Oracle VM 3.0は、VMware vSphere 5の4倍に相当する128基の仮想CPUと、1Tバイトのメモリをサポートするなど大幅な機能拡張を図った。だが、同製品へのユーザーの猜疑心は強い。今後シェアを広げる可能性あるのか。
米Oracleは2011年8月23日、サーバ仮想化ソフトウェア「Oracle VM」のバージョン3.0を発表し、大幅な機能強化を明らかにしたが、ユーザーはまだ同ソフトを主要なハイパーバイザーとして採用する気にはならないようだ。
Oracle VM 3.0は、「VMware vSphere 5」の4倍に相当する128基の仮想CPUと、VMware vSphere 5に匹敵する1Tバイトのメモリをサポートする。費用面でも遜色なく、オープンソースのXenを基盤とするOracle VMは無償でダウンロードできる。また、サポートはサブスクリプション方式で、使用する機能やリソースではなく、サーバ数を基に課金される。さらに、ハードウェアサポート契約にも仮想化サポートが含まれている。
バージョン3.0では、2009年に買収した米Virtual Ironの技術などを利用して、Webブラウザベースの管理インタフェース「VM Manager」が刷新された。新しいVM Managerでは、利用可能なCPUリソースやネットワークリソースに関するポリシーに基づき、仮想マシン(VM)のライブマイグレーションを実行できるため、高可用性(HA)を強化できる。また、動的なサーバ電源管理やネットワークの一元管理が実現される他、ブリッジ、バインド、仮想LANのセットアップも可能になる見込みだ。
Oracleは、「Storage Connect」というパートナープログラムも発表している。このプログラムに参加すると、ストレージベンダーは、クローンやスナップショットなどのストレージアレイ機能を管理するためのVM Manager用プラグインを開発できる。同プログラムの最初のパートナーには、米NetApp、Hitachi Data Systems、富士通、Oracle自体(買収したPillar Data SystemsとSun Microsystemsのハードウェアで採用)が名を連ねている。
市場シェアからすると、Oracle VMの先は遠い。同製品は市場シェアが小さ過ぎて、米IDCの公式の調査では追跡されていないほどだ。米TechTargetが実施した仮想化導入に関するアンケートによると、346人の回答者のうちOracle VMがメインの仮想化プラットフォームであると答えたのは1人だけだ。また、オープンソースのXen(Oracle VMの基盤テクノロジー)は、KVMに押され、Linuxコミュニティーでの人気に陰りが出ている(参考:LinuxカーネルのXenサポートで、Xenのシェアは広がるか)。
実際、サーバ仮想化に関してOracleが最近話題になったのは、Oracle VMの機能強化よりも、同社のサポートポリシーに関してだ。このサードパーティーのハイパーバイザーをめぐるポリシーにユーザーは憤慨している(参考:VMware vSphere 4.1をめぐるOracleのライセンス方式に憤るユーザー)。
このポリシーのために、一部のユーザーはOracle Databaseの仮想化を全面的に避けている。
Fortune 15にランクされる医薬品販売・医療ソフトウェア分野のある大企業で仮想化を担当するエリアコーディネーターのウェイン・ゲイトマン氏は「頭ごなしに特定の製品を使用するように言われ、それに従わなければサポートが受けられないことを喜ぶユーザーなどいない」と話す。ゲイトマン氏は会社がOracleを仮想化するとしても、「VMware vSphereがあるし、複数の仮想化ソフトウェアをサポートする事態は避けたい」と言う。
Oracle VMを再評価する予定のOracleユーザーもいるが、Oracle VMをメインのハイパーバイザーとして使うには、まだ改善すべき点があるという。
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