医療分野におけるモバイル端末の活用が進む中、北海道社会保険病院は2012年2月にiPadやiPod touchから電子カルテ機能を利用するシステムを稼働させた。
北海道札幌市豊平区にある北海道社会保険病院は「患者を中心にした質の高い医療を提供し、地域から信頼される病院を目指す」ことを理念に掲げて1953年に設立された。現在の病床数は358床で、札幌市南部地域の約50万人の住民を対象に高度な医療サービスを提供している。また、2001年に地域周産期母子医療センターの指定を受けるなど地域医療連携の中核を担っている。
北海道社会保険病院は2008年に電子カルテシステムを導入。その専用端末としてデスクトップPC5台とノートPC10台を各病棟で利用していた。ノートPCはナースカートに載せて病棟内を移動して回診に用いていた。しかし、北海道社会保険病院のシステム管理室 係長 練生川和弘氏によると「回診時のノートPC利用について現場側、システム管理側の両方から課題が出てきた」という。
現場側の課題の1つが「端末の携帯性」だった。病棟内を移動する際のナースカートの車輪の音が入院患者に迷惑を掛けていた。また、端末の老朽化に伴う「バッテリーの駆動時間」も問題だった。通常の回診は40~50分ほどかかるが、バッテリーの駆動時間が30分しかもたなかった。病室の入り口にある電源コンセントを利用できるが、電源やUSBケーブルなどの配線による患者の転倒事故というインシデントリスクも想定された。さらに、ナースカートはナースステーションの場所をある程度取るため、待機時に看護師の導線に影響するという「占有スペースの問題」もあった。
システム管理の面では「バッテリー交換などによる“ノートPCの維持コスト”が最大の問題」と練生川氏は説明する。同病院ではバッテリー交換が4年間で200回発生し、累計280万円もの維持コストが掛かっていたという。
上記の課題を解決するため、同病院は電子カルテの機能をiPadやiPod touchなどのモバイル端末で利用可能にするシステムの構築を検討した。システム要件について、練生川氏は「維持管理コストの抑制」「シンクライアント化」「メーカーに依存しないシステムの柔軟性」などを考慮したと説明する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
遠隔医療体制を構築する際は、患者や通常業務への影響を押さえながら進める必要がある。パンデミック下で一斉に遠隔医療体制を構築した2つの医療機関の例を紹介する。
オーストラリアでは処方箋の完全電子化が一般化しているが、制度確立までの道のりは平たんではなかった。完全電子化を阻んだ課題とその解決策とは。
コロナ禍を契機に、湾岸諸国では「デジタルヘルスケア」への移行が加速している。湾岸諸国におけるデジタルヘルスケア産業の重点投資分野とは。デジタルヘルスケア推進の”壁”とその対処法についても紹介する。
医療機関は膨大なデータを扱い、そのデータに基づいて重要な決定を下す場合がある。一方、データの質は低くなりがちだ。それはなぜか。データの品質を改善させるために必要な方策と併せて紹介する。
英国の国民保健サービスでイングランド地域を管轄するNHS Englandが、医療サービス向けの新データ基盤を構築している。この計画に英国市民団体が“待った”をかけたという。なぜなのか。
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...