【連載コラム】医療ITの現場から
診療所の承継開業時にIT化をスムーズに進める方法
医師全体の高齢化が進み、世代交代による診療所の承継開業の増加が今後予想される。しかし、承継開業ではIT化をめぐりトラブルになるケースもあるという。
承継の移行期間にIT化でもめるケースも?
何代にもわたる家業として医師になった方も少なくないでしょう。勤務医から開業する段階で、実家の診療所を承継することも珍しくはありません。2012年現在、既存開業医の平均年齢は約57歳といわれています。開業医の高齢化の問題に伴い、今後10年ほどの間で世代交代が進み診療所の承継開業が増える“承継ラッシュ”が来ることが予想されます。
これまで診療所のIT化は、「レセプトコンピュータ」(以下、レセコン)を中心に進められてきました。また、画像を多く取り扱う診療所では「医用画像管理システム(PACS)」も一部導入されてきました。しかし、既存の診療所では「電子カルテ」の導入率はそれほど高くなく、紙カルテの内容をレセコンに入力するという運用が行われてきました。承継時期になると継承される医師(若先生)を迎えて、診療所を譲渡される医師(大先生)とともに移行に向けてさまざまな準備が進められます。その際、電子カルテの導入をめぐる問題が発生することがあるようです。
現在、大学病院を中心に大規模な病院における電子カルテやオーダリングシステムの導入率は高く、若手医師の多くが電子カルテやオーダリングの経験者です。電子カルテの経験しかなく、紙カルテでの運用が分からないこともあります。大先生は「これまで通り紙カルテでの運用を希望」し、若先生は「電子カルテを導入したい」と双方の意見が異なってトラブルになるケースもあります。最近、こうした相談を受ける機会が多くなっています。今回はそうしたケースにおける解決のヒントを紹介します。
製品選定は若先生が担当する
電子カルテの製品選定は、若先生が担当することをお勧めしています。大先生は紙カルテと同様の操作性を選定ポイントとして考えることが多く、手書きタイプの電子カルテを選ぶ傾向があります。若先生は手書きよりもキーボード入力タイプの電子カルテに慣れていることが多いので、承継後の運用を考えると若先生が製品を選ぶ方がよいでしょう(関連連載:診療所向け電子カルテ製品紹介)。
大先生のサポートも忘れずに
カルテの運用方法が変わってしまう大先生には、どう対応してもらうか。まずはご自身で使ってみることをお勧めします。どうしても操作に慣れない場合は「医療クラーク」による入力サポートが考えられます。電子カルテを導入することで、医療事務を担当されているスタッフの作業負荷も軽減されます。既存スタッフを電子カルテの入力担当とすることで、最適な人員配置を実現することも可能です。
医療クラークは、耳鼻咽喉科や眼科などの診療科目で既に多く採用されています。医療クラークが電子カルテ入力を代行すると、医師の入力作業はほとんどなくなります。また、必要に応じてメモを手書きし、その内容を電子カルテに反映してもらうという運用も可能です。医療の内容に精通した事務スタッフはレセコンの入力にも慣れている場合が多いので、事務スタッフが医療クラークを担当すると診察業務の効率化も図れます。
新たな人材育成も視野に
今後は医療クラークの育成が重要になるともいわれています。医療クラークは単に医師の事務作業を代行するだけでなく、さまざまな場面で患者と接する機会を持ち、患者サービス向上という効果も期待されているからです。事務スタッフが医療クラークになることで診察業務により理解を示し、知識の習得や経験を積むことができます。大先生と医療クラークの組み合わせを採用することで、大先生はカルテの運用を気にせずにこれまで以上に診療に専念でき、一方、若先生主導で電子カルテが導入できるなど、承継開業時のIT化がスムーズに行われるでしょう。
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