開発プロセスや成果物の標準化、そのドキュメント作成に関わった経験があるだろう。しかし、それらは今どうなっているのか? 書棚の奥でホコリまみれになり、その存在自体が忘れ去られていたりしないだろうか。
企業や組織がプロジェクトの品質を向上させるためには、プロセスや成果物などの「標準化」を行うことが有効である。個々の担当者の進め方に依存していては、品質が安定しないばかりか、情報やノウハウの共有が難しくなる。そこで、ソフトウェア開発のためのベストプラクティスをベースに、ドキュメントなどの開発標準を整備し、プロセスや成果物を統一化することで品質の向上を図るのである。
しかし、その標準が開発現場で有効活用されているとはいえない組織も多いだろう。今回は、標準化にありがちな「使われない開発標準」の利用環境を整備することで、開発現場での利用を促進し、さらに継続的な改善活動につなげた事例を紹介する。
K社は、製造業や金融業など幅広い業界のシステム開発を受託開発する中堅SIベンダーである。メインフレームやオープンシステムなど幅広いソリューションを取り扱っている。K社では、メインフレームの開発については、メーカーが提供するマニュアルをベースとして十数年前から開発標準が整備され、これらの資料に基づいた開発が行われている。このため開発者が組織を異動しても、開発プロセスや成果物に関して一定の品質を保つことができている。
一方、オープンシステムの開発現場では、メインフレームのようには開発標準が利用されていない。オープン系の開発標準はメインフレームのものをベースに策定されているが、開発現場ではほとんど使われていなかった。プロセスや成果物は各プロジェクトで自由に定められているのが実情であった。
このようにK社では、プロジェクトマネジャーおよびメンバーのスキルや経験によって品質が左右される危険性があり、開発標準の利用促進が課題として認識されていた。
K社では、標準が利用されない理由を探るため、品質管理部門が中心となって、以下の項目に関するアンケートを開発現場に対して実施した。
・開発標準を(一部でも)プロジェクトに適用したことがあるか
・開発標準を利用しない理由は何か?
その結果、オープン系の開発エンジニア240人から回答を得た。
アンケートの結果によると、オープン系の開発標準は全体の76%が利用しておらず、その理由として「存在を知らない」「適用方法が分からない」「使い勝手が悪い」など利用方法に関するものが63%、「現場の業務実態と乖離(かいり)している」「品質が低い」など開発標準の内容に関するものが18%となっていた。
この結果から、K社の開発標準は内容に関する問題以前に、利用方法やその利便性が悪く「利用しないのではなく、利用できない状況にある」ことが分かった。
また、開発現場のリーダーにさらに尋ねてみると、以下のような理由を挙げた。
この調査結果を基に、品質管理部門では「標準の利用促進が必要である」と考え、「標準化推進チーム」を組織した。
標準化推進チームは、当面の目標として「文書構造の簡素化」「利便性の向上」を設定した。「膨大な文書を読まなくても全体から部分へ把握しやすい構造にしたり、開発標準の使い勝手を改善し必要な部分を引き出しやすくしたりする」という取り組みを開始した。
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