失敗しないアプリケーションパフォーマンス管理製品の選び方複雑化したシステムのパフォーマンスをどう守るか【第3回】

複数のベンダーから提供されているAPMツールは、当然ながら監視方式や搭載機能がそれぞれ異なっている。自社のニーズに最適な製品を選ぶためには、どのようなポイントに留意すればよいのだろうか?

2012年12月19日 08時00分 公開
[福田慎,日本コンピュウェア]

 前回の「【技術解説】アプリケーションパフォーマンスを測る4つの手法」では、APM(Application Performance Management)ツールで採用されている4つの監視方式――「仮想ユーザー方式」「パケットキャプチャー方式」「クライアントインストール方式」「JavaScript付加方式」と、それぞれのメリット、デメリットを紹介した。

 今回はそれに基づき、自社のニーズに適切なAPMツールを選ぶための7つのチェックポイントを紹介する。

1. 監視すべきプロトコルは何か?

 APMツールの選択に当たってまずチェックしたいのは、その製品が「監視できるプロトコル」だ。一般に、Webを介して使う業務システムはHTTPを使っているケースが多いが、SAPなど広く使われているパッケージシステムでは、HTTP以外のプロトコルが使われているケースがある。また、APMツールを「システムのレスポンスの把握」だけでなく、「パフォーマンス低下の原因分析」にも利用する場合、HTTPなどフロントエンドのプロトコルだけでなく、TCP/IPなどバックエンドのプロトコルにも対応している方が望ましい。

 製品には、HTTPしか計測できないツールもあれば、数十種類のプロトコルを計測できるものまである。事前に「監視対象システムがどのプロトコルを使っているのか」「どのプロトコルを監視する必要があるのか」を明確化しておきたい。

2. エンドユーザーが実際に感じているレスポンスタイムを把握する必要があるか?

 これは「システムのレスポンスが、業務の遅滞を招く原因になっているかどうか」の調査などに当てはまる。例えば、監視対象システムがコールセンターの顧客対応システムで、「全オペレータの体感レスポンスタイムを正確に把握したい」といった場合だ。

 仮想ユーザー方式は、APMツール自身が仮想ユーザーとしてパケットを送信する方式を取る。このためエンドユーザーが実際に感じているレスポンスタイムを計測することはできない。従って、エンドユーザーが送受信するデータを分析することでレスポンスを把握するには、その他の3方式から選ぶことになる。

 ただし、クライアントインストール方式のみ、エンドユーザーのWebブラウザにエージェントをインストールする必要があるため、エンドユーザーの協力が不可欠となる。分析作業をよりスムーズに進める上では、パケットキャプチャー方式か、JavaScript付加方式の方が有利だろう。

 監視対象が大規模なB2Cサイトで、「必ずしも全ユーザーが実際に体感しているレスポンス情報は必要なく、サンプルとなるレスポンスタイムを把握したい」という場合には、同じ場所から同じ処理を定期的に繰り返す、仮想ユーザー方式が適している。

3. パフォーマンスの問題原因分析も行う必要があるか?

 多くのAPMツールは、レスポンス監視機能とともに、「レスポンス遅延の原因が、サーバ側とエンドユーザー側のどらちにあるかを切り分ける機能」を持つ。だがシンプルなツールの場合、レスポンス遅延の原因分析機能を備えていないものもあるので注意が必要だ。自社のシステム運用管理プロセスを整理し、どのような機能が必要か、あらかじめ明確化しておきたい。

 なお、問題原因箇所の切り分け機能については、クライアント側から計測するクライアントインストール方式とJavaScript付加方式はクライアント側の分析に優れ、サーバ側から計測するパケットキャプチャー方式はサーバ側の分析に優れている傾向が強い。

4. エンドユーザーが気付く前に障害を検知する必要があるか?

 パケットキャプチャー方式、クライアントインストール方式、JavaScript付加方式は、実際のエンドユーザーのパケットを監視するため、システムのレスポンスが遅延していても、エンドユーザーのアクセスがなければ遅延を検知できない。例えば、監視対象が夜間は誰もアクセスしないような業務システムの場合、夜間に何らかの障害が発生していても、エンドユーザーのアクセスがない以上、障害を検知できない。

 その点、仮想ユーザー方式なら、ツール自ら定期的にシステムにアクセスするため、障害が起きていれば必ず検知できる。従って「障害のより早い発見」という目的がある場合、必然的に仮想ユーザー方式を選ぶことになる。ただし、仮想ユーザー方式は一定間隔での監視のためリアルタイムでの検知はできない。また、あらかじめ定義しておいたページしか監視しないため、特定のページの障害は検知できない可能性もある。

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 サイオステクノロジー株式会社

システム停止のリスクを最小化する、HA(高可用性)クラスタの活用と実践

基幹系システムの停止は、企業に経済面や信用面で多大な損害を与える。そのためシステム障害時のリスクを可能な限り低減させるための対策が必要になっている。そこで本資料では、有効なシステム障害対策として、HAクラスタを紹介する。

製品資料 サイオステクノロジー株式会社

システム障害対策はコストではない、みんなの銀行CIOに聞く社内文化醸成のコツ

組織経営の存続を左右する「システム障害」だが、これまではその対策を単なるコスト要因と見なす風潮が強かった。しかし新世代のビジネスリーダーたちは重大な経営課題としてシステム障害に向き合い、さまざまな対策を実践しているという。

技術文書・技術解説 SB C&S株式会社

Windows Server 2025とHyper-Vの強化点、新機能で何が進化した?

Windows Server 2025は、セキュリティや可用性の向上に加え、Active Directory不要のワークグループ環境でもフェールオーバーとHyper-Vによるライブマイグレーションを実現した。Windows Server 2025が備える特長を詳しく解説する。

事例 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート

目黒区が理想の調達を実現、業務システムの柔軟な連携を可能にする共通基盤とは

業務ごとに最適なシステムを導入したいが、連携の難しさが課題となっていた目黒区。しかし、ある共通基盤を活用することで、オールインワンの限界を打ち破り、柔軟なIT環境を構築することができた。その成功事例を紹介する。

事例 New Relic株式会社

スキャナー開発企業に学ぶ、クラウドサービスの品質改善と監視強化の実現方法

業務用イメージスキャナーを開発する企業のPFUは、主力スキャナーシリーズ向けのクラウドサービスを提供している。同社は、サービスの品質向上へ向け、オブザーバビリティプラットフォームを導入した。その経緯や導入成果などを紹介する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...