2015年にはテラビット規格も視野に?
【技術動向】100Gbps超えも目前、超高速化が進む「イーサネット」
100Gbpsまで高速化が進んだイーサネット。近い将来、1Tbpsの「テラビットイーサネット」も登場しそうだ。本稿は、イーサネット高速化の現状と今後の方向性を解説する。
ネットワークの主要要素であるイーサネットを高速化する流れが止まらない。10Gbpsを超え、40Gbps/100Gbpsのデータ伝送速度を実現する製品が登場しつつある。さらに2015年ごろに向けて、Tbps級の伝送速度を誇る「テラビットイーサネット」を実現するための技術開発も進みつつある。
本稿は、ネットワーク製品に詳しいネットワンシステムズの中村喜之氏と金子彰良氏の話を基に、イーサネット高速化の最新動向を解説する。
現状のイーサネットで主流になりつつあるのは、1Gbps超の通信速度を持つギガビットイーサネットである。既に10Gbpsの通信速度を持つ10ギガビットイーサネットも普及が進む。
伝送速度の高速化をさらに推し進めるべく、IEEE(米国電気電子技術者協会)が2010年6月に承認したのが、100Gビット/秒または40Gビット/秒の伝送速度を誇るイーサネット規格「IEEE802.3ba」、つまり100ギガビット/40ギガビットイーサネットである。
高速化の最新像:40ギガ/100ギガビットイーサネットの時代へ
100ギガビットイーサネットと40ギガビットイーサネットの想定用途は異なる。大まかに分けると、100ギガビットイーサネットはデータセンター間などの拠点間通信向け、40ギガビットイーサネットはサーバ間通信向けという位置付けだ。以下、それぞれについて詳しく見ていこう。
100ギガビットイーサネット:拠点間通信を高速化
100ギガビットイーサネットは、サービスプロバイダーの拠点間や事業者間などを結ぶコアネットワークでの利用を想定したイーサネット規格である。長距離伝送に適したシングルモード光ファイバー(SMF)を使用した場合、最長40キロまでの通信が可能だ。一方、データセンター向けには、安価で短距離伝送に適したマルチモード光ファイバー(MMF)か銅線ケーブルを利用した短距離用100ギガビットイーサネットも規定されている。
25Gbpsのレーン(伝送路)を4本束ねることで、100Gbpsの伝送速度を実現する。10Gbpsのレーン10本で100Gbpsを実現する方式もある。
※訂正履歴:掲載当初、「光ファイバー」としていたのは「レーン(伝送路)」の誤りでした。本稿は修正済みです。(2012/5/31 22:20)
40ギガビットイーサネット:サーバ間通信に焦点
40ギガビットイーサネットは、主にサーバ間など短距離通信の広帯域化に焦点を当てる。100ギガビットイーサネットと同様、複数レーンの多重化や複数の光ファイバーを利用したパラレル伝送で40Gbpsを実現する。
データセンター間通信などの長距離通信も想定されており、SMFを利用した場合は最長10キロまでの距離の通信が可能だ。
高速化の背景:クラウドや仮想化の普及によるトラフィック増に応える
100ギガビット/40ギガビットイーサネットという高速なイーサネット規格が登場した理由は何か。その背景には、企業ITを取り巻く環境の急速な変化がある。
業務システムのデータセンターへの集約化やクラウドサービスの企業への浸透が、高速なイーサネット規格が求められる理由の1つだ。業務システムをネットワーク経由で利用するのが一般的になってきたことで、ネットワークの帯域はますます逼迫している。
サーバやストレージ間の通信が頻繁に発生するシステムが増加してきたことも、イーサネット高速化を後押しする。例えば、デスクトップ仮想化(VDI)を導入し、ユーザーのプロファイルをネットワーク経由で取得する場合などだ。多数のエンドユーザーが同時に仮想デスクトップの利用を開始すると、サーバとストレージ間の通信が急増してしまうという課題がある(関連記事:仮想デスクトップ一斉起動時の速度低下を解消するSSD)。
さらに、CADや映像といった大容量データの増加、「FCoE」や「iSCSI」といったストレージアクセスのイーサネットへの統合も、高速化の必要性を高める要因となっている。
イーサネット自体を高速化しなくても、別の手段で高速化を図ることはできる。サーバやスイッチなどを結ぶ複数のリンク(回線)を束ねて高速化する「リンクアグリゲーション(LAG)」はそうした手段の1つだ。LAGを利用すれば、高速なイーサネットインタフェースを利用せずに帯域を増やすことができる。だがネットワークトラフィックはLAGのような技術だけでは対処できないほど急速に増大しているため、イーサネット自体の高速化が求められているのである。
高速化の経緯と今後:速度は4年で10倍に、「テラビットイーサ」の検討も
100Gbpsまで高速化が進んだイーサネット。ただし、製品化は2010年ごろに始まったばかりであり、実際に100ギガビット/40ギガビットイーサネットの導入が広がるには2~3年程度かかると考えられる。100ギガビット/40ギガビットイーサネットの普及と同時並行で、さらに高速なイーサネット規格の標準化が進むと見るのが妥当だ。
では、イーサネットはどこまで高速化するのだろうか。今後の高速化の方向性を占う上で参考となるのが、これまでのイーサネット標準化の歴史である。
イーサネットの伝送速度は、多少のばらつきはあるものの、ほぼ4年で10倍のペースで高速化されてきた。IEEEは、1990年に10Mbpsの「IEEE802.3i」、1995年に100Mbpsの「IEEE802.3u」、1998年に1Gbpsの「IEEE 802.3z」、2002年に10Gbpsの「IEEE 802.3ae」といったイーサネット規格を承認してきた。そして2010年6月、100Gbps/40GbpsのIEEE802.3baが承認された。
これまでの高速化のペースが今後も続くと仮定すると、2014、2015年ごろには1Tbpsのイーサネット、いわば「テラビットイーサネット」が登場することになる。既に400Gbpsや1Tbpsといった100Gbps超の次世代イーサネットに関しての議論も始まっている。
ただし、高速化を進めれば進めるほど、実現に当たっての技術的な課題は高度化、多様化する。テラビットイーサネット規格の検討が具体化するまでは相当の時間が必要になるという見方が一般的だ。とはいえ、イーサネットはこれまでも多くの課題を解決しながら高速化を重ねてきた。テラビットイーサネットは遠くない将来に登場すると考えてよいだろう。
ここまで、イーサネット高速化の状況と今後の見通しを示した。100ギガビット/40ギガビットイーサネットの導入で、今までのネットワーク運用とはどう変わるのか。導入時に注意すべき点は何か。TechTargetジャパンは今後、100ギガビット/40ギガビットイーサネットの導入面や構築面、運用面について、既存のイーサネットとの違いを解説する記事を掲載予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
4
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
「有線LAN環境」に関するアンケート
-
7
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
8
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
9
積水化学工業が「SAP S/4HANA Cloud」の“全グループ導入”に踏み切った訳
-
10
データセンター事業者が「脱VMware」をした“例のライセンス問題”じゃない理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー