1990年代半ば、組み込み向けプロセッサの出荷台数トップの座を獲得したMIPS。当初はワークステーション用CPUだったことをご存じだろうか? 今回は、MIPSの変遷と今後の戦略について紹介する。
1997年、MIPS(Microprocessor without Interlocked Pipeline Stages)ベースのCPUの出荷個数がMotorola製CPU「68000」系を抜き、世界で最も利用されている組み込み向けプロセッサの座を獲得した。MIPSプロセッサはデジタルTVやDVDレコーダー、ネットワーク機器、プリンタなどの組み込み機器で広く利用されている。身近な例としては、米MIPS Technologiesの「R4000」コアプロセッサを2つ内蔵した、ソニーの携帯ゲーム端末「PSP(プレイステーションポータブル)」が挙げられる。
今回は、前回の「ARMアーキテクチャはどのように進化してきたのか?」に続き、長らく組み込み向けプロセッサとして利用されているMIPSアーキテクチャを取り上げる。
まずは、MIPSアーキテクチャの誕生からこれまでの変遷を振り返ってみよう。MIPSの開発は、現在のStanford大学の経営責任者であるジョン・L・ヘネシー(John L. Hennessy)博士が率いて1981年から開始された「MIPSプロジェクト」に起因する。
1980年代といえば、CISC対RISCの性能論争が激しく行われていた時期で、ヘネシー氏が1984年に設立した米MIPS Computer Systemsが製造した「R2000」やその後継製品「R3000」が代表的なRISCプロセッサとして広く利用された。しかし、R2000、R3000のどちらも、RISCということ以外に特別なアドバンテージがあったわけではなく、アーキテクチャは単純なものだった。また、当時の主なターゲットはワークステーション市場で、特にR3000は多くのメーカーのワークステーションに幅広く利用されていた。
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