VSSを構成する3つの要素
Hyper-Vのバックアップ戦略の鍵を握るVSS
Hyper-Vユーザーがデータのバックアップで抱えている厄介な問題は、VMwareユーザーと共通している。本稿ではHyper-Vのバックアップ戦略について見ていく。
米MicrosoftのHyper-Vユーザーはバックアップとリカバリに関して、米VMwareのユーザーと共通の難題を抱えている。それは、バックアップ作業でリソースが大量に消費されてしまうことだ。20台程度の物理サーバを仮想化し、1台の物理サーバに集約した場合、多くのアプリケーションは快調に動くが、そうでないアプリケーションが1つある。それがデータバックアップだ。バックアップは非常にI/O負荷の高い処理であり、サーバのCPU、メモリ、I/Oリソースを酷使する。このため、数台の仮想マシン(VM)を一度にバックアップすると、リソース不足によるトラブルが発生しがちだ。
こうしたVMのバックアップを適切に行うコツの1つは、VMのレベルではなく、Hyper-Vのレベルでバックアップを行うことだ。Hyper-Vのレベルで動作するバックアップアプリケーションは、Hyper-Vのアーキテクチャを認識し、それに合わせて振る舞う。
Hyper-VのバックアップとVSS
Hyper-Vレベルでのバックアップで厄介なのは、VMの仮想HDD上のファイルシステムに絶えず変更が加えられており、そのファイルシステムを静止状態にしてバックアップを行わなければならないことだ。幸い、Microsoftは自社製品にこの問題に対処するためのフレームワークであるVSS(Volume Shadow Copy Service)を組み込んでいる。VSSにより、VMの仮想HDDの仮想スナップショットを作成し、バックアップシステムのためにシステムのバックアップに必要となる変更のない安定したファイルシステム状態を用意できる。
VSSシステムには3つの構成要素がある。リクエスター、プロバイダー、ライターだ。リクエスターは、スナップショットの作成を要求するバックアップアプリケーションを指す。プロバイダーはスナップショットを作成する。基本的なシステムでは、プロバイダーはWindows自体だが、大規模システムではVSSとやりとりするストレージシステムである場合がある。そしてもう1つの要素として、VSSでサポートしたいアプリケーションごとに専用のVSSライターが必要になる。VSSライターは、スナップショットの作成時にアプリケーションを静止する。
例えば、SQL ServerのVSSライターは、スナップショット作成前にSQL Serverデータベースを特殊なモードに移行させる。スナップショットがバックアップされると、リクエスターはVSSライターにバックアップが成功したことを伝える。VSSライターは、SQL Serverのトランザクションログが満杯にならないように、バックアップされた時点までのログを切り捨てる。
VSSのこうした多層アーキテクチャのおかげで、リクエスターとなるバックアップアプリケーションは、VSSとやりとりする方法さえ理解していれば、バックアップ対象アプリケーションを管理し、バックアップできる。バックアップアプリケーションと対象アプリケーションのインタフェースを作成する必要はない。実際、Hyper-Vは、VSSで管理できるWindowsアプリケーションの1つにすぎない。バックアップアプリケーションがHyper-Vをバックアップしたい場合、Hyper-Vが稼働するWindowsサーバ上のVSSインフラにその要求を送るだけでよい。要求を送ると、バックアップアプリケーションはVSSリクエスターとして「Hyper-V VSSライターが存在しており、これと通信する必要がある」ことを知らされる。
Hyper-V VSSライターはバックアップの作成を要求されると、Hyper-V上の各仮想マシン(VM)内のVSSシステムに対するリクエスターになる。Hyper-V VSSライターはこのリクエスターとして、各VM内にどのようなライターがあるかを発見し、適切な作業を行うようそれらに指示し、各VM内にスナップショットを作成する。このプロセスが全て完了すると、Hyper-Vの仮想ディスクイメージを含むボリュームについて、スナップショットが作成可能になる。このスナップショットが作成されると、VSSはバックアップアプリケーションに、そのスナップショットをバックアップするよう促す。
Hyper-Vのバックアップに不可欠な他の技術:レプリケーション、CDP、Near-CDP
バックアップアプリケーションとVSSを組み合わせて利用することは、仮想マシンのバックアップに伴うリソースの大量消費という問題の解決策としては不十分だ。永久増分方式のバックアップ技術も採用する必要がある。フルバックアップは、頻度がいかに少なくても、Hyper-Vとその上のVMのI/Oに大きな負荷を掛けてしまう。このため、永久増分バックアップ技術を搭載するバックアップ製品の利用を真剣に考えなければならない。この技術の例としては、レプリケーション、CDP(Continuous data protection:継続的データ保護)、Near-CDPがある。
また、VM全体と、VM内の個々のファイルの両方をリカバリできる機能も考慮に入れるべきだ。どちらのリカバリシナリオも非常に一般的であるため、イメージレベルとファイルレベルの両方のリストアをサポートするバックアップ製品を使うようにするとよい。
Hyper-Vのバックアップ戦略の観点からバックアップ製品に求めるべき最も重要な機能は、VSSとの完全な統合だ。この機能を基準に製品をより分けたら、次は、永久増分バックアップ機能に加え、個々のファイルとVM全体をリカバリする機能を持っているかどうかでふるいにかける。これらの機能を併せ持つ製品を候補として残したら、後は価格を比較検討するだけだ。成功を祈る。
本稿筆者のW. カーティス・プレストン氏(“ミスターバックアップ”のニックネームも持つ)は、独立系のバックアップ専門家。15年以上にわたってデータバックアップ・リカバリ分野を専門に手掛けてきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
3
「OSの選定・導入」に関するアンケート
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
「コピペ運用の限界」に直面するAI活用 7割超が“別画面”のまま使う理由は?
-
6
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
7
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
8
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
9
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
-
10
エンジニアの4分の3が転職で年収増 doda調査に見る「もうかる転職」の条件
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー