自社に適したRIA開発のための製品選定ポイントエンタープライズRIA開発の最新動向 第2回

今回は、RIAという言葉が誕生する前から企業向けWebアプリケーション開発製品を提供してきたソフトウェアベンダー4社に、自社のRIA製品の特長や用途、今後の戦略について話を聞いた。

2009年05月13日 08時00分 公開
[吉田育代]

 今回は、企業向けに特化したリッチクライアントRIA開発製品を提供してきたソフトウェアベンダー4社を紹介する。各社は、自社製品の強みと実績を生かしたソリューションを提供するとともに、新たな分野への展開を図ることでエンタープライズRIA市場でのシェア拡大を目指している。

サーバとの柔軟な組み合わせを可能にする ―アクシスソフトの場合―

 アクシスソフトのセールス&マーケティング本部マーケティング部部長の西村 修氏は、「データ入力作業のように、システムユーザーの指の動きがそのまま企業の生産性に直結するような場面には、Webアプリケーションは適さない」と指摘する。その一方で同社は「ネットワークに接続していれば、どこでもアプリケーションを動かすことができる」というWebアプリケーションならではのメリットも理解しているという。

photo アクシスソフトの西村氏

 そのため、こうしたメリットを享受しつつ、業務生産性を低下させないシステムを構築するために開発したのが同社のRIA製品「Biz/Browser」だったという。

 Biz/Browserは、純国産の業務システムのフロントエンド構築ツールとして1999年に発表され、主に基幹業務システムを中心として国内670社以上の企業に採用されてきた。Windowsクライアント環境に特化しており、Windows 98からWindows VistaまでのOSに対応する。

 Biz/Browserは、同社が独自開発したスクリプト言語「CRS(Chain Reflection Script)」で記述されたクライアントソフトを解釈して実行する言語処理プログラムだ。CRSファイルは、同社が提供する統合開発環境「Biz/Designer」で開発する。Biz/Designerでは、画面の構成および属性の定義を設定する支援機能を利用してコーディングすることなく画面レイアウトを設計でき、ロジック部分のみをコードで記述する。

 CRS自体はJavaScriptに似ており、JavaScriptを理解しているエンジニアであれば習得しやすいという。そのため「開発の生産性は高い」と西村氏は語る。

 また、Biz/Browserでは、Webサーバやサーバ側の開発言語の種類を問わず柔軟なサーバ構成を取ることができ、サーバ側のビジネスロジックやデータベース(DB)部分と疎結合したシステム形態によって「既存の基幹システムの寿命を延ばすこともできる」(西村氏)。

photo アクシスソフトのRIA環境。クライアントPCから、サーバ側に配置されている画面や帳票レイアウトなどの情報を持つCRSファイルをダウンロードする。クライアント側でこのCRSファイルをコンパイルしてキャッシュし、動的なデータのみを必要に応じてサーバ側のプログラムを呼び出して取得する

 実際に、Biz/Browserで構築した交通費精算アプリケーションのデモを見た。文字列を挿入する部分に全角文字での記入を促したり、[Enter]キーで次の記入項目へカーソルを移動させたり、カンマを入れた金額の自動表示ができるなど、ユーザーのデータ入力を支援する機能が盛り込まれている。64Kbpsのモバイルアクセス環境だったが、スムーズに動いていた。

photo Biz/Browserで構築した交通費精算画面《クリックで拡大》

 アクシスソフトは2009年4月、モバイル端末向け開発環境「Biz/Browser Mobile」のラインアップとして「SHARP RZ-H220」に対応した製品の販売を開始した。また、SaaS(Software as a Service)型モデルでの提供、スマートフォンや工場利用を想定したハンディターミナルなどへの展開にも意欲を見せている。

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