重要なのは文化と技術
一度は失敗、ある古着販売業者がたどり着いた「データ駆動型経営」の全て
多くの企業は、データ駆動型の経営を行いたいと口をそろえていう。そこにたどり着くまでの道のりは決して平たんなものではないが、ある小売業者は、包括的なアプローチによってその目的を達成することに成功した。
米サンフランシスコに本社を置くthredUPはオンラインの古着販売業者だ。thredUPの商品マネジャーは、最近、同社の供給範囲における商品の動きを知りたいと考えた。商品の受取/査定/梱包/発送という流れにどれほど時間が必要なのかを個人的に調査したが、この調査を行うのに、より良い方法があった。
thredUPの財務/企画/分析部門の部長を務めるアル・ゴーライ氏は、商品マネジャーに、商品の動きはデータから全て追跡できることを伝えた。thredUPでは、商品に関する全ての情報を記録している。これには商品の入荷時から販売時までの情報が含まれる。データを追跡することで、thredUPは業務のあらゆる側面を詳しく調査できるようになった。このようなデータ駆動型の文化は現場作業者に受け入れられ始めている。
「従業員の業務に役立つデータの価値を伝えられれば、成功したも同然だ」(ゴーライ氏)
生半可ではないデータ駆動型への移行
データとデータを理解する能力は差別化要素となる。そのため、データ駆動型の企業であることは、これまでになく重要になっている。英Economistが2015年1月に実施した調査によると、勤務先が「データ駆動」だと述べた回答者の59%は自社の利益が競合他社を上回っていると答えている。一方、勤務先がデータ駆動ではないと述べた回答者のうち自社の利益が競合他社を上回っていると答えたのは40%だった。
意思決定プロセスにデータが占める割合を増やすのは単純なことであるように思えるかもしれない。だが、thredUPにとってそれは生半可なことではなかった。同社は古着の販売業者だ。主に扱うのは1点物の商品でそれぞれ追跡番号が付いている。そのため商品売買の記録と分析は大掛かりな作業になる。
この課題を克服するため、thredUPは一対の米Oracleの「MySQL」データベースを活用して全商品のデータを保存している。さらに、米サンタクルズに本社を置くLooker Data Sciencesが開発したセルフサービスBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを追加で使用している。業務の全領域に携わる従業員がツールにアクセスできるようにしたことで、thredUPはさらにデータ駆動型の企業へと変化した。
ゴーライ氏によると、thredUPは以下の業務領域でBIツールを使ったデータ分析を活用しているという。
- 流通センター:衣類の搬入と発送の管理
- 商品チーム:人気の衣類とその価格決定方法の把握
- マーケティングチーム:顧客を理解して対象を絞った販売キャンペーンの企画
- 経営陣:この全ての活動の監視
だがthredUPでは、いつでもデータにアクセスできるわけではなかった。ゴーライ氏によると、同社がBIツールを導入したのは2012年のことだという。それ以前、データのクエリは1回限りのプロジェクトとして開発されており、開発チームの負担になっていた。そのため、従業員の大半はデータについて質問しづらいか、質問することができなかった。
thredUPがセルフサービス型のツールを導入したことで、全従業員が確実にデータにアクセスできるようになったとゴーライ氏は語る。多くの企業は、トップダウンまたはボトムアップのいずれかの方式で、データ駆動型の文化の構築に着手している。だが、thredUPは最初から全員が参加するアプローチを選んだ。
ただし、全従業員から賛同が得られたスムーズなプロセスだったわけではない。「データ駆動型のツールを使用することに対して他の従業員より関心が低い従業員もいる。また、私たちのチームが作成するリポートのうち、多くの従業員に受け入れられるものはごく一部だ」とゴーライ氏はいう。だが上述の商品マネジャーの事例のように、何かが上手くかみ合えば、ツールによってプロセスを改善することはできる。重要なのは興味を持った従業員がツールを使えるようにすることだ。また、データが業務に適切なものであることも重要になる。
「データが増えると、質問する人も増える。そして、データをさらに掘り下げることが可能になる。データ駆動型のツールを用意し、従業員がツールを使う価値を見いだせれば、自ずとツールを使うようになるだろう」(ゴーライ氏)
現場で働く従業員がBIツールに賛同するには上層部がBIツールを使う必要があるという定説がある。ゴーライ氏は、この社会通念をある程度認めている。だが、これだけでは十分とはいえない。誰でもツールを使えるようにし、興味を持った従業員を支援することも重要になる。
「データ駆動型の文化を構築することは、企業が近代市場でチャンスをものにする一助となる。多くの分析を推進する鍵となるのは、自分たちのビジネスを理解することだ。必要なのは、どこに収益の機会があるかを素早く特定できる力だ。そのためにも、当社はデータ駆動型でなければならない」(ゴーライ氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
6
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
7
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
8
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
9
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
10
「IT運用・情報システム業務」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
3
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
4
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
5
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
6
SASE選定は「見極め力」で大きな差――本当に必要な製品を選ぶための6つの視点
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
9
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー