電子カルテの導入評価は賛否両論、その理由とは?【連載コラム】医療ITの現場から

電子カルテを導入した医師の中には「もう紙カルテには戻れない」という声がある一方、「紙カルテに戻りたい」という意見もある。その違いは一体どこから来ているのだろうか?

2013年03月07日 08時00分 公開
[大西大輔,メディキャスト]

 前回「“導入効果の実感”の差が生みだす、電子カルテとレセコンの普及率の違い」では、電子カルテレセプトコンピュータの普及率に差がある理由を、費用対効果の観点で考察し、「『電子カルテは費用対効果の面で決め手に欠ける』と感じる医師が多いことが原因だ」と分析しました。

 最近、電子カルテを導入した医師から「電子カルテをもっと活用したい」という相談を多く受けます。「導入したものの、うまく使いこなせていないのでは」と考えているようです。どうすれば、導入効果を最大限発揮できるのか? 今回はその点について考えてみましょう。

電子カルテの導入で3つの制約を取り除く

 一般に「IT化に期待される効果は、“距離”“場所”“時間”の制約を取り除くことにある」といわれます。上記3点について、電子カルテ導入による効果を考えてみましょう。

 まず、距離の制約を取り除くこと。電子カルテを導入すると、病医院内でのカルテの移動が瞬時に行えるようになります。また、PCさえあれば診察室や検査室、処置室など場所を問わず、カルテを閲覧したり、入力したりできます。さらに在宅医療の現場では、ネットワークに接続していれば患者宅などの院外でもカルテの閲覧や入力が可能です。加えて、在宅医療で必要不可欠とされる「多職種多業種間の情報共有」にも効果的だと言えます。

 次に、場所の制約を取り除くこと。電子カルテを導入すると、カルテ保管庫が不要になります。新規開業のクリニックであれば、最初からカルテ保管庫のスペースを設けない場合もあります。最近、「カルテ庫のスペースが取れないから、電子カルテを導入したい」という声も多く出ています。また、既に開業しているクリニックでは、紙カルテから電子カルテに移行する過程でカルテ保管庫のスペースを徐々に縮小しているようです。

 最後に、時間の制約を取り除くこと。受付や会計に要する時間が短縮されることで患者だけではなく、受付スタッフも導入効果を実感できます。例えば、カルテをカルテ棚から探したり、外注検査の結果をカルテに貼ったりするなどの作業がなくなります。また、会計時にはカルテを見ながらレセコンに打ち込む作業が不要となり、レセプトチェック機能を活用することでレセプト点検業務の大幅な効率化が図れます。

電子カルテの評価は賛否両論、それはなぜ?

 電子カルテを導入した医師から「電子カルテを使い始めたら、紙カルテには戻れない」という声を聞きます。一方で「電子カルテは入力が面倒だから紙カルテに戻りたい」という意見もあります。実際の現場で確認すると、こうした評価の違いを「ああ、なるほど」と感じます。それは「電子カルテをより使いこなせるように工夫しているかどうか」にあるようです(関連記事:電子カルテにまつわる幾つかの誤解)。

1. PC操作が苦手な医師は、多様なデバイスの検討を

 PC操作が苦手な医師にとって、電子カルテのキーボードやマウスによる入力操作に慣れるのは難しいのかもしれません。そうした医師からは「紙カルテと同じ操作性で入力したい」という声が出ています。そこで生まれたのが、ペンタブレットやタッチパネルなどの入力形式を取る電子カルテです。これらを採用すれば、キーボードやマウスによる入力操作から解放されます。また、現在の音声入力ソフトは認識機能や医療辞書の機能が著しく向上しており、その活用を見直す声も出てきています。

2. タブレット端末を活用すれば効率化が図れる

 診療現場では「○○しながらカルテに記載する」というケースが多く見受けられます。そこで有効なのが、スマートフォンやタブレット端末の活用です。現在広く普及しているこれらの端末は、直感的な操作を実現しています。また、持ち運びが簡単です。さらに、患者自身が問診入力する際にも利用されるなど、医師や看護師などの業務負荷の軽減や診療の効率化にも役立っています。

3. 電子カルテと比較して紙媒体の利便性が高ければ、残しても問題ない

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