【連載コラム】医療ITの現場から
電子カルテ運用がもっと楽になる4つのヒント
電子カルテを導入した診療所の中には「うまく使いこなせない」「業務負荷が増えた」という不満の声が上がることもある。そうした状況の改善に役立つヒントを紹介する。
医療IT機器の常設総合展示場「メディプラザ」では、製品選定を過去にサポートした医療機関に対して、電子カルテをどのように活用しているかを定期的に確認しています。今回は、そこで得られた「電子カルテ運用が楽になるヒント」を紹介します。
1. 運用に合わせて、セットやテンプレートを見直す
多くの電子カルテには、「テンプレート」や「セット」などのさまざまな入力支援機能が備わっています。これらの機能は、電子カルテ導入時にベンダーのサポートを受けると、各医療機関の要望に合わせてカスタマイズしてもらえます。
しかし、導入時に作成されたテンプレートは、実際に利用した経験を踏まえて作成されたものではないため、しばらくすると「導入当初と運用が変わり、使いにくくなった」と感じることもあります。導入時点のままでテンプレートを使い続けることは難しいようです。せっかく作成したテンプレートを使わなくなるケースも少なくありません。
電子カルテを導入してみたものの、どうも使い勝手が悪いと思っているのであれば、ぜひテンプレートを見直しすることをお勧めします。実際、現状の運用に合わせたテンプレートに修正することで、驚くほど使いやすくなったという声を聞くこともあります。
2. 電子カルテの院内インストラクターを育てる
電子カルテ導入時の操作研修期間は、通常5日~1週間程度です。この間に操作方法を学習することになります。また、電子カルテの中には、ユーザー個別に操作手順や方法に設定できる機能もあります。操作研修期間では基本的な操作は覚えたものの、そうした設定機能までは十分に覚えきれないケースもあります。その結果、設定機能の使い方自体を忘れてしまい、電子カルテは一通り操作できても、より使いこなすための機能を十分に活用できない状態になります。
電子カルテは、運用に合わせて操作方法を設定することで、さらに使いやすくなります。これ設定機能を活用しないとでは、せっかく搭載されている役立つ機能を使いこなすのが難しくなります。院内で電子カルテ運用が変わる都度、操作方法を見直す仕組みを考える必要が出てきます。
そこで、PCの操作が得意な事務スタッフに設定機能の使い方を覚えてもらい、他のスタッフが分からなくなったときに、そのスタッフに教えてもらえる体制を構築することをお勧めしています。あたかも電子カルテベンダーのインストラクターが常駐しているような仕組みにすると、万が一トラブルが発生した場合でも適切に対応することが可能です。
3. 電子カルテ運用はスタッフも巻き込む
電子カルテを導入した医師からは、「電子カルテはスタッフばかり楽になって、自分は全く楽にならない」という苦情を聞くことがあります。詳しく話を聞いてみると、電子カルテは医師しか触ってはいけないという思い込みから、レセコン時代であれば事務スタッフに任せていた業務まで医師が行っていることが分かりました。このような状況では、医師の業務は増える一方で、電子カルテの導入効果は薄れてしまうでしょう。
逆に、医師だけでなくスタッフも電子カルテを操作する運用を行っている医療機関では、電子カルテに関する業務の負荷が分散することで、「電子カルテ導入前よりも楽になった」という声を聞きます。このことからも、導入当初の運用相談の段階からスタッフを巻き込むことで、“電子カルテは医師だけのもの”から“スタッフ全員のもの”という意識に変えることで、電子カルテのワークシェアリングが進むようになることが分かります。
4. 診療に集中するために医療クラークを活用する
また、「電子カルテを導入すると患者の顔があまり見られなくなった」「ワンパターンなカルテ記載内容が増えており、監査が心配だ」という声を聞きます。前者は電子カルテの操作に気を取られること、後者はカルテ入力時間の短縮を進め過ぎたことで起きる弊害だといえます。
患者満足度を高めながら、カルテの記載を充実したいというニーズは、多くの医療機関に見られます。これを満たす方法としては、医師の側に医療クラーク(医師などの事務作業を補助する専門職)を配置することが挙げられます。近年、医師や看護師の負担を軽減するために、病院を中心に医療クラークを配置する医療機関が増えてきており、この流れが診療所にも広がりつつあります。
メディプラザでは、2013年9月に「電子カルテ+クラーク養成講座」を開講し、医療クラークの育成に取り組んでいます。受講した診療所の医師からは「カルテ入力や紹介状の下書きなどを医療クラークが行うことで、多くの患者を診られるようになった」という感想も出ています。医師が全てを行うのではなく、スタッフに任せられる部分は思い切って権限委譲することで、本来の診療業務に集中できるようになるといえるでしょう。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
ITを活用した経営改善・業務効率化が実現できるショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医療機関のための製品導入事例紹介サイト「事例Plaza」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
3
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
4
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
5
クラウド資格コレクターは評価されない? 年収1000万を分ける“OSの理解度”
-
6
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
7
JSONをやめてPythonで送る トークン消費を約7割抑えるAIの設計
-
8
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
-
9
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
10
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー