データセンターの電力使用量を削減し、コスト効率とエネルギー効率を高める比較的シンプルな手順を紹介する。
環境に優しいデータセンターを推進する動きは、数年前に比べると幾分収まったように思える。だが多くの組織は今、持続可能性をアピールすることなくグリーンポリシーを導入するようになった。現在のグリーンテクノロジーの原動力となっているのは、グリーンに見せたいという欲求よりも、エネルギー使用の最適化を通じたコストの削減だ。
電力消費量の削減が必要とされる主な理由の1つはもちろんコストにある。電力料金の値下がりは当面見込めそうにない。それどころか上昇傾向が続いている。そしてデータセンターは大量の電力を消費する。
英国で影響を及ぼし始めているもう1つの要因として、炭素削減コミットメント(Carbon Reduction Commitment Energy Efficiency:CRC)が挙げられる。CRCはもともと、電力使用の最適化を実現した組織は利益が出て、ほとんどあるいは全く改善のない組織は損失が出るという現金相殺制度として構想された。しかし、それが全組織を対象とする電力使用量に関連した直接的な税金へと変わり、現在では大量の電力を消費する組織のみに適用されている。だが政府が新しい税収を模索する中で、いずれ対象とする組織の範囲を拡大する可能性もある。従って、データセンターのエネルギー効率を高めようとする動きは一層強まるはずだ。
多くのデータセンターは、旧式の環境設計に照らして運用されている。この場合の冷却のアプローチは、入ってくる冷却空気の温度を低くして、出ていく空気が設定温度を超えないようにするというのが基本だった。多くの場合、データセンターの平均容積温度は20度前後かそれ以下に保つことを目標とし、15〜17度というケースもあった。
床面積1000平方メートル、床から天井までの高さが3メートルのデータセンターの場合、3000立方メートルの空気の冷却が必要になる。その平均室温を制限内に保つためには空気を還流させる必要があり、これは換気回数(ACR)という指標で測定される。多くのデータセンターは毎時100〜200のACRで稼働しており、毎時60万立方メートルの空気を冷却する必要が生じる。これだけの空気を基準以下の温度に保つためのコストは膨大になる。しかしこれは本当に必要なのだろうか?
それを調べるための第一歩は、既存のデータセンターのアセスメントだ。その最善の方法は、温度モニタシステムをデータセンターに導入することだ。ただそれは、戦略的に配置された温度計を使うという単純な施策にとどまらない。赤外線カメラを使用すれば、対応が必要な高温地帯がデータセンターのどこにあるかを突き止める一助となる。
既存の環境をマッピングして過熱問題の箇所を洗い出せば、データセンターのプランニングに着手できる。1台のラックに1Uサーバや2Uサーバが詰め込まれていて、過熱したCPUの密集状態が高温地帯を発生させている可能性もある。こうしたサーバを2台以上のラックに分散させたり、放熱の少ない機器と混在させれば、高温地帯ができる箇所は少なくなる。
特定の機器が極度の高温になる問題が発覚するかもしれない。ほとんどの場合、これはその機器の「老朽化」、つまり3年以上たっていることに原因がある。多くの場合、こうした機器を最新の機器に入れ替えればコスト効率は上がる。設計とグリーン化の向上により、新しい機器ほどエネルギー効率は高く、過熱の問題は少ない。
次のステップは、冷却をどう導入するのが最善かを見極めることだ。面積1000平方メートルのデータセンターの例では、IT機器の冷却という点でほとんど役に立たない空気が大量に冷却される。
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