【連載コラム】医療ITの現場から
電子カルテ導入成功の鍵は、現場に合わせた「運用構築」にあり
現在の診療所IT化の代表格といえる「電子カルテ」。導入すると何が変わるのかが明確に理解されているとはいえない。そのメリットを具体的に整理してみよう。
レセプト(診療報酬明細書)を手書きするという事務スタッフの作業負担を大幅に軽減するレセプトコンピュータ(以下、レセコン)は、かつて診療所IT化の代表格でした。手書きよりもはるかに速く正確にレセプトを作成できるため、多くの医療機関でレセコンが導入され、現時点での普及率は9割を超えています。レセコンの効果は「手書きと比べ、はるかに作業が効率化する」と明確です。
一方、現在の診療所IT化の代表格といえる電子カルテはどうでしょうか。電子カルテを導入すると何が変わるのか。そのメリットがいまだ明確に説明できていないのが現状だといえます。
作業が大幅に効率化するレセコン、電子カルテを導入すると何が変わるのか
例えば、電子カルテ導入への期待の1つに「紙カルテをなくし、ペーパーレスを実現する」ことが挙げられます。しかし、実際には紙は完全にはなくならない場合が多いです。問診票や他院からの紹介状、患者が持ち込んだ検診結果などの紙は依然として残ります。
また、「カルテを出したり、搬送したりする手間が省ける」という効果についても、過去カルテが存在している期間は完全にはなくなりません。紙カルテと電子カルテを併用する必要があります。
さらに「待ち時間を短縮する」という効果についても、会計の待ち時間は短縮できるものの、診察の順番待ち自体がなくなることはありません。このように電子カルテを導入することによって期待できる効果は、いずれも決め手に欠けるように感じる診療所が多いようです。
電子カルテを使いこなせていない現実
「電子カルテを導入しても、レセコンやオーダリングとしてしか使っていない」という診療所があるという話を聞きます。電子カルテ操作の負担を軽減するために効果的な運用の1つである「医療クラーク(入力補助者)」の養成講座をメディプラザで開始してから、電子カルテ導入済みの診療所に訪問する機会が増えました。養成講座に参加される診療所の中には、当初医師が期待していたほど電子カルテを使いこなせていないため、それを改善したいと考えて受講されるケースがあります。電子カルテを導入した診療所の多くが、電子カルテの全機能の半分も使いこなせていないのかもしれません。
なぜ、電子カルテを使いこなせないのでしょうか。その原因の1つに、導入初期に操作を十分にマスターしないまま、何となく使い続けているケースが考えられます。電子カルテはあくまで効率化を目的とした「ツール」に過ぎません。それをうまく使いこなすためには、電子カルテの設定や日々のメンテナンスが重要になってきます。導入当初の電子カルテは現場の運用に合わせた設定になっていないことが多く、実際に使用しながら徐々に調整していくことが基本です。しかし、日々多忙な診療業務の中で見直しを行う時間が取れずに、当初の設定のまま運用している診療所が多いのが実情です。
診療科に合わせた運用構築が大切
「適切な電子カルテ運用は診療科ごとに異なる」ということが注目されてこなかった点も、電子カルテが使いこなせていない原因の1つに考えられます。診療科によって使用する医療機器や診療のワークフローは当然異なります。本来のワークフローに適した電子カルテを導入できれば問題ありませんが、従来は電子カルテに合わせてワークフローを変えているケースが多かったといえます。
診療所の基幹システムである電子カルテ。この部分をおろそかにしてしまうと、当然使いにくいと感じることになるでしょう。診療科に合わせて、電子カルテの運用構築を導入当初から設計することが大切です。
電子カルテを買い替えても運用を見直さなければ変わらない
電子カルテがどうしても使いづらかったり、サポートに不満があったりするなど、最近は5年経過後のリースアップに合わせて買い替えてしまう医療機関も増えてきました。その多くが「もっと使いやすい電子カルテに買い替えたい」という要望を持っていますが、新しい電子カルテに買い替えたとしても、運用自体を見直さなければ結局は同じことを繰り返すことになりかねません。電子カルテを使いこなすポイントは、この「適切な運用体制を構築する」ことにあるといえます。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
ITを活用した経営改善・業務効率化が実現できるショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医療機関のための製品導入事例紹介サイト「事例Plaza」
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