吉原氏は工学部の出身で、医師になる前は産業機器の開発などに携わっていた。吉原氏は1996年からレセコンを自作し始めた。その理由について、当時使っていた既存のレセコン製品では「レセコンデータを基に紹介状を自動作成したい」「患者の1年間の薬歴経過を把握したい」というニーズを満たしてくれなかったと説明する。また、「事務室のレセコンとは別に、診察室で紙カルテやPCへの入力など、データ入力の重複を排除しようと考えたこと」に起因するという。Dynamicsという製品名は「力学」が由来で「小さな力でも大きな動き、働きになれば、という願いが込められている」と語る。
こうした医師ならでは発想の下で開発された点が、Dynamicsの特徴だ。電子カルテとレセコンの機能を統合している点は、データの重複入力作業を軽減するためだけではない。例えば、日々の診療業務後にレセプトの中間状態にあるデータを作成・蓄積し、月ごとの集計作業ではデータの並べ替えをするだけで済む。これにより、多くの時間を要していたレセプトの出力作業を軽減できる。また、共通データを活用することで、Dynamicsの所見画面では紙カルテの2号用紙と同じ形式の指示欄に症状などの項目を付け足すだけで、すぐにカルテデータを作成することも可能だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ハロウィーンの口コミ数はエイプリルフールやバレンタインを超える マーケ視点で押さえておくべきことは?
ホットリンクは、SNSの投稿データから、ハロウィーンに関する口コミを調査した。
なぜ料理の失敗写真がパッケージに? クノールが展開する「ジレニアル世代」向けキャンペーンの真意
調味料ブランドのKnorr(クノール)は季節限定のホリデーマーケティングキャンペーン「#E...
業界トップランナーが語る「イベントDX」 リアルもオンラインも、もっと変われる
コロナ禍を経て、イベントの在り方は大きく変わった。データを駆使してイベントの体験価...