データに対する疑念を払拭するには
“トップの意見”を優先する経営陣にデータ分析チームができること
データ分析はほんのわずかな誤りから経営陣の信用を失ってしまうこともある。それに対し、企業のデータ分析チームはどのようなアプローチを取るべきなのか。そのポイントを解説する。
全米プロバスケットボール協会(NBA)の元選手で現在はバスケットボール解説者をしているチャールズ・バークレー氏は、アナリティクス(データ分析)に関する自らの見解を明らかにした。NBAチームのヒューストン・ロケッツでゼネラルマネジャーを務めるダリル・モリー氏は、データに基づいて選手の状況を判断することが多いと主張する人物だが、バークレー氏は「データ分析を盲信する人の1人だ」と同氏を評した。
データ分析の有効性に関して、このような見方をしているのはバークレー氏に限ったことではない。米ボストンで2015年2月に開催されたスポーツ分析に関するカンファレンス「MIT Sloan Sports Analytics Conference」では、データ分析を“信じる”かどうかについて、多くの議論が交わされた。米ESPN SportsCenterでキャスターを務めるジョン・アンダーソン氏は、「私はデータ分析の力を信じている。皆さんにも考えをあらためてほしい」と数回にわたって発言していた。
筆者は、データ分析が“信じる”“信じない”の対象になるものだと認識していなかった。データ分析手法の正当性については、何百年もの間に議論され数え切れないほど証明されてきた。今もなお議論されているのは奇妙な話である。
だが、先述の意見や主張から見えてくるのは、世間一般がデータ分析を信仰の必要な魔法のようなものとして理解しているということだ。そして、データ分析への理解を広めるため、データサイエンティストにはどれほどの努力が求められているかということである。
経営幹部レベルで生まれる疑念
データ分析のトレンドに困惑しているのはスポーツ業界だけではない。企業のデータ分析チームは、自分たちの行っている分析業務が意思決定プロセスの数ある要素の1つとしか見なされていない状況について、不満を持っていることも珍しくない。企業の経営陣は、純粋にデータに基づいて判断を下すのではなく、いまだに“トップの意見”を優先する傾向にある。
また、データ分析が1つでも失敗すると、それだけで一部の経営陣はデータ分析を信用しなくなる。だが、データ分析に失敗は付き物である。最高のデータ分析チームでも100%正確な分析を行えるわけではない。データに基づく判断が目標としているのは、直感よりも判断の正答率を上げるということにすぎない。しかし、ある予測モデルが75%の確率で正しい判断を下していても、残りの25%によって社内で不信感を招く恐れがあるのだ。
データ分析の取り組みで鍵を握るのは、経営陣による支援を得ることである。データ分析に対する経営陣の理解を高めることができれば、より多くの支援を受けられるかもしれない。そのためには、まず分析結果を効果的に表現する必要がある。意思決定者に対しては、「このようなデータがあるから、この戦略が適切だ」と伝えるのではなく、その戦略をデータがどのように裏付けるかを説明しなければならない。
米ラスベガスで2015年2月に開催された経営幹部向けのサミット「TDWI Executive Summit」では、米Archipelago Information Strategiesで業務執行役員を務めるマイク・ランパ氏が“データジャーナリスト”の必要性を訴えた。データジャーナリストとは、データ分析の考え方を理解しながらも、コミュニケーションを主な技能とする職種である。データサイエンティストには、分析に対する高い説明能力が求められているとは限らない。
データの限界を認める
データ分析チームは、分析結果に限界があることを認めなければならない。ある予測モデルが定量的に間違える可能性を経営陣が最初から理解していれば、予測モデルによる提案が適切でなかったときに与える失望感は軽くなる。
データセットには偏りや限界があると認めることも重要だ。基礎となるデータ分析手法には欠陥がないように思えるかもしれない。だが、データセットの状態によって、分析精度が制限される可能性はある。そうした要素は必ずしも議論されるとは限らない。あらかじめデータ分析の限界について説明することで、経営陣との間に信頼関係を築きやすくなり、分析が失敗に終わったときの防衛手段となる可能性がある。
昨今、データサイエンティストには多くのことが求められている。その職務資格にさらに1つ追加する時期がきているのかもしれない。それは教育者の資格だ。一般の人たちの多くがデータ分析についてそれほどよく理解していないのが実情だ。データサイエンティストは自分たちの仕事に価値がある理由を確実に理解してもらうために、さら取り組む必要がある。そこに選択肢はない。
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