予測分析製品紹介:シナジーマーケティング編
刺さる言葉や優良顧客がデータで分かる「iNSIGHTBOX」
社内外のデータを基に顧客が購買行動に至る根本原因を探り、商品を買いそうな顧客リストや“刺さる”キーワードを導き出す。そんな予測分析製品が「iNSIGHTBOX」だ。
メールマーケティング支援SaaS「Synergy!」をはじめとするクラウド形式の顧客関係管理(CRM)システムを中心に、企業のマーケティング活動を支援しているシナジーマーケティング。同社はマーケティング精度向上のための行動予測技術を中心とした独自の分析手法を研究開発している。その成果として2011年末にリリースしたのが、顧客に関するインサイト(洞察力・知見)の獲得を支援する予測分析製品「iNSIGHTBOX」(インサイトボックス)だ。同社が「クラウド型社会知データベース」と呼ぶiNSIGHTBOXの概要や特徴を見ていこう。
連載:予測分析製品紹介
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製品の概要:簡単操作で顧客リストやキーワードを算出
iNSIGHTBOXは、「基本的にはクラウド形式の分析ツールだが、単なるビジネスインテリジェンス(BI)機能にとどまらない」と説明するのは、シナジーマーケティング CRMインサイトラボ フェローの後迫 彰氏である。
一般的な予測分析製品では、専門のデータアナリストが回帰分析やベイズ推定、相関係数を使って協調フィルタリングを行うなど、統計解析手法を用いてデータを定量的に分析することが多い。「iNSIGHTBOXは分析作業を簡素化、自動化したことで複雑性を隠蔽し、かつ定量的/定性的の両面で分析するハイブリッド型分析ツールといえる(図1)」(後迫氏)
自社が保有する顧客情報や商品情報、過去のターゲティングメールのクリック履歴、購買履歴といったデータをクラウド環境のiNSIGHTBOXにアップロードすると、「特定商品への関心が高そうな顧客リスト」「ターゲティングメールに挿入すると興味を引きやすいキーワード」などのデータを出力する(図2)。例えば、“優良顧客を知りたい”、“この商品を買いそうな人々を知りたい”、“メールをクリックさせたい”といった要求に対して、クリックのみで分析結果が出力されるイメージだ。
iNSIGHTBOXの利用方法はシンプルだ。購買履歴やメールクリック履歴といったデータをアップロードし、目的に応じた分析アプリケーション(アウトプットを作成する分析ツール)を一覧の中から選択(画面1)。必要な条件を指定するだけでよい。分析のための専門知識は不要だ。
他社製品に対する特徴:社会知を用いたマクロな分析を可能にする「ソシエタス」
iNSIGHTBOXの中核的な要素となるのが、顧客の行動や嗜好の本質を理解するための手掛かりとなる「Societas」(ソシエタス)だ。ソシエタスは、商品購買の意思決定のトリガーとなる要因を示す顧客モデルである。
人の感性や特性を細かくリサーチして、オーダーメードで定義するペルソナ構築などの顧客モデリングとは異なり、ソシエタスは顧客の本質を汎用パーツとして捉え、パーツの組み合わせで顧客の意思決定の傾向を分析する。そのため、他の顧客モデリング手法と比べて時間がかからないのがメリットだ。
顧客のライフスタイルや価値観を類型化したソシエタスは、年齢や性別、職業といった属性だけでは見えにくい「なぜその商品を購入するのか」という意思決定の根本要因を探るのに役立つ(図3)。現在は合計12個のソシエタスを定義済みであり、顧客のライフスタイルや価値観は、複数のソシエタスの組み合わせで表現される。
タグを利用して顧客の購買属性を把握
ソシエタスの組み合わせを導出する課程を見ていこう。まず必要なのが商品やターゲティングメールのタグ化だ。商品の場合、Webサイトの商品紹介のテキストなどから、「軽い」「新しい」といった商品特性を示すキーワードをタグとして抽出。商品を示す商品コードを抽出したタグの集合へ置換すると同時に、この商品を購入した顧客のIDに同じタグを付与する。
ターゲティングメールについても同様に、「展示会」「イベント」といったメール本文に盛り込まれたキーワードをタグとして抽出。メール本文中にある誘導先WebページのURLを、抽出したタグの集合へ置換する。併せて、このURLをクリックした顧客のIDにも同じタグを付与。これらに加え、Webサイトの閲覧履歴や書き込みなどもタグ化する。
こうして顧客IDに付与されたタグの種類や数から、顧客ごとの行動属性を示す「タグスコア」を計算。このタグスコアを基に、人を複数のソシエタスの組み合わせとして表現する。同様のソシエタスの組み合わせを持つ人は、同様の製品を購入しやすく、同様のキーワードに反応しやすい。こうした傾向を利用し、人や商品、キーワードを起点に分析することで、特定の商品を購入しそうな顧客リストや、顧客に刺さるキーワードの算出が可能になるというわけだ。
なお、人に関する情報は個人を特定できない形でID化するので、個人情報が漏えいする心配はないという。
“社会知”をマーケティングに生かす
シナジーマーケティングは、ソシエタスの組み合わせの導出にさまざまなユーザー企業のデータを生かしている他、ソシエタスによる分析結果を共有できるように取り組みを進めている。「自社データに社会知が付与されることで、仮説の信頼性を高めたり、自社データだけでは得られない現象を可視化できるなど、確かな分析に生かすことができる」(後迫氏)
「Synergy!のユーザー企業は、販促に関わるデータを一元的に管理でき、そのデータから顧客の姿を見ることできる。ただし、自社が保有するデータだけから分かることには限界があった」。こう語るのは、シナジーマーケティング 代表取締役 兼 CEOの谷井 等氏である。こうした認識の下、マーケティング情報を企業間で相互利用するための基礎技術の開発を行う研究開発組織「CRMインサイトラボ」を2008年に設立。これがiNSIGHTBOXの誕生につながったという。
導入事例:メールマーケティングに大きな効果
給湯器や厨房機器などを提供するリンナイでは、自社の交換部品販売サイト「R.STYLE」(リンナイスタイル)の活用を促進するためにiNSIGHTBOXを活用。既存の会員リストの中から掃除用品に興味を持つ顧客リストを抽出し、購入を促すキーワードを盛り込んだHTMLメールを配信。クリック率が9.77%となり、一般的なクリック率である1%前後と比べて高い効果を得た。
また、個人向けISPを主力事業とするソネットエンタテインメントは、商品ごとに事業部が異なるため販促メールの種類が多くなり、会員が受け取るメールの本数が増加。クリック率の減少とメール配信停止希望者の増加に悩んでいた。そこで同社は、iNSIGHTBOXを試験導入し、過去の実績を基に訴求力が強いと判断したキーワードと、配信先の顧客リストを算出。テストマーケティングの結果、7.01%のクリック率を達成した他、クリックした人の約4割がサービスやポイントの登録など具体的な行動に至った(参考:【事例】ソネットが「思わずクリックしたくなるメール」を作り出せた理由)。
製品価格
iNSIGHTBOXの料金は全て税別で、初期費用は30万円。月額費用は分析データ件数に応じた従量課金で、顧客ID数別の料金と商品ID数の料金の合算となる。顧客ID数別の料金は、1万5000円(1万件まで)から7万5000円(7万件以上)。商品ID数別の料金は、1万円(500アイテムまで)から4万円(2000アイテム以上)。この他、分析用アプリケーションの利用料金が別途必要になる。
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