ビッグデータを活用しようと思っても、適切なツールが見つからない。米PayPalの主席データサイエンティストは、データ活用ニーズの多様化がその背景にあると指摘する。
第1回「PayPalも苦戦? ビッグデータ活用で解くべき2大課題」では、米電子決済サービス大手PayPalで主席データサイエンティストを務めるモック・オー氏に、ビッグデータの活用を阻む課題を聞いた。第2回では、PayPalがデータ分析をする動機やビッグデータの活用で可能になること、現状のビッグデータ活用ツールに欠けている要素などを聞く。
―― 私たち、あるいはコンピュータは、ビッグデータを使って何をするようになるのでしょうか?
オー氏 人の知能は、既にマシンに追い越されたといえるのではないでしょうか。とりわけターゲティングやレコメンドという点では。マシンの方が、人よりも速くスケールアップできますし、より的確にターゲットを絞ったり、学ぶことができます。将来の予測という点でも、マシンはどんな人間よりも的確に将来を予測できるはずです。
―― 実例を1つ挙げていただけますか?
オー氏 マーケティングキャンペーンの例で説明しましょう。従来であれば、誰かが次のように考えるところから始まります。「私はMicrosoft Excelのスプレッドシートが使える。そして、われわれには数百万の潜在ターゲットがいる。当社のサービスを利用してお金をいくら使っているかによって、潜在ターゲットを分類してみよう。利用金額が最も高い人たちをターゲットに据えよう。そのためには、データを適切に分類する必要がある」といった具合です。こうして人手を介して実施するのが、従来のマーケティング手法です。誰かが取り組みをスタートさせ、データの分析モデルを作り出す。その分析モデルはうまくいく場合もあれば、いかない場合もあります。
一方、マシンであれば、5個や6個、10個といわず、はるかに多くの属性を調べることができます。PayPalでは、何百万というデータ属性を利用しています。当社の1億人以上のユーザーに対して、こうした全ての属性を照らし合わせることで、予定しているキャンペーンに即して、ユーザーを都度分類しています。分類はほぼリアルタイムで実行し、アップデートできます。こうした方法をキャンペーンに用いれば、人手よりもはるかに優れた成果を挙げることができるでしょう。
こうしたプロセスは、全てコンピュータサイエンスによってコントロールされます。ただし、マシンに理解させるために、メタレベルのコードを書くのは人間です。それがAnalyst 1.5の段階です。願わくは、Analyst 2.0では、ビジネスを本当によく理解している人が、こうした分析を自分でできるようになっていてほしいものです(Analyst 1.5/2.0については「PayPalも苦戦? ビッグデータ活用で解くべき2大課題」を参照)。
―― 今のビッグデータツールには、何が欠けているのですか? ビジネスをよく理解している人たちがこうしたデータ分析を自分でできないのは、なぜなのでしょうか?
オー氏 今、必要とされているのはコードです。大規模並列処理コンピュータのためのプログラミング能力です。ただし、問題はユースケースがあまりに多いことです。「ユースケースは5つあるから、この5つに対応できるツールを用意しよう」というわけにはいかなくなっています。
再び、マーケティングキャンペーンで考えてみましょう。
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