【IFRS】月刊IFRSフォーラム【8】
6月:ASBJの中心でIFRSを叫ぶ/記事ランキング
ASBJが公表した中期運営方針からはその「IFRSにどっぷり」具合が伝わってきます。日本でIFRSの任意適用が始まり、ASBJが行っているIASBへの意見発信は重要性が増しています。ASBJの将来を考えてみましょう。
中期運営方針を公表
これまで日本の会計基準を策定してきた企業会計基準委員会(ASBJ)が急速にその性格を変えようとしています。今回の月刊IFRSフォーラムは6月16日に公表されたASBJの中期運営方針を基に、ASBJの将来を考えてみましょう。
中期運営方針の内容を(少々乱暴ですが)一言でまとめると「IFRSにどっぷり」といえるのではないでしょうか。2012年(IFRSの強制適用が判断される年です)までの基本方針としては現在進行中のコンバージェンスを完了させることに加えて、「国際的な会計基準の開発への貢献」が大きく打ち出されています。その内容はIFRSを開発するIASB(国際会計基準審議会)への意見発信や共同会議の開催など、今後開発・改訂されるIFRSの会計基準に対して日本企業の要望を集約し、反映させていく作業です。日本はIASBのアジア・オセアニアにおけるサテライトオフィスの誘致も狙っていて、ASBJは中期運営方針で「IFRSに関するアジア・オセアニア地域における中心的な役割を担うための基礎づくり」を挙げています。
2011年6月にはすべてが終わらないかもしれない(参考記事:IFRSと米国基準のコンバージェンス完了、2011年後半に延期)と発表されたIASBとFASB(米国財務会計基準審議会)のMoUについてもASBJは積極的な関与をするとしています。「MoUプロジェクトの帰趨(きすう)は、わが国にも将来的に重要な影響を与えると考えられる」(中期運営方針)からです。そのためMoUに関して公開草案などへのコメント提出だけでなく、その審議段階から意見を発信し、「日本で受け入れ可能なものとなるように取り組む」と意気込んでいます。
IFRS開発への直接的な関与も
仮に2012年に日本でIFRSの強制適用が決まった場合、ASBJの活動はどうなるのでしょうか。ASBJは強制適用を見越して、その活動方針を説明しています。IFRSの強制適用は連結財務諸表だけで、単体の財務諸表については日本基準の方針です。そのため、日本基準の開発はASBJが引き続き担うことになります。ただ、単体の基準については、IFRSに収れんさせる従来のコンバージェンスの考えと、IFRSとは分離して考える(連単分離)という2つの方向があり、金融庁の企業会計審議会で議論が進んでいます。日本基準を今後どうするのか、議論の結論はASBJの今後に大きな影響を与えるでしょう。
中期運営方針では強制適用後もIASBに対して意見発信し、開発されるIFRSへの関与を続けるとしています。さらにASBJがIASBのプロジェクトの一部を担って、IFRS開発に直接的に関与するという目標も掲げられています。従来のASBJの作業からはかなり踏み込んだ印象です。ASBJが国内におけるIFRSの解釈や実務上の適用に関する役割を持つようになることも方針として示しています。
中期運営方針からはASBJの意気込みが伝わってきます。日本、アジアにおけるIFRS適用をリードするいう意気込みであり、同時に日本基準の開発主体からIFRSを担う組織体に変わらなければ存在意義が問われるという危機感があるのでしょう。会計基準の改訂作業は当然ですが、同時にASBJのIFRSへの関わり具合にも注目してみて下さい。
6月掲載記事のランキング
それではIFRSフォーラムで6月に掲載した記事のランキングと、ニュース記事のランキングを紹介しましょう。
いまや欠かせなくなったアプリケーションについての解説記事。公認会計士や経理財務部門の方などの会計人に向けに分かりやすく、コンパクトに解説するのが特徴です。「カスタマイズ」「パラメータ」などよく聞くけど、意味が分かりにくいような用語を説明します。「会計の視点」として会計処理上の注意なども付けています。
日本企業のIFRS導入でネックになるとされている有形固定資産についての解説記事です。日本基準での固定資産の処理、特に耐用年数の決定や償却方法は税法の影響を強く受けてきました。これがIFRSになることでどう変わるのでしょうか。そしてどのような考え方で新しい取り組みを行えばいいのでしょうか。記事で解説しています。
海外のIFRS事例についての解説記事です。今回のテーマは「連結の範囲」。IFRSを適用する日本企業でも悩むケースが多いとみられます。難しいのが原則主義の中で、どのように判断するか。子会社を支配していないと思っていても「消極的な所有」として支配が認定されたケースを説明します。
企業結合についての解説記事です。IFRSと日本基準では大きな差はなくなっていますが、一部では差異があるといいます。どのような規定があり、日本基準とどう違うのかを説明します。
ニュース記事ランキング
6月のニュース記事ランキングは以下です。1位と2位は公認会計士資格制度に関する懇談会のレポート記事です。議論が迷走しつつあり、注目を集めました。3位は見直しが始まった内部統制報告制度についての記事です。
- 1位:合格者に順位付け——新公認会計士資格制度の事務局案公表
- 2位:そもそも公認会計士資格試験の大変革は必要なのか?
- 3位:内部統制報告書から「重要な欠陥」が消える
- 4位:IFRS基準書を2ページに要約、会計士協会が日本語訳公開
- 5位:IFRSと米国基準のコンバージェンス完了、2011年後半に延期
それではまた来月お会いしましょう!
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