Netbookの勢いが止まらない。その要因には「Intel Atom」などの低消費電力/低価格なCPUの存在がある。Intelとx86互換ベンダーとの組み込み分野での攻防は、今後どうなるのだろうか?
2008年3月、米Intelが新プロセッサAtomの発表会で提唱した「Netbook」。Netbookは「インターネットの利用に特化した低価格の携帯端末」と定義されており、呼称は異なるが「UMPC(Ultra Mobile PC)」や「ミニノートPC」なども同様のジャンルといえる。
調査会社IDC Japanが2009年2月に発表した「2008年第4四半期国内PC市場速報」によると、Netbookを含めた低価格PCの販売台数は40万台(前年同期比24.7%増)を超え、国内のPC市場をけん引しているという。
Netbookが低価格を実現した要因には、低消費電力かつ低価格なCPUの存在がある。NetbookにはIntelのAtomやVIA Technologies(以下、VIA)の「VIA Nano」などx86系プロセッサが多く搭載されている。
前回「Intelとx86互換ベンダーとの『追いかけっこ』はいつまで続くのか?」では、組み込み市場でのx86ベンダーの攻防において、単に高性能の製品を供給することだけが市場で生き残る戦略ではないと解説した。
今回は、Netbookにも搭載されている低消費電力/低価格なCPUの誕生から、x86ベンダー各社の同市場における現状と今後の展開を考察する。
低消費電力CPUの開発には「行き過ぎた性能競争の反動」とも取れるいきさつがある。まずはこの点について、2000年以降の主要なx86プロセッサベンダーの製品ラインアップを交えて解説していく。
AMDは2000年、従来のK6世代の頭打ちになった性能を解決するために、K7コア製品ファミリー「Athlon」を発表した。Athlonは、Intelの「Katmai/Coppermine」と同時期に発表され、発表当初はモジュール型のCPUカートリッジで供給されていた。同一の周波数ならばPentium II/IIIを上回る性能を出した。
一方、IntelはAthlonに対抗して、メインストリームのPC向けに「Pentium 4」を2000年に投入する。Pentium 4は、同一周波数での性能はPentium IIIより落ちるが、Pentium IIIの2倍の動作周波数で動作する“高回転型エンジンのようなアーキテクチャ”を採用した。同社はこのアーキテクチャを維持しながらプロセスの微細化を進めたが、消費電力の非常に大きい製品になってしまう。
その結果、同社はPentium 4の第3世代「Prescott」に続いて投入する予定だった第4世代「Tejas」コアをキャンセルする。Intelは後継製品が完成するまで、2つのCPUダイをMCM(マルチチップモジュール)で1つのパッケージに収めた「Pentium D」を投入して急場をしのぐことになる。
AMDは、K7コアの微細化・高速化をさらに進めていたが、Pentium 4が最大で3.8GHzまで動作周波数を引き上げたのに対し、K7では2.2GHzまで引き上げるのが限界だった。これを受け、AMDは「K8」世代と呼ばれるコアを2003年に開発する。
K8はメモリコントローラーをオンチップで搭載し、x86命令の64ビット拡張を施し、プロセスにはSOI(Silicon on Insulator)を採用した。同社は、このSOIのプロセス成熟にトラブルを抱えてしまうが、Intelと異なり、1つのダイに2つのCPUコアが搭載された“ネイティブのデュアルコア製品”をPentium Dに遅れることなく投入するなどして、性能競争に踏みとどまる。
ただ、こうした競争はPCの性能を大幅に引き上げることには貢献したが、CPU単体での消費電力が従来のシステム全体の消費電力を超えるような製品が登場したため、電力供給や放熱の面を配慮する必要が出てきた。
その結果、電源ユニットベンダーは、より大きな電力を供給する製品を開発するようになり、またIntelやAMDなどのベンダーは、より効果的な熱設計モデルの構築を目指した。こうして熱設計の技術が大幅に進歩し、巡り巡って組み込み向けの低消費電力CPUの開発へとつながった。
しかし、各社がすぐに組み込み向けに低消費電力CPU製品を投入することはなかった。最初に動きを見せたのは、やはりIntelだった。
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