“デスクトップ仮想化に向いていない”企業のVDI導入、苦難と喜びの軌跡看板メーカー東亜レジンのデスクトップ仮想化導入事例

大型電照式看板を数多く手掛ける中小企業、東亜レジン。地方拠点の貧弱な通信環境を改善するため選んだのはデスクトップ仮想化だった。この取り組みの全容が「ITmedia Virtual EXPO 2011」で明らかになる。

2011年09月01日 09時00分 公開
[富永康信,ロビンソン]

有名企業の大型看板を数多く手掛ける東亜レジンの悩み

 東京タワーが完成した1958年(昭和33年)、当時はまだ石油は燃料として消費することが大半だった時代に、日本で初めてアクリル樹脂によるサインボード(看板)の製作を行った東亜レジンという会社がある。同社はその樹脂加工技術を武器に、天井面を光源に見せる光天井や大型電照式看板などを次々と開発。現在では、デザイン、設計、施行、メンテナンスまでのトータルプランを提供することで、ガソリンスタンドやコンビニエンスストア、外食、自動車ディーラーなど、誰もが日常的に目にしている有名企業の看板を数多く手掛けている。

 レジン(Resin)とは、一般にプラスチックと呼ばれている、石油を原料とした合成樹脂(Synthetic Resin)の総称。軽く強く耐久性があるため、自由に成型できる半面、熱(100度以上)や一定方向からの衝撃には弱いという特徴も合わせ持つ。

 海外のニュースで、強風により大型店舗のアクリル製看板がバリバリに破壊されているのをよく見掛けるが、日本では台風が直撃しても看板が派手に壊れるケースはまれである。なぜか。日本の看板の多くは、特別な素材の開発や耐久性を高めた成型方法で作られているからだ。東亜レジンも独自の技術で耐久性に優れた看板を作りだし、有名企業から厚い信頼を得ている。

 そうした背景から、多くの企業が東亜レジンに看板の設計・施工を依頼している。結果的にデザインや設計図、施工写真、完成写真などの画像データが急激に増加し、東亜レジンはその取り扱いに高度なセキュリティが求められるようになった。

画像 東亜レジンのWebサイトから

貧弱な地方事業所の通信環境で業務を続けるための方策

 しかし、日本全国に11拠点を展開する同社の事業所の多くがインターネットVPNで結ばれているものの、メインがフレッツ回線、バックアップがNTTドコモのFOMAという通信環境で、地方の3拠点に限ってはADSL回線を使っていた。さらに、サーバは旧式のタワー型で、オフィス内のラックにくくり付け状態だったため、年に数回もシステムダウンが発生していた。加えて、クライアントOSは基幹システムの制約によってWindows 98が標準というのが、2007年までの同社の情報システム環境だった。

画像 東亜経営開発 システム開発室 平山悦之氏

 「2008年1月に12年間使い続けた基幹システムを再構築するとともに、ITインフラ全体を再構築することにしたのです」

 そう当時を振り返るのは、東亜レジンの情報システム子会社、東亜経営開発のシステム開発室に所属する平山悦之氏だ。

 平山氏が先導したシステム再構築プロジェクトでは、Oracle関連のデータベースサーバやファイルサーバ、情報系システムをそれぞれリプレース。システムダウンを防止するための冗長化と、サーバルームを新設することで温度管理まで行う計画だった。

 だが、サーバごとに冗長化していては費用が積み上がり、設置スペースも足りない。そのため、サーバ仮想化に踏み切った。VMware ESXで物理サーバ6台を仮想化して物理サーバ2台に集約。同時にストレージも146GバイトのHDDを14個構成で共有化した。

 しかし、同社を悩ませた最大の問題は、サーバよりも地方の通信環境だった。「遠隔地の事業所から本社の基幹システムや共有システムへのアクセスは劣悪で、システム管理者もいないため、サーバデータのバックアップや障害時の原因切り分けなど遠隔地の負担が大きかったのです」(平山氏)

 また、旧基幹システムから新システムへ移行するに当たり、Windows 98の動作が不安定になり、急きょWindows XPへの切り替えが必要になったという。

 そこで、同社が導き出した答えは、仮想デスクトップ(VDI)導入だった。平山氏いわく、「デスクトップ仮想化に向いていない企業が取り組んだVDI導入事例」。確かに、地方拠点の通信速度はADSLなので2〜3Mbps程度。これで高精細な施工画像などを扱うのはかなり困難であることは確かだ。

 では、東亜レジンはどのようにVDIを成功させたのか。

2011年も開催される「ITmedia Virtual EXPO 2011」で事例の全容を紹介

 この苦労話は、2011年9月13日から開催される「ITmedia Virtual EXPO 2011」で明らかにされる。会場に参加者を集めて行われるリアルなイベントではなく、ネットにつながるPCがあれば、いつでも、どこにいても無料で参加できるバーチャルなイベントである。ITmedia Virtual EXPOは、講演の視聴や展示製品の情報収集、参加者同士、あるいは展示ブースの担当者とのコミュニケーションを可能にする。

 2011年は、「転換期のITとモノづくり」をテーマに、クラウド/仮想化、復興/事業継続、セキュリティ、モノづくりIT、スマートテクノロジーなど、8つのゾーンを展開する。世界的な経済停滞や急激な円高、アジア各国の隆盛という劇的な変化に揉まれる中、震災の復興途上にある日本企業がどのようにして危機を乗り越え、活力ある成長を成し遂げることができるか、重要なヒントを見つけられるイベントになる予定だ。

 東亜レジンの事例は、クラウド/仮想化ゾーンの、事例から学ぶデスクトップ仮想化導入「サーバ仮想化からVDIへ。サイン(看板)メーカー東亜レジン、XenDesktop導入の軌跡」と題したセッションで視聴することができる。

 約3年の運用期間にさまざまな問題を克服した末にたどり着いたXenDesktop導入の技術的課題と改善策、さまざまな導入効果、想定外のうれしい効用なども紹介される。平山氏本人が登壇するので楽しみにしてほしい。

 開催概要の閲覧と登録は以下から行うことができる。

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