バックアップ回線は「眠っている回線」というイメージが強いが、各キャリアでは通常時も情報系トラフィックの伝送路として利活用する動きにある。バックアップ回線を有効に生かせる各社のサービスを紹介する。
前回の記事「第二の回線で作る『止まらないネットワーク』」は、ネットワーク継続性の観点から「止まらないネットワーク」を構築する必要性や、バックアップ回線による耐障害対策の基本について説明した。最近では、企業ニーズに照準を合わせた有用なバックアップ回線用サービスが、大手通信事業者のメニューとして出そろってきた。以下、NTTコミュニケーションズ、NTT東西、KDDI、ソフトバンクテレコムの4社について、具体的なサービスを見ていこう。
NTTコミュニケーションズが提供するWANサービスには、広域イーサネットの「e-VLAN」、標準的なIP-VPNの「Arcstar IP-VPN」、安価なブロードバンド回線を使用したエントリーVPNの「Group-VPN」、OCN回線を利用したインターネットVPNの「OCN VPN」などがある。これらのサービスを必要に応じて組み合わせることで、信頼性とコストのバランスを重視したバックアップソリューションを実現することが可能だ。
前回取り上げた「キャリアダイバシティ」は、ネットワークの信頼性を高めるために、異なる通信事業者のWANサービスを組み合わせて物理的に異なる経路でネットワークを構成する方法である。この方法はバックアップ回線の信頼性を高められる一方で、運用管理が一元化できず、余分なコストが掛かってしまうなどの課題があった。そこで、これらの課題を解決するために、大手通信事業者1社だけでもキャリアダイバシティ相当の信頼性が得られるサービスも用意されている。例えば、NTTコミュニケーションズのサービスであれば、Arcstar IP-VPN網と、旧CWC(クロスウェイブコミュニケーションズ)のバックボーンを持つe-VLANを組み合わせることで、信頼性の高いネットワークを構築できる。
さらに、コスト面や効率面を重視したい場合にお勧めのサービスが「Dual Active VPN」だ。バックアップ回線というと、普段は眠っている無駄な回線というイメージが強い。しかし、このサービスはバックアップ専用の回線を導入するのではなく、トラフィックの性質に応じて、高信頼のVPNと低コストのエントリーVPNとを使い分ける。2つのVPNサービスを常時アクティブに稼働させることで、緊急時にバックアップ回線となるエントリーVPNも有効利用しようというアイデアだ。
具体的には、信頼性や品質が要求される基幹系通信にはIP-VPNとしてArcstar IP-VPNを、低コストで大容量を重視する情報系通信にはエントリーVPNのGroup-VPNを利用するという形態を取っている。エントリーVPNの詳細については、特集記事「中堅・中小企業に効くエントリーVPN導入」で解説しているので割愛するが、月額料金が1契約当たり数千円〜2万円と安価なランニングコストで、IP-VPNのように事業者網を利用して拠点間を安全に接続できる。この回線サービスを利用して両系統をマネージドルータで同時運用し、Arcstar IP-VPNが利用できなくなった際に、基幹系通信を自動的に情報系通信側のGroup-VPNへ切り替えてバックアップする仕組みだ(図1)。ネットワーク全体の信頼性を高めながら帯域を有効活用できる一石二鳥のソリューションといえる。
また、Group-VPNのバックアップメニューとして「Group-VPN Plus」を選択すれば、足回り回線の二重化も可能だ。このサービスは、Group-VPNを利用中に、足回りとなるフレッツ網などのメイン回線に障害が発生すると、バックアップ回線に自動的に切り替えてくれるというもの。バックアップへの切り替え機能を備えたルータをレンタルで提供し、運用・保守までサポートしている。選択できる回線は、フレッツ・ISDN、ACCA ADSLなどがあり、拠点当たり月額2万円程度からと、こちらも安価かつ容易に冗長化を図れる。足回りにACCA ADSLを利用すればキャリア分散にもなり、さらに信頼性も高まるだろう。この場合もNTTコミュニケーションズがすべて窓口として一括して対応してくれる。
さらにGroup-VPN Plusは「デュアルセッションタイプ」もサポートしている。これは、Group-VPN網とNTT東日本・西日本のフレッツ網との接続ポイントが通信断となった際に、あらかじめ設定してある別の常時PPPoE(PPP over Ethernet)セッションに自動的に切り替えることでバックアップ対応が可能になるサービスだ。この場合は、アクセス回線はフレッツ回線を1回線だけ用意すればよい。ただし、当然ながら回線自体は二重化されているわけでないため、同じ地域IP網で発生した障害には対処できないことを考慮しておきたい。
次世代生成AIで優位に立つのはMeta? Google? それともマスク氏のあの会社?
生成AI時代において、データは新たな金と言える。より人間らしい反応ができるようになる...
GoogleからTikTokへ 「検索」の主役が交代する日(無料eBook)
若年層はGoogle検索ではなくTikTokやInstagramを使って商品を探す傾向が強まっているとい...
B2B企業の市場開拓で検討すべきプロセスを定義 デジタルマーケティング研究機構がモデル公開
日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構は、B2B企業が新製品やサービ...