VMware環境で災害復旧(DR)計画を立案するために効果的なツールとは。用途や目的に応じてVMware Site Recovery Manager(SRM)かサードパーティーのDRツールを選択すべきだ。
障害発生時のフェイルオーバー手順やワークロードの復旧手順を規定した、盤石なVMwareの災害復旧(DR)計画は、組織のデータを保護し、業務を継続するためには欠かせない。物理サーバ間でのシームレスな仮想マシン(VM)の移動を実現する仮想化は、DR計画の在り方に革命を起こした。現在、VMをさらに迅速にオンラインに戻すためのさまざまなVMware DRツールが存在しているが、IT担当者が現実的なビジネス目標を設定し、綿密な計画と厳しいテストをもって最後までやりぬく努力をしなければ、宝の持ち腐れになる。
本稿では、VMware Site Recovery Manager(SRM)とサードパーティーのDRツールを使用した、VMwareのDR計画立案について、よく寄せられる質問に答えたい。
VMwareのDR計画を立てるに当たって最も重要なことは、組織のDR目標を明確に規定することだ。実は、このビジネス面での意思決定の多くは、DR基盤を構築する技術的な検討事項よりも複雑だ。PRO(目標復旧地点)を決める第一歩は、組織にとって最も重要なVMはどれかを判断することで、これにより障害発生後に復旧するVMの順番が決まる。また、RTO(目標復旧時間)は、DRサイトにどの程度の頻度でデータをバックアップする必要があるかを分析することで決まる。
リモートのVMware DRサイトは、データを保護し、障害発生時にも業務を継続できるようにするが、DR計画の立案は難しい。現在のインフラストラクチャ資産の棚卸しを行い、RPOとRTOを確定して、利用可能な予算を基に厳しい決定をすることになる。適切な計画なしでは、多大な時間と資金が無駄になる上、組織の脆弱性は解消されない。
小規模な環境のDR計画は立てにくい可能性がある。しかし、要員やリソースが限られている企業であっても、DRを検討する時間は取るべきだ。ただし、運用しているのが数台のVMが展開された1サイトのみであれば、専用ツールを使ってサポートする完全なVMware DR計画は必要ないかもしれない。その場合は、VMを回復できる磐石なバックアップ計画だけを用意すればよいだろう。
SRMは、VMwareのDR計画立案と、障害発生時のVMwareインフラストラクチャの復旧を支援する。SRMを使うと、復旧スピードを速め、ビジネスクリティカルなワークロードの復旧に関して優先順位を決定でき、さらにはDR計画のテストを実施することもできる。ただし、SRMは有用なDRツールではあるが、実際に環境で運用するには少し複雑で、価格も高い。
SRMは多くの組織で使用されている強力なツールだが、VMwareのDR計画にSRMを使用するのは複雑過ぎる、または費用が掛かり過ぎると思える場合もある。専任のVMware管理者がいない環境では、SRM以外に目を向けてサードパーティーのDRツールを検討してもよいだろう。最も人気のあるツールは、米Quest Softwareの「vReplicator」、米Veeam Softwareの「Backup&Replication」、米Zertoの「BC/DR for Enterprises」などだ。
VMware vSphere Replicationを使うと、DRにつきものの厳しいストレージ要件が取り除かれ、中堅・中小企業(SMB)でも実効性のあるDF計画を立てやすくなる。vSphere Replicationを利用すれば、ストレージのベンダーやプロトコルに関係なく、種類の異なるストレージ間でVMをコピーできる。この機能があれば、セカンダリのDRサイトにある比較的安価なストレージを使用できるようになり、DR導入の障壁となっていたストレージ要件が緩和される。ただし、vSphere Replicationにはこのようなメリットがあるが、運用には幾つか課題もあり、追加のコストも発生するため、長短を踏まえて検討してほしい。
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