どのような理由であれ、エネルギー効率の高いデータセンターは環境のためになると同時に、会社の経費削減にもつながると専門家は指摘する。本稿ではデータセンターのグリーン化の一助となる主な技術を紹介する。
インフラのエネルギー効率化とグリーン化の実現につながる技術の筆頭として専門家が挙げるのが、データセンターインフラ管理(DCIM)ツールだ。
Gartnerの調査担当副社長サイモン・ミンゲイ氏によると、2009年までDCIMは事実上、全く市場に浸透していなかったが、現在ではグリーンコンピューティングの最重要級分野になった。
DCIMにより、データセンター設計、資産発見、システム管理、容量プランニング、エネルギー管理といったスタンドアロン機能を組み合わせ、ラックやキャビネットレベルから冷却インフラ、エネルギー利用に至るまで、データセンターの全体像を把握できる。これは、エネルギーの効率的な利用や機器の配置の最適化、仮想化や統合への対応、データセンターの可用性向上を促す一助となる。
DCIMツールはデータセンター管理者による容量プランニングの改善を支援し、ハードウェアの量や関連する冷却コストの削減につなげられる。ミンゲイ氏は「われわれは容量プランニングが苦手だ。電力キロワット当たりのコンピューティングリソースを増やして効率性を高めてくれるツールなら、どんなものでも歓迎される」と語る。
DCIMツールではまた、データセンター管理者が電力や冷却のニーズをより正確に把握して、それに従って計画を立てることも可能になる。「DCIMは、十分に成熟すれば、コンピュート能力(引き出すパワー)とITに対する負荷のバランスを取って、負荷が低いときにはハードウェアを『活動低下』または『スタンバイ』モードに切り替えるチャンスを提供してくれる」。リーズ大学のイアン・ビターリン教授とDatacentre Dynamics Intelligenceのマネージングディレクター、ニコラ・ヘイズ氏がまとめた報告書「Datacentre Dynamics Intelligence Power」はそう指摘した。
Ovumの首席アナリスト、ロイ・イルスリー氏によれば、現時点でプロバイダーは、購入している組織があまりにも少ないという理由から、DCIMツールにそれほど多額の投資は行っていない。「だがこの状況が変われば、ユーザーはDCIMツールにもっと多くの価値を要求するようになり、ツールも改良されるだろう」と同氏は予想する。
ほとんどのデータセンターデベロッパーは、データセンターの電力消費を優先課題と位置付ける。データセンターの総保有コスト(TCO)の中で、エネルギーコストは単独の項目としては最大の比率を占めるようになった。その割合は設備のビジネスモデル次第で20〜60%に達する。しかも電力料金や税金が上がる中、総保有コストに占める割合は大きくなる一方だとビターリン氏は言う。
フリークーリングは、電力消費の大きい機械式冷却装置や空調設備を利用せず、外気を使ってデータセンター設備を冷却する手段を指す。
温度が27度にもなるラックやサーバを構築するデータセンターサービスプロバイダーが増える中で、自然空冷は現実的な選択肢になった。英国のような地域で年間を通してフリークーリングを使わない理由はほとんどないとミンゲイ氏は言う。だがほとんどのデータセンターがいまだに機械式冷却を使っているのが現実だ。データセンターが冷却できないほど外の気温が高くなりすぎた場合のみ機械式冷却を使えば、データセンターのグリーン化に向けた有効な戦略になる。
ただしフリークーリングには、単にデータセンターの窓を開けておく以上の対応が要求される。サーバ機器を傷つける塵粒子を食い止めるためのフィルタも必要だ。フィルタを通して取り込む外気は、湿度も最適なレベルに保つ必要がある。専門家によると、湿度が高ければ金属部分にさびができ、湿度が低すぎれば静電気などの問題が発生する。
451 Researchのアナリストによれば、フリークーリングを使えば明らかにコストを削減できることから、大手の業者は機械冷却設備を一切持たないデータセンターを構築するようになった。フリークーリング技術を使っている企業にはCapgeminiなどがある。
Apple、Facebook、Googleなど、風力を使ってデータセンターに電力を供給している大手企業も多数ある。
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